2009年02月22日

発音しにくいネーミングはリスクを抱える


 EurekAlert! より。

■ 言いにくければそれはリスクを伴う
 If it's hard to say, it must be risky

 新製品のネーミングを考えている人には必読かもしれません。

 僕たちが何か新しいものを目にしたとき、それが危険かどうかをどうやって判断するでしょうか。多くの人は、その名前に聞きなじみがあれば、リスクは比較的小さいだろうと判断します。さらに、初めて耳にするような物であっても、覚えやすい名前や、発音しやすい名前に対しては、「前に見たことがあるかも」と判断することがあるかもしれません。

 さて、では実際に、名前の発音のしやすさは、人々の物のとらえ方をどのぐらい左右するのでしょうか? この問題を明らかにするべく、米国ミシガン大学の心理学者 Hyunjin Song と Norbert Schwarz は、学生を集めてこんな実験を行いました。

 第1のテストでは、彼らは被験者らに食品添加物の名称を記したリストを見せました。リストの添加物は架空のもので、いずれも12文字の長さでした。リストには、発音が易しい「Magnalroxate」や、難しい「Hnegripitrom」など、さまざまな名前が含まれていました。学生たちは、リストを見た後で、それぞれがどのぐらい有害と思うかを尋ねられました。

 結果は予想どおりでした。被験者らは、発音のむずかしい添加物ほど、それを有害と評価することが分かりました。それだけでなく、難しい添加物ほど、新しいとみなされることも分かりました。

 さらに、次のような第2の実験も行われました。今度は被験者たちは、架空の遊園地のアトラクション名のリストを示されました。そして添加物のときと同様、これらがどのぐらい危険である(気分が悪くなる)かの評価を行いました。

 結果、「Vaiveahtoishi」のような発音が難しいアトラクションは、被験者はこれを危険と評価する傾向がありました。反対に「Chunta」のような簡単な発音の乗り物は安全と評価されました。また、エキサイティングなアトラクションはどれかという設問に対しては、難しい名前のものが多く選ばれました。

 以上の結果から、難しい発音のものは、好ましくないリスク(有害だとか気分が悪くなるとか)と、好ましいリスク(エキサイティングとか)の両方を人々に印象づけることが分かったと言えます。研究者は、今回の結果を、リスク・コミュニケーションに応用することを考えています。潜在的に危険のある品物に難しい名前をつけることで、消費者に注意をうながすことがあり得るだろうと述べています。

 なるほど。。どう読んでいいのか分からないという不安がそれ自身への不安も引き起こしているのかな、と直感的には納得いく結果です。よく、新製品のネーミングを考えるときは、消費者の安心感をさそうよう分かりやすい言葉を使うべきだというのはよく聞く話ですが、それだけでなく、消費者に注意を喚起したいときなどにあえて難しい名前を使う、というアイデアはとても実用的でおもしろいです。


【参考リンク】
・元論文:If It's Difficult to Pronounce, It Must Be Risky

2009年02月15日

ニアミス時のギャンブラーの脳の中


 Science NOW より。

 ギャンブルを趣味にしている人には、惜しいニアミスのところで大当たりを逃し、つい悔しくなって再びお金をつぎ込んでしまった、なんて体験があるかもしれません。ギャンブルに興じる人の脳を調べたあらたな研究によると、人々の脳では、ニアミスであっても、大当たりのときと同じ部分が活性化していることが分かりました。

■ 馬蹄、手榴弾、――それとスロットマシン?
 Horseshoes, Hand Grenades--and Slot Machines?
(記事タイトルの意味がわかりません。。。)

 ニアミスとは例えばどんな状態でしょうか。スロットマシンでいえば、最後の1つの絵柄がお目当ての位置から1列だけ外れてしまうような状態です。実際、スロットマシンのメーカーの中には、じらしの効果を狙って、ニアミスが起きるよう意図的にプログラムしているものもあります。

 しかしながら、こうしたニアミスがギャンブラーたちの常習性にどのような影響をもたらすかについて、神経認知的な方向からの知見は、これまでのところほとんど存在しませんでした。

 そこで、英国ケンブリッジ大学の Luke Clark によるチームでは、機能的磁気共鳴映像法(fMRI)により、スロットマシンに興じる人の脳の活動を調査しました。

 彼らは、15名の被験者をあつめ、コンピュータ上で動くスロットマシンゲームをプレイしてもらいました。ゲームは実物を単純化したもので、リールは2つのみ、さらに各リールには6種類の絵柄が現れるというものでした。被験者はボタンを押して、各リールの回転を止めることができます。絵柄がそろうと0.5ポンド(約65円)が得られますが、それ以外では何も得られません。

 スロットでは、絵柄が1列違いでそろわないことがあります。研究者らは、この状態をニアミスと呼びました。彼らは、絵柄がそろったときと、ニアミスのときの脳の状態を比較しました。

 結果はこうでした。ニアミスのときの脳は、そろったときの脳と類似した活動パターンを示していたのです。腹部線条体や島状皮質といった部分において、ニアミスでないときよりも多くの血流がみられました。これらは脳の報酬領域の一部として知られており、今回の実験では、絵柄がそろったときにのみ活動が見られていました。この傾向は、アンケートで、ラッキーナンバーやラッキーカラーの存在を信じると回答した人に強く現れていました。

 ニアミスの場合、客観的にみれば金銭的な報酬はいっさい得られないわけですが、にもかかわらず、報酬領域が大当たりのときと同様に活発にし、ひいては人をギャンブルにのめり込ませる原因となっていると考えられます。

 さらに研究者らは、被験者を、1つ目のリールの絵柄を被験者自身が選ぶグループと、コンピュータが自動で選ぶグループとに分けました。すると、自身で選んだ被験者のほうが、ゲームを遊び続けたいと回答する傾向がありました。ここから研究者は、自分は状況をコントロールできるという感覚がある被験者ほど、ニアミス効果の影響をうけやすいのだろうと述べています。

 こうした現象は古代に期限を持っているかもしれないと研究者たちは言います。人間は、狩猟などのスキル依存のタスクにおいて、結果に対しなんらかのコントロールを行うことで成果を得る可能性を高めてきました。ギャンブルは、状況をコントロールする方法を見つけようとする人間の性質をうまく利用したしくみだと言えます。

 なるほど・・・。古代の生活との関連づけのところが少し話が難しいなあと感じましたが、とはいえ、絵柄を機械がオートで決めるのでなく、ギャンブラー自身の手で決めたときの方が、ゲームにのめり込もうとする気持ちが大きくなるというのはおもしろい傾向です。自分のウデ次第でスロットの目はよくなる、という気持ちがどこかにあるからなのかな。

【参考リンク】
・元論文:Gambling Near-Misses Enhance Motivation to Gamble and Recruit Win-Related Brain Circuitry

2009年02月08日

イモムシは女王アリの声色を模倣する


 Science NOW より。

■ 六本足の王族の音
 The Sound of Six-Legged Majesty

 アリの巣に小型スピーカーを仕込むという調査によって、音によるコミュニケーションの役割があらたに解明されました。さらに、この仕組みを利用してアリをだまし、自分の身の回りの世話をさせるという何ともずる賢いイモムシの習性が併せて突きとめられました。

 アリのコミュニケーション手段といえばフェロモンが有名です。音によるコミュニケーションと言われてもあまりピンとこない人が多いかもしれません。アリの尻には、洗濯板のような波板状の隆起があります。ここに、腹部にある突起状の器官をこすりつけることで、音を出すことができるのです。

 これまで研究者たちの間では、この音は普段のコミュニケーションの役割には用いられないと考えられてきました。危険が迫ったときの警告音として使われるものと考えられていたのでした。

 そこで英国オックスフォード大学の昆虫学者 Jeremy Thomas は、こうした音がアリのコミュニケーションの中でどのぐらいの役割があるものなのか、調べることにしました。

 彼のチームは、Myrmica schenki という種類のアリの女王アリと働きアリが出す音を録音して分析しました。また、小さなスピーカーを巣に仕込んだときの反応を観察しました。

 結果はおもしろいものでした。女王アリと働きアリの音を比較したところ、働きアリの方がより低い周波数の音を出していることが分かりました。さらに、スピーカーから女王アリの音を出してみると、周囲の働きアリは、スピーカーの周りに集まり防御態勢に入るなど、女王の音に注意を示すようになりました。働きアリの音を鳴らしたときのリラックスした態度とは対照的でした。

 今回の結果は、音が、従来考えられていたよりもずっと重要なコミュニケーションの役割を担っていることを示しています。

 さらに今回はもう一つのおもしろい事実が報告されました。Maculinea rebeli という種類のイモムシが、女王アリの音を真似て、働きアリに自分の世話をしてもらっていることが分かったのです。

 このイモムシは、アリのフェロモンを真似た匂いを発して巣へ侵入します。ひとたびイモムシが侵入に成功すると、働きアリはまるでそれが女王であるかのように世話を始めていたのです。そこで研究者たちは、このときイモムシが発する音を録音し、しかけたスピーカーから流してみました。すると、働きアリたちは女王アリがあたかもそこにいるかのようにふるまいました。

 イモムシは、女王アリと働きアリの音に違いがあることを見抜いていて、それをうまく利用して自分の世話をさせていたと言えます。今回の発見は、コミュニティに寄生をする生物が、こうした音による擬態を見せたことを示す初めてのケースといえます。

 なるほど・・・。アリの匂いを吹き付けたダミーのイモムシで試してみるなど、いろいろと手の込んだ調査をやっているようです。個人的におもしろいなあと思ったのは、今回の結果で、女王アリと働きアリを区別するという音の役割があらたに明らかになったわけですが、実はイモムシはとっくにそのことに気付いていて、しかもそのことをうまく利用して生存の助けとしていたという点。いろいろと新発見が盛りだくさんで刺激的です。

【参考リンク】
・元論文:Queen Ants Make Distinctive Sounds That Are Mimicked by a Butterfly Social Parasite

2009年02月01日

ストラディバリウスの音色を現代に再現する


 New Scientist より。

■ ストラディバリウスのレシピには防虫処理が含まれていたかもしれない
 Recipe for a Stradivarius may include pest proofing

 ヴァイオリンの名器を現代に再現するにはどうすればよいか? 化学的なアプローチから、今回新たなヒントが明らかになりました。

 ヴァイオリンといえばストラディバリやガルネリといった作成者のものが非常に有名です。これらは骨董的価値があるだけでなく、その音色の美しさから、ときに数億円もの値が付けられることがあります。

 こうした名器の音色を現代のヴァイオリンで再現しようという試みは、最近に始まったものではありません。楽器の形状や調律のしかたなど、さまざまなアプローチが行われてきました。しかし、いずれの試みも、名器の音色を再現しきれていないのが現状でした。

 こうした中、近年のアプローチには、名器の化学的な側面に注目したものがあります。テキサスA&M大学の化学者 Joseph Nagyvary は、名器の木材の物質的な性質を調ベています。彼の以前の報告では、サンプルのポリマーの状態から、何らかの化学的な処理、おそらくは保存料による処理が木材になされていたことが示されていました。

 そして今回、この化学物質を特定すべく、残されたサンプルの化学的な分析が行われました。彼は、ストラディバリ、ガルネリ、ヘンリー・ジェイ、ガン・ベルナルデル といったメーカーのヴァイオリン、チェロ、ヴィオラの木を対象に、X線などによる様々な分析を行いました。

 結果、これらの楽器に対し、あきらかに化学的な処理が行われていたことが分かりました。硫化バリウム、フッ化カルシウム、ホウ酸塩、ジルコンといった物質が存在していたのです。いずれも自然の木材には見られない物質です。

 さらに、同一メーカーであっても、楽器によって化学物質はさまざまに異なることも分かりました。このことは、同じやり方で木材を処理していたのではないことを意味しています。おそらくは他の誰かによって前処理された木材で楽器を作っていたものと考えられます。

 現代の高級ヴァイオリンは、いずれも自然の木材をそのまま用いて作られています。なぜ、ストラディバリウスを再現するこれまでの試みがうまくいかなかったのか。今回の事実がその理由を説明するかもしれないと研究者は考えています。

 なるほど・・・。かつての優れた楽器メーカーは、木材に応じて処理の仕方を変えていたかもしれないと。この説が正しいすると、なぜ名門のレシピが現代に残されていないかという理由も納得がいきますね。そしてさらに木材ごとに最適な処理法を見いだしていたかもしれない点も、本当に驚くべき点だと思います。

【参考リンク】
・元論文:Mineral Preservatives in the Wood of Stradivari and Guarneri

2009年01月25日

宝くじに当たっても健康にはならない


 New Scientist より。

■ 宝くじの当選は健康や長期的な富を保証しない
 Lottery wins no guarantee of health or long-term wealth

 宝くじに当選した人は、さぞかし金銭的に豊かで、健康的な暮らしを送るようになるに違いない・・・今回発表された2つの新たな研究によると、こうした想像はどうやら幻想にすぎないことが明らかになりました。

 1つ目は、パリ・スクール・オブ・エコノミクスの Andrew Clark と Bénédicte Apouey による研究です。彼らは、英国で行われたパネル調査のデータを分析しました。この調査には、1994~2005年のあいだに宝くじに当選した約8000名のデータが含まれていました。

 分析の結果わかったのは面白い傾向でした。当選した金額が高額であればあるほど、精神的な満足は大きくなっていたのですが、一方で、全体的な健康は、当選しなかった人々と比べて特に向上が見られていなかったのです。

 いったいこの理由は何か? 研究者たちは、当選者の当選後の喫煙や飲酒量が多くなっていることから、これらの習慣が健康がよくなるのを阻んでいるのでは、と予想しています。

 と、このように、宝くじに当たっても健康になりはしないことが明らかになりました。では、金銭的にはどうなのか? 身体的な健康は良くなくても、金銭的には快適な暮らしになっているはずだよね? この疑問に答えるべく、ケンタッキー大学の Scott Hankins によって調査が行われました。

 この研究では、フロリダの宝くじの当選者を対象に、高額当選者(5万~15万ドル)とそうでない当選者(1万ドル未満)とで、破産する割合がどのように異なるかが調べられました。

 結果はこうでした。高額当選者の当選2年以内の破産の確率を見たところ、平均のおよそ50%程度しかありませんでした。しかし、その後の確率は急に上昇していました。当選5年以内でみた平均では、いずれのグループも同じ約5%という割合で破産していることが分かりました。

 研究者は、この結果の応用先として、たとえば、大きな負債を抱えた個人に対して、政府が手助けをするようなケースに役立つのではと述べています。一度にたくさんのお金を与えるのでなく、段階的に増やしていくようなやり方を、政策を立てる上で考慮すべきとしているようです。

【参考リンク】
・元論文1:Winning Big but Feeling No Better? The Effect of Lottery Prizes on Physical and Mental Health(リンク先不明:講演資料?)
・元論文2:The Road to Easy Street? The Financial Consequences of Winning the Lottery(リンク先不明:講演資料?)

2009年01月19日

穀物のかがやきは温暖化の救いとなるか


 Science NOW より。

■ 地球温暖化:トウモロコシが救いの手に?
 Global Warming: Corn to the Rescue?

 地球温暖化をくいとめるための新たなアプローチが提案されました。太陽光を反射する穀物をもちいて、地球がとりこむ熱の量を減らそうというものです。

 トウモロコシや大麦などの穀物の葉の表面には、クチクラと呼ばれるろう状の物質が存在します。地球に進入してきた太陽光のうち、いくらかはこの物質によって反射し、宇宙空間へと逃げていきます。

 そこで、英国ブリストル大学の Andy Ridgwell は、もしなんらかの方法で穀物の反射する能力を高めることができれば、地球が温暖化するのを防ぐことができるのでは、と考えたのです。

 彼はこのアイデアを検証するべく、北アメリカとユーラシア大陸を中心とする農耕地のデータを集めました。そしてさらに、これらの穀物の反射能力が変化することで地球の温度にどのような影響が出るかをモデル化しました。このモデルには、大気循環などの気候パターンが考慮されていました。

 算出の結果はこうでした。穀物の反射能力が20パーセント上がると、夏期の局所的な気温は1度さがると見積もられました。さらに100年後には、約2億トンもの二酸化炭素の削減に匹敵するだろうと彼は述べています。

 では実際に穀物の反射能力を上げるにはどうすればいいか? それには葉の表面のクチクラが多く、また傘の形状をした品種を選択的に育てることが一つの手であると彼は言います。この変化は植物の生産性に影響はおよぼさず、また、葉だけの変化であるため消費者への悪影響もないだろうとのことです。

 遺伝子改良した品種を用いればさらに温度低下をもたらす可能性がありますが、種族どうしの影響など、さらなる調査がまずは必要だと述べています。

 なるほど。。。そういえば、宇宙空間に鏡や風船を上げたり(*1)、人為的に雲を作ったり(*2)して日光をはね返す話は聞いたことがありましたが、今回のように植物の種類をコントロールしようというアプローチは初めてです。どのぐらい可能性があるものなのか、今後に期待。

【参考リンク】
・元論文:Tackling Regional Climate Change By Leaf Albedo Bio-geoengineering
・(*1):The GuardianUS answer to global warming: smoke and giant space mirrors
・(*2):パイプで地球の気候を救え!

2009年01月10日

偏光汚染がおよぼす生態系への悪影響


 New Scientist より。

■ 偏光の汚染によって混乱させられる野生生物
 Wildlife confused by polarised light pollution

 大気汚染、水質汚染、騒音、・・・生態系に悪影響を及ぼす要因には様々ありますが、このリストにあらたな要因が追加されることになるかもしれません。「偏光汚染」による生態系への影響の可能性があらたな研究によって指摘されました。

 偏光汚染とは何でしょうか。偏光とは、光が一定の方向にだけ振動した状態をさします。黒っぽくて滑らかな表面を光が反射すると、はねかえった光に偏光が生じます。

 ふつう、自然界では、偏光はおもに水の近くで生じます。このため一部の生物は、偏光を識別する能力を身につけて、水場を見分けるなどの助けとしています。

 しかしながら、人工的な物質がこの仕組みを乱します。車やアスファルトや窓ガラスなどの表面でも、同様に偏光が生じるのです。強い光沢のある表面は、ときに自然の水面よりも強い偏光を示し、「水よりも水らしく」生物に認識されます。したがって、たとえば車のフロントガラスを水と誤解してしまうようなケースが起こり得るのです。

 そこで今回、この偏光汚染の影響を把握するべく、ミシガン州立大学の Bruce Robertson らの調査によって、人工的な表面が生物の生活サイクルに影響を及ぼしたと考えられる事例が収集されました。

 結果、少なくとも300種の水生昆虫において、偏光による影響の可能性が見られたと彼らは述べています。たとえばオスのトンボでは、カーアンテナに止まったり、車の反射した塗装に引き寄せられたりする例が見られました。また、車のボンネットやセメント床、道路に産卵するメスの水生昆虫の例も見られました。

 この効果は、食物連鎖を通じて他の生物に影響することもあるだろうと研究者は述べています。たとえば以前の研究では、人工的な表面近くで昆虫をつかまえる鳥の事例が報告されています。

 こうした効果が生物のコミュニティ全体にどのような影響を及ぼすかについてはまだなお証拠が十分ではありません。今後は、たとえば魚や両生類にとって餌がどのぐらい減少するか、といった間接的な影響の有無についての調査がありえるだろうとことです。

 なるほど・・・。光沢のある表面が生物に悪影響を及ぼすなんて想像もしてなかったのでわりと驚き。よく田舎の道路にカエルが現れるのも、実は水中とカン違いしてるのかなあと想像したり。

 どうやら今回の調査は、可能性のあるケースを収集するというのが主目的のようで、偏光の影響を実証したわけじゃないのかなと思いました。偏光の強弱を調整した環境でのテストとか、すでに行われてたりするのかな。

【参考リンク】
・元論文:Polarized light pollution: a new kind of ecological photopollution

2009年01月05日

学生同士の議論で学力がアップする


 EurekAlert! より。

■ 「クリッカー」でのクラスメートとの議論で学力が上がる、とコロラド大ボールダーの研究
 Peer discussion improves student performance with 'clickers,' says CU-Boulder study

 「クリッカー」というデバイスを用いた、学生同士のディスカッションによる新しい講義スタイルが米国の大学で取り入れられています。今回、このスタイルが学生の理解度にどのような効果があるかを調べた研究結果が報告されました。

 この講義が取り入れられているのは、米国コロラド大学のボールダーキャンパスです。このキャンパスでは、学生にクリッカーと呼ばれるデバイスを持たせ、これを使った新しいスタイルの講義を行っています。

 クリッカーとは、テレビのリモコンに似たシンプルな装置です。学生らは各自のクリッカーを持って講義に臨みます。講師のパソコンには小さなレシーバーが取り付けられており、学生らはクリッカーの操作を通じて、講師のパソコンに入力を送ることができます。

 クリッカーを使うと、こんな新しい講義が可能になります。まず始めに講師から学生たちに選択式の問題が出題されます。学生たちは、クリッカーで自分の回答を送信した後で、近くの席の学生たちと、自由にディスカッションを行う時間が与えられます。学生たちは、ディスカッションの後、再度、自分の回答を送信します。

 このように、従来とはかなり違った講義が可能になったわけですが、とはいえ、こうした講義にどのぐらいの教育的効果があるのかという点は実際は不明でした。たしかに、ディスカッションの前後で学生たちの正答率はアップしているのですが、だからといってこれで学生たちの理解が良くなったと結論づけるのは早計です。つまり、理解できてない学生が他の学生の回答をコピーしたにすぎない可能性があるわけです。これまでのところ、実際の理解について確かなデータはありませんでした。

 そこで、同大学の生物学の準教授 Tin Tin Su らは、これを明らかにすべく、実際に行われた講義から、正答率の調査を行いました。

 結果はこうでした。出題直後の回答で約50%の正答率だった問題に対し、ディスカッションの後で再度回答をしてもらったところ、正答率は68%まで上昇したことが分かりました。さらにその後で、類似した内容のフォローアップ問題を解いてもらったところ、正答率は70%以上と、始めの50%より良い結果が得られました。

 さらに面白いことが分かりました。あるグループでは、はじめの回答では全員が不正解だったにも関わらず、ディスカッションで正答にたどり着きました。

 講義の中で、講師からのヒントは与えられず、学生だけの議論で正解に辿り着いたわけです。彼らはカンニングなどではなく、学生同士のディスカッションを通じて学びを得たのだと研究者は述べています。

 なるほど。ちなみに現在、同大学では約1万7千名の学生がクリッカーを持っているそうです。下記のリンクからクリッカーの製品写真などが見られますが、思っていた以上にシンプルなインターフェースで少し驚き。学生から文字入力ができたり画像や動画の送受信ができたり・・・とかいった想像とは全くの逆で、5つの選択肢を選べるだけと、本当にシンプルです。将来はどういう方向に進むのかな、と興味が湧くところです。

【参考リンク】
・元論文:Why Peer Discussion Improves Student Performance on In-Class Concept Questions
i-clicker

2008年12月29日

顔による感情表現は先天的


 EurekAlert! より。

■ 顔の感情表現は学習的でなく先天的との新たな研究
 Facial expressions of emotion are innate, not learned, says new study

 顔による感情表現は、後天的に学習するものでなく、生まれつき備わっているものである。スポーツ選手の表情を分析した研究によって、こうした主張を指示する新たな証拠が見つけ出されました。

 この調査を行ったのは、サンフランシスコ州立大学の心理学の教授 David Matsumoto です。彼は、視覚障害および健常のスポーツ選手の顔画像を分析するという方法によって、ある状況で選手たちがどのような表情を示すか調査を行いました。

 彼が用いたのは、2004年の夏に行われたオリンピックとパラリンピックの大会で収集した、柔道の選手のさまざまなシーンでの顔画像でした。枚数は4800枚、23カ国に及びました。彼は、いろいろなシチュエーションにおいて、視覚障害の選手と健常の選手との間で、表情にどのような違いがあるかを分析しました。

 分析の結果、こんなことが分かりました。ある同一の状況において、両選手が見せる顔の動きは、統計的にほぼ同一であることが分かったのです。

 例を見ましょう。メダル授与のセレモニーのとき、銀メダルの選手は、85%の割合でいずれも「社会的スマイル」と呼ばれる表情を示していました。社会的スマイルとは、いわゆる「満面の笑み」が目を細めたり頬を上げたりなどを伴うのとは異なり、口の筋肉だけを使った、作り笑いに近いスマイルのことです。銀メダルの選手たちは、決勝戦で敗れた悔しさをコントロールするかのように、こうした社会的スマイルを見せていたのです。

 当然のことながら、生まれたときから目が見えない状態だった選手らは、視覚的な学習によってこうした笑い方を身につけることは不可能だったわけです。今回の結果は、視覚的学習とは異なる、おそらくは先天的なメカニズムが何かしら働いていることを示していると言えます。

 なるほど。。この研究者は、自身も柔道でオリンピックの出場経験があるそう。こういう表情に関する研究って、実験室の中に被験者を閉じ込めてやるってイメージがあるけど、こういう現実の表情を集めて分析するってのは新鮮な感じでおもしろいです。

【参考リンク】
・元論文:Spontaneous Facial Expressions of Emotion in Congenitally and Non-Congenitally Blind Individuals

2008年12月28日

株式が漁業の破たんを食い止める


 Scientific American より。

■ 株式市場ストラテジーは漁業の破綻を食い止める
 Stock-Market Strategy Halts Fishing Collapse

 漁業のしくみに株式市場のやり方を取り入れるという新たな手法が行われています。今回、この手法が漁場や漁業者にどのような効果があるかの調査結果が報告されました。

 漁業のしくみには、従来から「オープンアクセス」という方式が知られています。オープンアクセスの方式では、ライセンスを持つ者であれば好きなだけ魚を獲ることができます。(実際は組合ごとにいろいろな規制を設けて漁獲量を調整していますが。)一方、近年あたらしく提案された方式が、「漁獲株式」とでも呼ぶべき仕組みです。

 漁業株式とはどういうものでしょうか。これは通常の株式とすこし似ています。株式を所有する漁業者は、年ごとに漁場の全体で収穫可能な量のうち、自分の所有するパーセントぶんだけの収穫をおこなうことができます。漁場全体の収穫可能量は、毎年、政府によって漁場の魚の生息数が調査され、その結果にもとづいて決定されます。生息数が多ければそれだけ収穫可能量が増える、つまり株式の価値が高くなるというわけです。

 さらに漁業者たちは、株式を他者との間で売却したり購入したりすることが可能です。したがって、各漁業者は自身の今後の予測にもとづいて、毎年の自分の収穫量を調整することができるようになるのです。

 さて今回、米国カリフォルニア大学の資源経済学者 Christpher Costello らによって、この新しい方式で実際にどのような効果が得られているのかが調べられました。彼らは、1950~2003年にわたる1万1千人もの漁業者を対象に調査を行いました。

 調査の結果はこうでした。漁獲株式を導入することによって、それまでの減少傾向にあった生息数が、減少に歯止めがかかるか、もしくは回復するという全体的な傾向があることが明らかになりました。

 さらに、漁獲株式を導入した漁業者たちは、従来の漁業者たちと比べて、破たんに落ち込む割合が半減することも明らかになりました。

 株式の導入がもたらしたメリットは何だったのか。それは、漁師たちの間に、海洋を大事にするという金銭的な動機が生じたことだと言えます。つまり、彼の言葉でいえば、賃貸から持ち家に引っ越すことによって、建物を大事に扱おうとする強いインセンティブが働いたのです。

 なるほど。個々の漁業者が自分の目先の利益だけを最優先して行動すると、漁場全体としては資源が減り、やがて個々の漁業者も破綻してしまうと。株式というかたちで資源をシェアすることで、資源保護の点だけでなく、漁業者の長期的な利益という点でもメリットがあるのだなあと思いました。

 ちなみに先日に紹介した「株取引がダムの水位を予測する」では、ダムの水位予測に今回と似た株式の仕組みを導入することで、関係者の一種のコンセンサスを形にできるメリットが得られていました。今回は、言葉こそ同じ「株式」ですが、これとはまた違ったメリットが得られたといえるのでしょう。

【参考リンク】
・元論文:Can Catch Shares Prevent Fisheries Collapse?

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