2009年08月12日

プロジェクトオイラーを遊び倒すガイド(初級編)


前回の導入編では、プロジェクトオイラー(Project Euler)の概要を紹介しました。本記事では、実際にどんなふうに問題を解いていくか、その様子を述べてみようと思います。

それではさっそく問題にトライしてみましょう。本来なら、実際の問題を使うところなのですが、ネタバレはできるだけ書きたくないので、実物を模したオリジナル問題を3つ(初級、中級、上級)作ってみました。これを題材に、プロジェクトオイラーへの取り組み方を見ていきましょう。

初級編はこんな問題です。

【初級問題】 よく知られているように、2は1番目の素数であり、3は2番目、5は3番目、7は4番目の素数である。 n 番目の素数 p に対し、n もまた素数である場合に、p を「素数番目の素数」と呼ぶことにしよう。 3と5は素数番目の素数だが、2と7はそうではない。 100万以下の素数番目の素数の総和を求めよ。

素数をテーマにした問題です。プロジェクトオイラーでは、素数をあつかう問題がとてもよく出されます。

初級編を解いてみよう

さて、この問題はどうすれば解けるでしょうか? ぱっと考える感じ、条件に合う素数をすべて見つけて、順に足し算してやればよさそうです。そこでまずは100万以下の素数をすべて求めて、何番目かを先頭からチェックしていく、というアプローチで進めてみましょう。

100万以下の素数をすべて求めるにはどうすればよいでしょうか? 素数のリストを求めるアルゴリズムとしてよく知られた「エラトステネスのふるい」が有効そうです。これを使って求めてみましょう。

エラトステネスのふるいについてはウィキペディアの記事(これ)を参照して下さい。まず100万以下の整数を羅列して、2の倍数をすべて消す、3の倍数をすべて消す、4の倍数をすべて消す・・・という作業を1000まで繰り返します。最後までやると、素数のみが消えずに残るというしくみです。

こうして得られた素数のリストを、n の値を1ずつ増やしながら順にたどり、n が素数であれば和に加えます。n が素数かどうかの判定には、いま作ったふるいがそのまま利用できます。

結果は次の通りです。

結果、3475059124 という答が得られました。実際にはこのあと、問題ページにあるテキストボックスに回答を入力し、正解かどうかをチェックします。みごと合っていれば、正解アイコンが現れます。

初級編はわりと単純な問題でした。次の中級編では、ひと工夫が必要な、より難度の高い問題にトライしていきます。

2009年08月11日

プロジェクトオイラーを遊び倒すガイド(導入編)


 ここしばらく更新が滞り気味でごめんなさい。更新が少なかったのは、数ヶ月ほど前にプロジェクトオイラー(Project Euler)なるサイトの存在を知り、すっかり病みついてしまったためです。そこで今回は趣向を変えて、プロジェクトオイラーの面白さを4回に渡って紹介したいと思います。

プロジェクト・オイラーとは何か?

プロジェクトオイラーとは、プログラミングで解く数学の問題集のサイトです。

出される問題はいずれも、単に数学の知識だけでは解けないようになっています。コンピュータを使ってプログラミングすることで初めて答が得られるようになっています。数学的な素養とプログラミング技術の両方が要求されます。

問題は現時点で252問あり、現在も週1のペースで増えています(ただし8月末まで休み)。参加者はユーザ登録すると、問題リスト(難易度の順番に並んでいます)の好きな問題から解くことができます。プログラミング言語に制約はありません。答さえ出せれば、どんな方法を使って解いてもかまいません。

サイトには参加者のランキング(こちら)が掲載されています。ランキングは正解数で決まります。同数なら早い者順です。

上位陣はみなもちろん全問正解しています。毎週末に新作問題が発表されると、1番乗りを目指して静かな戦いが繰り広げられるという感じです。

やってみよう

参加はメールアドレスを登録するだけと簡単です。国と使用するプログラミング言語を自己申告します。日本人の参加者は600名ほど。使用言語は C/C++ が最も多く、Python、Java がその次に多いです。

問題はすべて英語ですが、有志による 日本語訳 wiki で内容は分かると思います。

始めのうちは、手の付けようのなさに戸惑うこともありますが、問題を重ねるうちに、プログラミングの基本や数学的な思考法が自然と身についてきます。夏休みの頭のトレーニングに、プログラミングの勉強に、ぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。

次の記事(初級編)では、どんなふうに問題を解いていけばよいのか、実際を模したオリジナル問題をつかって見ていきたいと思います。

【参考リンク】
濃縮還元オレンジニュース::数学の問題を好きなプログラミング言語で解く「Project Euler」

2009年07月12日

コンピュータはテレビで手話を学ぶ


 New Scientist より。

■ コンピュータはテレビを見て手話を学習する
 Computer learns sign language by watching TV

 テレビ番組に表示される手話と字幕を解析し、コンピュータに手話の自動学習をさせよう、という研究が行われました。

 この研究を行ったのは、オックスフォード大学の Patrick Buehler と Andrew Zisserman、リード大学の Mark Everingham です。

 彼らはこんなアルゴリズムを開発しました。映像にうつった手話通訳者を解析して、手の形がどういうパターンなのかを特定するアルゴリズムです。腕の角度から手のおおよその位置を当てて、さらに肌色のエリアを探して手の形を特定するというものです。

 さらに彼らは、このアルゴリズムを使って、コンピュータに約10時間分のテレビ番組を学習させました。いずれも手話のある番組です。ここで彼らはもう一つのトリックを使いました。たいていの場合、手話のある番組には、字幕で手話の内容が表示されます。そこで、字幕の内容を解析して、特定した手話のパターンと対応づけたのです。

 もちろん、字幕には長い文章が表示されることもありますので、これらのひとつひとつを手話のパターンに対応づける必要があります。彼らは、同じ言葉が複数回あらわれたときをうまく利用して両者を対応づけました。

 と、このようにして、210個の名詞と形容詞に対する手話のパターンを学習させました。

 この結果、コンピュータは、手話のボキャブラリーが一切なかったにも関わらず、136個(65%)の単語に対する手話を正しく学習できていることが分かりました。

 実際には、手話の内容と字幕の内容が微妙に異なっている場合がいくらかあったため、この結果はかなり良い精度である、と研究者は評価しています。

 今回の結果は、やがてテレビ番組の自動手話へと利用されるかもしれません。アバターを画面に表示して手話をさせる、という方向での応用が期待されます。

 なるほど。。。テレビ番組の自動手話、というのは便利そうでよいですね。これまで手話のなかった番組でも、自動で手話がつくようになると。今回の研究の結果を使うと、すでに放送された手話と字幕の関係から次々とあたらしい手話を学習していくことになるのかな。外部からの文字入力などを必要とせず、ソフトウェアが自分で字幕を読み取って利用する、という点が個人的にすばらしいと思いました。毎日のように新しい言葉が生まれてくる今の時代によくマッチした技術かもしれません。

 とはいえ、素朴な疑問なんですが、こういう手話のボキャブラリーって、どこかにデータベースとして集約されていたりしないんですかね? 新しい手話が生まれるたびに意味と動きが登録され、利用者は定期的にダウンロードする、なんて仕組みなら学習せずとも効果が得られるような。。。原理的には不可能ではないような気もしますが、困難な事情があるのかな。

【参考リンク】
・元論文:不明。IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition という学会で発表されるそうです。

2009年07月04日

花火にもエコの時代がやってきた


 ABC Science より。

■ 花火が環境に少しやさしくなった
 Fireworks to became a little greener

 花火の季節がやってきました。本日7月4日はアメリカの独立記念日で、全土のあちこちでお祝いの花火が打ち上げられていることでしょう。しかしながら、環境問題の関心が強まっている昨今、エコへの動きはどうやら花火にまでも広がっているようです。

 今回あらたに発表された記事によると、環境への悪影響の少ない材料をもちいた花火が開発されたとのことです。

 この研究を行っているのは、米国ニューメキシコのロス・アラモス研究所の David E Chavez らです。彼らは、花火に含まれる化学物質が、周囲の人々にどのような健康的な影響をおよぼすかの調査を行っています。

 多くの方がご存じの通り、花火のカラフルな色は、金属を燃焼させることによる反応(炎色反応)によって生まれています。火薬の中に、色火剤と呼ばれる金属の化合物が入っているのです。これらの金属元素は、色を出した後、なんらかの化合物として空気中を漂い、やがて地上に到達することになります。

 いくらかの金属は、色を生み出す上で欠かせない一方で、人体にとって有害になることがあります。たとえばアンチモン(Sb)は白色を作るのに用いられますが、一方で肺や心臓、胃などに害をおよぼします。また、バリウムは緑色に用いられますが、胃腸管や心臓にとって有害です。

 さらに過塩素酸塩(過塩素酸イオン(ClO)を含むイオン結晶)は火薬の材料として用いられます。動物実験では、カリウムやアンモニウムの過塩素酸塩が甲状腺を引き起こすことが示されています。

 さて、2007年に発表された彼らの研究(*1)では、オクラホマ州の湖で7月に行われた独立記念日の花火の後で、付近住民の身体の状態がチェックされました。この調査によると、大会の14時間後に、過塩素酸塩のレベルが通常より1000倍に上昇していることが分かりました。上昇前のレベルに戻るのに20~80日もの日数がかかっていました。

 また別の調査では、同州のエイダ湖で、花火の前後で湖水の過塩素酸塩のレベルが1000倍にアップしていました。これは州が飲料水として認めている上限よりも高いレベルです。

 と、このように、実際の悪影響の有無についてはさらなる議論が必要なものの、今回、従来の花火の代替となりえる化学物質があらたに考案されました。

 彼らが開発した花火は、窒素をベースにした燃料にし、さらに酸化剤に硝酸塩を用いた花火です。これらは従来の炭素ベースの燃料とは異なり、過塩素酸塩の使用が不要になります。この新しい燃料によれば、従来と比べバリウムの量が10分の1で済ませることが可能になります。また、煙の量も従来より抑えられ、健康面のほか、より花火が見やすくなるというメリットがあります。

 しかしながら現在は、コストの問題のため普及はむずかしい状態です。政府によって花火の物質に規制がかかるようにならない限りは、価格はダウンしないだろうと専門家は述べています。

 なるほど。。花火大会に行くとほんのり漂ってくる火薬の匂いも、将来には別のものになってるかもしれないわけですね。ちなみに今回の話はすべて米国の話ですので、日本ではどういう規制があるのか、どういう化学物質が使われているのか、といった点はあいにく分かりません。似たような状況なのかな。

【参考リンク】
Pyrotechnics For The Planet
・(*1)Perchlorate Behavior in a Municipal Lake Following Fireworks Displays

2009年06月06日

モテるマッチョが支払う代償


 New Scientist より。

■ たくましい男はセックスが多いが、支払うべき代償がある
 Hunks get more sex, but there's a price to pay

 筋肉たくましい人は、そうでない人と比べて、女性を引きつける一方、免疫や栄養の面で生存上のコストがあるかもしれない。筋肉量とさまざまな指標との関連を調べた新たな研究によってこうした可能性が指摘されました。この結果は、なぜ人類の男性が必ずしも筋肉隆々にならないのか、という理由を説明するヒントになりそうです。

 この研究を行ったのは、米国ピッツバーグ大学の進化心理学者 William Lassek です。彼は、米国の健康栄養調査に参加した5000人以上(18~49歳)のデータを使いました。彼は、このデータをもとに、大きな筋肉を持つことと、その他の指標にどのような利点または欠点があるか、分析を行いました。

 結果はこうでした。除脂肪体重(脂肪を除いた体重)または腕・脚部の筋肉量が多い人ほど、よりたくさんの性パートナーがいたことが明らかになりました。また、筋肉のある人ほど、より若い年齢で性交渉を体験していました。

 一方で、筋肉があることは良いことづくめではありませんでした。筋肉量とカロリー摂取量との間に強い相関があることが分かったのです。この相関は、BMI、年齢、活動レベル等とカロリー摂取量との間の相関よりも強いものでした。これはつまり、筋肉のある人はそうでない人と比べて、空腹状態になる頻度が高かったかもしれないことを示しています。

 さらに、筋肉のある人は、白血球の生産量が少ないうえに、また、C反応性タンパクと呼ばれる免疫分子の量においても劣っていることが分かりました。いずれも病原体の破壊に役だつものです。

 以上の結果から、研究者は、筋肉がたくましいことは、性的な利点があるというメリットがある一方で、エネルギー的なコストの面でデメリットを兼ね備えていると述べています。結局のところ両者はいくらか相殺し、ひいてはなぜ様々な体型の人々が存在しているのかを説明する一つになっている、と彼は述べています。

 なるほど。。なお筋肉の多さと性的な魅力やパートナーの数との関係を示した研究はすでにあるそうで、その結果から比べるとまあそこまで意外な結果が出たわけではないのかなと感じます。とはいえ筋肉量と性体験の関係というのは初めて目にしますし面白いです。

 Lassek さんの説明が正しいと仮定すると、筋肉のある人ほど、感染症に感染する割合が高いはずだ、という推論が成り立ちそうです。こういう関係ってすでに調べられていたりするものなのかな。

【参考リンク】
・元論文:Costs and benefits of fat-free muscle mass in men: relationship to mating success, dietary requirements, and native immunity

2009年05月10日

音の知覚は体力に関係している


 ABC Science より。

■ 知覚は耳それぞれ
 Perception is in the ear of the beholder

 接近してくる音を耳にするとき、体力的に劣る人々は、すぐれた人々と比べて、実際よりも自分に近いと判断する傾向にあることが、あらたな研究によって明らかになりました。

 この発表をしたのは、米国ウースター大学の準教授 John Neuhoff です。彼らは被験者を集め、こんな一連の実験を行いました。

 まず被験者らは、始めに体力測定を受けました。握力の強さと、運動後の心拍数の回復の早さが測定されました。

 さらにその後で、被験者らはある音を聞かされました。だんだんと自分の近くに現れてくるような音です。彼らは、音が自分の目の前に来たと思ったときに手元のボタンを押すように依頼されました。研究者たちは、ボタンが押されたタイミングと、被験者の体力テストの結果との間にどのような関連があるかを調べました。

 結果はこうでした。被験者の98パーセントは、実際よりも早くボタンを押しました。しかし、体力測定で優れた結果を出した被験者は、より長く待つ傾向があることが分かったのです。反対に、悪い結果だった被験者は、あたかも安全のための余裕を設けるかのように、すみやかにボタンを押しました。

 Neuhoff は、今回の結果を進化の観点からとらえています。「こうした予期のミスはコストがほとんどない上に、危険源に対処したり回避したりする時間を実際にもたらしている」と述べています。

 さらに彼は、同じ被験者であっても、食事の改善などで体力的に良くなれば、より性格に音源の到着を予想できるようになるのではと考えています。

 なるほど。。。握力や心拍といった一見関係のなさそうなことがらが音の認識と相関を持っているというのは大変おもしろい結果です。実際の因果関係がどこにあるのかは今回の実験だけではよく分かりませんが、彼が述べているように、同一の人物での比較をしてみるのは面白そうですね。あるいは1日の中でもどう違っているかとか、体調の良し悪しでどう違っているかとか、何かしらの傾向がみられるのかもしれません。

 ちなみに性別で比べてみると、女性の方が男性よりもすばやくボタンを押す傾向が他の研究から分かっているそうです。この傾向も特徴的です。

【参考リンク】
・元論文:不明。米国音響学会に発表予定だそうです。

2009年04月26日

世界の辺境の度合いが分かるマップ


 New Scientist より。

■ 地上最奥の地はどこか
 Where's the remotest place on Earth?

 都会を離れて海外に行き、さらに何日も道を進んで大自然の中で過ごす。アウトドア好きにはこんな旅行はたいへん魅力的でしょう。さて、このような人里離れた地域は、今の地球にどのぐらいあるのでしょうか? あらたな研究によって、こうした地域は想像以上に少ないことが明らかになりました。

 この研究は、イタリアにある欧州委員会の共同研究センターと、世界銀行の研究者らによるものです。

 この研究では、世界の「接続性」をしめす地図が作成されました。研究者らは、世界の各地点から最寄りの人口5万人以上の街まで移動するのにどのぐらいの時間がかかるかを計算しました。移動は陸路または水路を使ってなされるとし、道路や線路、河川路のネットワークのアクセスや、地域内の情報が盛り込まれました。また、土地の高度や勾配、国境検問所による足止めといった要因が考慮されていました。

 作成された地図から読みとれた情報は、たいへん面白いものでした。当初の予期よりもはるかに多くの土地が、短い時間でアクセスできることが分かったのです。

 まず、最寄りの都市から陸路で48時間以上かかる土地は、世界のうち10パーセント未満でした。

 また、アクセスがきわめて困難であると思われていた地域であっても、文明からそう遠くないことが分かりました。たとえばアマゾンでは、48時間以上かかる土地は全体の約20パーセントしかありませんでした。河川路ネットワークが広範囲に渡っていること、そして道路建設が急速に広がっていることが理由です。この割合はカナダのケベック州と同じ水準です。

 今回の結果からは、医療や教育といったリソースへのアクセスがどのように推移するかといった情報や、あるいは人間が野生生物をどのように追いやっているかといった情報を示すと研究者は述べています。

 なるほど。リンク先の記事ではギャラリーで計10枚のさまざまな地図を見ることができます。かなりおすすめ。都市に近いエリアが、道路沿いに網目のようになっている地域もあれば、斑点状に並んでいる地域もあり、何となく眺めているだけでもかなり楽しめます。

【参考リンク】
・元論文:不明

2009年04月12日

トレーダーは笑顔にご注意を?


 New Scientist より。

■ 楽しい気分のトレーダーはリスクを取ろうとするかもしれない
 Cheery traders may encourage risk taking

 このブログでは以前から何回か、笑顔を見ることがもたらす心理的な効果について取り上げてきました。

 「5分間遊ぶだけでストレスが減るゲーム」では、笑顔を探すゲームで遊んだコールセンターの従業員にストレスレベルの低下が見られました。「ハッピーな気分がもたらす志向」では、笑顔を見た被験者がより上位のものの考え方をするようになりました。いずれも、笑顔を目にすることが心理的によい効果をもたらしていました。

 しかし、今回の新たな研究では、笑顔を見ることが、株式投資において、リスキーで非合理的な選択を被験者にさせてしまうことが明らかになりました。

 この研究を行ったのは、ミシガン大学の大学院生 Julie Hall です。彼女は認知神経科学ソサエティ大会で、こんな実験結果を発表しました。

 彼は12名の男性と12名の女性からなる被験者を集め、次のような株式投資ゲームをプレイしてもらいました。

 被験者は、各ラウンドの始めに、「安全な」株と「リスキーな」株のどちらかを選びました。安全な株に投資すると、3ドルを手にすることができます。一方、危険な株に投資すると、半分の確率で5ドルが得られますが、半分の確率で5ドルを失ってしまいます。

 また、どの株が安全でどの株がリスキーかはゲーム開始直後は分からないようになっていました。ラウンドごとに各銘柄の安全/リスキーが知らされるようになっていました。現実世界での運用を模すためです。

 さらに、被験者らは、各ラウンドの前に、人物の顔画像を示されました。半分は無表情の顔を示されました。もう半分は、ハッピーな顔を示されました。

 さて、結果はどうだったか。このルールのもとでは、つねに安全な株に投資し続けることが合理的であると言えます。実際、無表情を見た被験者のほとんどは、安全なほうを選びました。しかし、笑顔を見た被験者は、リスキーな株を選ぶ頻度があきらかに高くなっていました。この傾向は、笑顔を一瞬だけ表示させたときも変わりませんでした。

 今回の結果は、顔による感情表現が、たとえそれは意識的に認識されなかったとしても、人々の投資決定に影響をおよぼし得ることを示していると言えます。そしてこの影響を今後より詳しく調べることで、投資家が見せる非合理的な行動の理由を説明する意思決定モデルが作れるようになるかもしれない、と著者は述べています。

 なお、実験の際にはfMRIを使った脳のスキャンも行われているようです。詳細は下記のリンクをどうぞ。

 なるほど・・・。期待値では圧倒的に不利なのにもかかわらず、リスキーな方を選ぶ人が増えたというのは面白いですね。期待値を同じにしたらこれ以上に差が出てくるんでしょうかね。そのあたりも試してみてほしいところです。

 実際の株式運用の世界では、これよりもっと複雑な指標や情報がからんで投資家は意志決定をするわけですから、今回みられた感情的な効果がどこまで実世界におよんでいるかは難しい問題ですね。どなたかデスクトップの壁紙をスマイルに変えて試してみませんか?

【参考リンク】
・元論文:PUT YOUR MONEY WHERE YOUR HEART IS: AN FMRI INVESTIGATION OF AFFECTIVE INFLUENCES ON FINANCIAL INVESTMENT DECISIONS(講演資料のためリンク先不明。学会のサイトよりアブストラクト(pdf)が入手可能です。

2009年04月03日

アメフトに負けると心臓病に?


 ABC Science より。

■ フットボールの敗北は心痛よりひどい
 Football loss causes more than heartache

 スポーツの大きな試合で、大ファンのチームが負けてしまった・・・、こうした出来事は、気持ちをガッカリさせるというだけでなく、実際に健康上の問題を引き起こしているかもしれないと新たな研究は示しています。

 この研究の著者である南カリフォルニア大学の Robert Kloner は、「負けたことに感情的なストレスを感じたり、大きな試合で激しい競争が起こったりすると、それが人々に循環器系の死亡を引き起こし得る」と述べています。

 以前にドイツで行われた他の研究者の調査では、サッカーの試合中、負けた方のチームのファンに循環器系に好ましくないトラブルが生じていました。そこで彼は、米国の主要なスポーツのイベントにおいても同様の結果が起こるのか、調査を行いました。

 彼が対象に選んだのは、アメフトチームのロサンゼルス・ラムズと、ロサンゼルス・レイダーズです。ラムズは1980年、レイダーズは1984年にスーパーボウルに出場しました。多くの方がご存じのように、スーパーボウルは全米ナンバーワンのアメフトチームを決定する、アメリカで最も盛り上がるイベントです。彼は、1980~83年と1984~87年について、イベント期間中のロサンゼルスでの死亡率を、死因別に調べました。

 結果は、チームの勝敗によって異なっていました。ラムズはピッツバーグ・スティーラーズに敗れたのですが、この年のデータを見ると、全体的な死亡率は他の年の平均と比べ約17%増加していました。特に、循環器系の死亡は約22%増加していました。また、レイダーズはワシントン・レッドスキンズに勝利しました。このときの死亡率は反対に6%減少していました。

 なぜ、チームが敗れたときの死亡率は高くなっていたのでしょうか? 可能性としては、チームが敗れたことでファンが消沈した気持ちになったことが考えられます。意気消沈した状態が、一般に循環器系のリスクであることは知られています。また、怒りの気持ちが影響している可能性もあります。

 この著者は、心臓病のリスクがあり、スポーツに熱狂しやすい人は、イベントの前に医者にかかっておくことを勧めています。

 なるほど・・・。まあどうやら今回の調査は、毎年の大会を網羅的に調べたものではなさそうで、あくまでも一例を調べてみたらそうだった、というもののようです。

 とはいえ以前の研究でも同様の現象は報告されていますね。記事でも触れられているドイツの研究(*1)では、勝ち負けそのものではなく、試合が接戦だったかどうかに応じて心臓病の急患の発生が多くなっていることが示されています。もしかすると、レイダーズの試合は、逆転シーンなどのエキサイティングな場面が少なかった試合だったのかもしれません。

 そういえば以前にこのブログで紹介した記事(野球と緊急治療室の妙な関係)では、野球の試合のある日は緊急治療室に運ばれる急患の数が減るという、今回とはやや逆の傾向が示されていますね。さまざまな要因が絡みあった複雑な現象のようです。

【参考リンク】
・元論文:なし(American College of Cardiology の年次大会で発表されたそうです。)
USC NewsUSC study links football losses to heightened risk of fatal heart attacks(大学のプレスリリース)
・(*1) Cardiovascular Events during World Cup Soccer

2009年03月15日

幼い子どもも多数派の意見を好む


 EurekAlert! より。

■ えり好みする未就学児童たち:幼い子どもは多数派の意見を好む
 Picky preschoolers: Young children prefer majority opinion

 私たちが何かを決定しなければならないとき、多数の人が選んだものと同じ答えを選ぶということはよくあることです。このような「群集にしたがう」心理はいつごろから生まれるのでしょうか? 新たな心理学の研究によると、未就学の非常に幼い時点ですでにこうした判断の仕方が見られることが明らかになりました。

 この研究を行ったのは、ハーバード大学の Kathleen H. Corriveau らです。彼女らは、3、4歳の子どもを対象に、こんな実験を行いました。

 被験者の子どもは、3人または4人の小集団の人々が、ある新しい物に名前をつけている場面を見せられました。小集団のうちの過半数(2/3または3/4)の人は、それを同じ名前で呼ぶのですが、残り1人は、それとは異なる名前で呼びました。

 この場面を見終わった後で、子どもたちは、その物を自分ならどう呼ぶかを尋ねられました。すると子供たちは、少数派ではなく多数派がつけた名前を選ぶ傾向があることがわかりました。

 さらに続けて行われた実験では、もうひとつの面白い傾向もわかりました。今度は、先ほどの多数派のメンバーが1人を残して部屋を出て行き、多数派と少数派が1人ずついるようにしました。そこでまた、別の物体に対してそれぞれ異なる名前をつけて呼んだのです。

 するとこのときもやはり、子どもの選択は、かつて多数派だったメンバーの側につくことが分かったのです。

 これらの結果は、いわゆる多数の合意を敏感に認識し、かつ信頼するという能力が、3,4歳という幼い時点ですでに機能していることを示しています。さらに、多数派に誰がいて誰がいなかったか、という状況も記憶できると言えます。今回の発見は、幼い子どもが、単純であるが強力な戦略を助けとして、意見のばらつきの中をうまく進んでいるという初の証拠になるだろうと著者らは述べています。

【参考リンク】
・元論文:Going With the Flow: Preschoolers Prefer Nondissenters as Informants

<<前のページへ 12|3|45678910 次のページへ>>

アーカイブ