2006年08月27日

サイモン・シン「ビッグバン宇宙論」

ビッグバン宇宙論
 最近なかなか本が読めていませんが、その中でやっと読み終わった書籍のご紹介。
 
ビッグバン宇宙論」(著:サイモン・シン、訳:青木薫、出版:新潮社)
上巻http://www.amazon.co.jp/gp/product/4105393030/
下巻http://www.amazon.co.jp/gp/product/4105393049/
 
 一般向け科学書の中でもっとも有名と思われる著者サイモン・シンと、訳者青木薫とのタッグによる、「フェルマーの最終定理」「暗号解読」に続く3作目の書籍です。個人的には、この著者の本なら、本屋で中身を見ずにそのままぱっと買ってしまってもまず後悔はしないと思っています。
 
 さて、宇宙論についての書籍といえば、訳者のあとがきにも記されていますが、巷にはほんとうに数多くの書籍が存在しています。その中で、本書で著者がとった切り口とはまさに直球ど真ん中といえるもの。そこに著者のあいかわらず明快な解説が加わり、たいへんスムーズに昔の人々の歩いてきた議論をたどることができます。
 
 本書は、前二作とはまた異なるおもしろさを持っています。「フェルマーの最終定理」では、数学者たちによって壮大なパズルのピースが一つ一つ埋められていくプロセスが描かれ、最後の一ピースが埋まった瞬間の喜びを感じることができました。また「暗号解読」では、暗号作成者と解読者との間の、一息つく暇さえないスリリングな戦いの様子を味わうことができました。
 
 本書「ビッグバン宇宙論」では、一応は、ある一つのテーマに沿ってストーリーが進んでいきます。それはつまり、「宇宙は過去のある時点で創造されたのか? それとも永遠の過去から存在していたのか?」という問い。この問いを念頭に置きつつ、紀元前6世紀のギリシャから始まり、天動説・地動説、エーテル、相対性理論といったトピックを通じた後で、やがて「ビッグバン宇宙」対「永遠で静的な宇宙」という対決の図式にいたります。はじめは少数の科学者のみが信じていたビッグバン説が、いかにして有力な証拠をあつめ、やがて宇宙論での大きなパラダイムを作り上げていったか、という点は本書でいちばん楽しめるポイントです。
 
 ですが、多くの方がご存知の通り、宇宙論の話題は、ビッグバンVS静的宇宙の対決がすべてなのではありません。この他にも魅力的なトピックがたっぷり秘められているのがこの分野です。その個々の例は本書のエピソードでも挙げられている通りです。そういうわけで本書では、パズルのピースが埋まっていく感じと形容するよりも、むしろ巨大な建築物が大勢の手によって組み上げられていく様子を目にしているような、より大きな世界が頭にイメージさせられます。

2006年08月23日

ゴッホは乱流の構造を知っていた

乱流
 Nature Digest 2006年8月号より、絵画と物理を結びつけたおもしろい研究です。

 ゴッホといえば、世界でもっとも有名な画家の一人です。「ひまわり」や「種まく人」の作品はあまりに有名です。彼は1853年にオランダに生まれ、37歳の1890年に、拳銃自殺により亡くなりました。

 さて、今回紹介する研究によると、ゴッホのいくつかの作品を数理的に解析した結果、絵画のいくつかに見られる渦巻きの表現が、現実の乱流にみられる統計学的特徴に正確に従っていることが明らかになりました。

 たとえばそれは、1889年の「星月夜」、1890年の「糸杉と星の見える道」、「カラスのいる麦畑」です。下記をクリックで見ることができます。

星月夜 http://www.moma.org/collection/printable_view.php?object_id=79802
糸杉と星の見える道 http://www.vggallery.com/painting/p_0683.htm
カラスのいる麦畑 http://www.vggallery.com/painting/p_0779.htm

 メキシコ国立自治大学の Jose Luis Aragon のチームは、これらの絵画のデジタル画像を使って、画像中のある間隔の2地点のピクセルが同じ輝度になる確率を計算しました。すると、この関係は、コルモゴロフ・スケーリングと呼ばれる確率分布にしたがうことが分かったのです。

 コルモゴロフ・スケーリングというのは、現代の乱流理論の基礎にもなっている関係で、乱流状態にある2地点の速度差のしたがう確率が、ある数式で記述できるというものです。(詳細は元論文をご覧下さい。)

 すなわち、上記の絵画において、ゴッホは乱流流体の形状について、きわめて正確な直観を得て描写をしていたと言えるのです。

 特に興味深いのは、上記の作品はいずれも、ゴッホが死にいたる直前の時期に描かれたものであること。この時期に、彼は精神障害におそわれ、幻覚や発作といった症状に見舞われていました。一方で、精神的に落ち着いていたとされるかつての作品には、こうした乱流の傾向は見られません。ひょっとしたら彼の精神の乱れが、流体の乱れの挙動への洞察を与えたのでは、と考えられるかもしれません。

 すぐれた芸術作品がもつ魅力の秘密を数理的なアプローチで探ろうというのはとても面白く感じられますね。もちろん、その秘密が単純な数式で表されたからといって、作者への評価や作品の価値が下がってしまうことには決してならないし、あるいは反対に、法則に当てはまらない他の作品が劣ったものと評価されてしまうのかというと、それもまた違うのだと思います。

 何よりも驚くべきなのは、数理的モデルの研究がなされる何十年も前に、画家たちは自然の挙動について鋭い洞察を得ていて、それを絵画の表現に取り入れつつ、観る人の心にインパクトを与える助けとしていたという点なのでしょう。

 本記事の最後でちらっと触れられているのですが、他にも絵画と物理との間の関連性をしらべた興味深い研究があります。1912から1956年の間に活躍した画家に、ジャクソン・ポロックという人物がいます。彼の作品はいわゆる抽象画と呼ばれる作品で、一見したところ、まるで子供がペンキをキャンバスの上で散らかしたような、混沌とした絵です。ですが、オレゴン大学の物理学教授 Richard Taylor が調査したところによると、この図にフラクタル構造があることが明らかになりました。フラクタルについての研究が始まるかなりの以前に画家がこうした構造を直観していたという点が、今回のゴッホとの共通点といえるでしょう。ポロックの詳細は下記リンクをどうぞ。

【参考リンク】
元論文(Kolmogorov scaling in impassioned van Gogh paintings)
 http://www.arxiv.org/abs/physics/0606246
日経サイエンス2003年3月号:ポロックの抽象画にひそむフラクタル
 http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0303/pollock.html

2006年08月20日

簡単なダイエット法――皿を小さくしよう

アイスクリーム
 Reuters より。

 ダイエットに関心のある人にとって非常に興味深いニュースです。
 この記事を読んだ方は、自分の食器を買い替えにいくとよいかもしれません。

Plate size influences portion size
(皿の大きさは取り分のの大きさに影響をおよぼす)
http://today.reuters.com/news/articlenews.aspx?type=healthNews&storyID=2006-08-18T004221Z_01_SIB802519_RTRUKOC_0_US-PLATE-SIZE.xml

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 体重を減らしたい? 小さな皿で食べてみよう。より小さな器やスプーンを使うことで、食べ物を食べる量が抑えられたことを新たな研究は示している。

 「人々は、小さなサイズの器やおそらくは給仕用のスプーンを使って、消費を制御する助けにしようとするかもしれません」と、研究者たちは American Journal of Preventive Medicine 誌に記している。

 「体重を減らすことに関心がある人々は、より小さな器やスプーンを使うべきです。一方、体重を増やす必要がある人々――栄養不良や高齢の人々――は大きなものを使うよう勧められるでしょう」と、コーネル大学の Brian Wansink 博士らは付け加える。

 先行の研究では、ティーンエージャーたちは、背が高くて細いグラスに対して、背が低くて幅の広いグラスよりも77パーセント少ない量のジュースを注いだことを研究者たちは発見している。同様に、別の研究では、フィラディルフィアのバーテンダーは「ハイボール」グラスに対し、タンブラーに注いだよりも少ない酒を注いだことが分かっている。これらの研究が示すのは、器やスプーンのサイズに応じて、人々は盛り付ける分量を調節しているかもしれないということである。

 Wansink のチームは、調査のため、アイスクリームソーシャルに参加していた中西部の大学の学部生、職員、大学院生をふくんだ85名の栄養学の専門家に研究を行った。参加者はランダムに、17オンス(約0.5リットル)もしくは34オンス(約1リットル)の器、2オンスもしくは3オンスのスプーンを与えられ、アイスクリームを盛り付けるよう言われた。

 (訳注:アイスクリームソーシャルというのは、アメリカ中西部で行われている習慣です。それぞれの家庭のオリジナルレシピで作ったアイスクリームを持ち寄り、食べながら親交を深めるというイベントだそうです。)

 その後、アイスクリームの重さが量られ、また参加者は、どのぐらいのアイスクリームを盛り付けたと思うか、そして器とスプーンのサイズは普段使っているものとどのぐらい異なるかについて簡単な調査を行った。

 大きな器を受け取った参加者たちは、無意識のうちに、小さな器の人々よりも31パーセント多くのアイスクリームを盛り付けた。大きな給仕スプーンを使った人々も、器のサイズにかかわりなく、アイスクリームの盛り付け量は14.5パーセント多くなった。そして成人のほぼ全員(85人中82人)が、盛り付けたアイスクリームをすべて食べ切った。

 全体的に見て、大きな器と大きな給仕スプーンの人々は、小さな器と小さなスプーンの人々よりも、約57パーセント多くのアイスクリームを盛り付け、そして食べた。

 「ですが、注意すべき大事なことは、一般的に人々は、栄養学の専門家ですら、多く盛り付けてしまうことに気づいていないことです」と著者らは記している。

 「専門家さえもこうしたきっかけにつまづく羽目になるという事実は、こうした錯覚がいかに偏在的で破滅的かを示す一助になっているのです」と Wansick は記述の中で述べている。

 Wansick らによると、この発見に基づけば、「肥満患者は家で小さな器とスプーンを使って、過剰な消費を減らそうとするかもしれない」という。

 他方で、栄養不良の人々の間では、「大きな器とスプーンによって、ふだんの小さな器やスプーンよりも食べ物の摂取を多くするだろう」と彼らは結論付けている。

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 この記事に登場する Wansick さんの研究は以前にもこのブログで取り上げました。

 「背の低いグラスだと飲みすぎに?」では、ずんぐりしたグラスは、ほっそりとしたグラスよりも、ついつい多めのお酒を注いでしまう傾向があることが分かりました。おもしろいのは、たとえプロのバーテンダーであっても量の見積もりに失敗してしまうという点。それと似たように、今回の記事では、栄養学の専門家さえも器やスプーンの大きさに左右されてしまうのいうのは面白いです。(栄養学の専門家は盛り付けの専門家ではありませんが・・;)

 ところでこの著者たちは、年末の時期にアルコールの研究、そして暑い夏の時期にアイスクリームの研究を発表してますね。狙ってやっているのかな・・?

【参考リンク】
元論文(Ice Cream Illusions: Bowls, Spoons, and Self-Served Portion Sizes)
 http://dx.doi.org/10.1016/j.amepre.2006.04.003

2006年08月07日

天候は地球をふらつかせる

地球儀
 ABC Science Online より。

 中学校や高校のときに、地球の自転について習ったことがあると思います。

 斜めに傾いた地球の絵がかかれてあって、地軸が南極と北極を串のように貫いていて、軸を中心にくるくる回っている、おもちゃのコマのような感じの図です。

 すでに知られている事なのですが、実はこのイメージは正確ではありません。地軸がさす方向というのは、一定ではなく、ふらふらと揺れ動いているのです。ちょうど、コマの芯がまっすぐ固定しておらず、前後左右に振れているイメージだと思います。

 この現象には、大きく2つのタイプがあります。一つはチャンドラー揺動と呼ばれる、約14ヵ月(433日)の周期の揺れ動きで、これは海の水の循環が、気温や塩分濃度の変化や風によって影響をうけ、海底に加えられる圧力が変動するというのが原因であるとされています。もう一つは、季節に応じた揺動。軽く調べた範囲ではきちんとした情報が入手できませんでしたが、おそらく太陽との間ではたらく引力の影響によるものと思います。

 2005年の冬は、この2つの揺動が重なって互いに打ち消しあうという非常に稀な時期だったようです。この時期に見られるわずかな揺動を調べてみると、上記の2つとは異なる新しい揺動が明らかになりました。大気圧の高低に応じた、ちいさなオーダーの揺動が起きていることが分かったのです。

Weather makes Earth wobble
(天候は地球をふらつかせる)
http://www.abc.net.au/science/news/stories/s1705212.htm

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 地球の自転のわずかな変動を検知し測定するというめったにない機会を利用した結果、天候によって惑星が軸上でふらつくということが研究者たちによって確かめられた。

 極でのふらつきは、20セント硬貨サイズからDVDサイズにおよぶセンチメートルの規模であると、米国海軍観測所の天文学者 Thomas Johnson は語る。

 「これらのループは2、3日の規模です」と Johnson は言う。この時間枠では、天候により、宇宙で地軸のさす方向が引っ張られ変動する。

 天候のふらつきを調べるために、ベルギーの研究者たちは、2005年11月から2006年2月までの特別な時期を活用した。この時期は、地球の揺動においてよく知られた2つの大きな成分が打ち消しあい、小さな揺動によるシグナルがかき消されないようになる。

 この2つの成分は、現在の深海の変化によると考えられている433日の揺動と、季節の変化に対応する年一度の揺動である。

 これらは極の位置を野球の内野サイズほどのスケールで変化させる、と Johnson は語る。6.4年ごとにこれらは互いに打ち消しあう。

 「つまりこれは最初で最後のチャンスでした」と語るのは、ベルギーの王立天文台の Sebastien Lambert である。天候の影響を探し出すため、GPSのデータを用いて、時間精度の高い計測をおこなった。

 「もういちど機会を得ようと思ったら、6年以上待たなければならなかったでしょう。」

 Lambert と彼の同僚の Veronique Dehant は、この発見を Geophysical Research Letters 誌に発表する。

 また Lambert は、この期間中の特定の揺動を、アジア、ヨーロッパの大気圧系に関連付けることができた。

 この関連性により、天気予報から地球揺動のわずかな変動を予報することも可能になる。

 小さな揺動を計測することは、航空、計時、通信システムにとって重要だと語るのは、NASAのジェット推進研究所の Richard Gross である。

 「宇宙探査機を追跡するには、地球の回転がいかにして変化するかを知らなければなりません」と Gross は説明する。

 1千万キロメートル離れた場所では、地球の数センチメートルのズレが、宇宙探査機との通信の成功、もしくはコンタクトをまったく失ってしまうという差を生み出し得る。

 「何かを別の惑星に上陸させようとしているなら、これはもっとも重要です」と彼は言う。

 地上では、天候の揺れ動きもまた重要である。GPSや軍用航行システムの誤差を拡大させ、より大きな揺動の予測・修正に用いるモデルの計算を狂わせ得るためである。

 これらの揺動の修正がなければ、「精度は数桁悪くなるだろう」と Johnson は述べる。

 「レーガン・ナショナル空港(ワシントンDCの近く)の緯度では、この変化量は、滑走路に着陸するか、ポトマク川にぶつかるという違いになり得ます。」

 時計の調整をしたり、衛星通信のタイミングをとるときにも、この揺動を考慮に入れる必要がある。

 「これらはみな、最近の地球の方向データを必要とするのです」と Johnson は述べる。

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【参考リンク】
元論文(Rapid variations in polar motion during the 2005-2006 winter season)
http://www.agu.org/pubs/crossref/2006/2006GL026422.shtml

2006年08月01日

冷えたスイカは栄養が少ない

スイカ  Reuters News より、軽めのネタ。

 梅雨も明けてこれから暑さが増していくところですが、冷えたスイカが大好きな人にはちょっと残念なニュースです。

Ice-cold watermelon is less nutritious
(よく冷えたスイカは栄養に劣る)
http://today.reuters.com/news/newsarticle.aspx?storyID=2006-07-27T123438Z_01_N26406455_RTRUKOC_0_US-WATERMELON.xml

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 冷やしたスイカは爽快なものだが、米農務省の研究者たちが水曜日に報告したところによると、室温に出されたスイカよりも栄養に劣る可能性があるという。

 室温で貯蔵されたスイカは、冷蔵されたスイカや採れ立てのスイカよりも多くの栄養をもたらすことを、研究者たちは Agricultural and Food Chemistry 誌に報告した。

 米農務省のオクラホマ州レーンのサウスセントラル農業研究ラボラトリーの Penelope Perkins-Veazie と Julie Collins は、カロテノイド――太陽による損傷に対抗できる抗酸化物質――の物質と、スイカの日々の生活とに注目した。

 スイカは、スイカやトマトを赤くする抗酸化物質であるリコピンが豊富であり、心臓病や数種のガンを抑える助けとなるとされている。

 Perkins-Veazie と Collins は数種のスイカを、華氏70度(セ氏21度)、華氏55度(セ氏13度)、華氏41度(セ氏5度)で14日間貯蔵して検査した。(訳注:以下の数値はセ氏で記します。)

 セ氏21度(空調の効いた建物の室温)に貯蔵されたスイカはいずれも、おおむね多くの栄養素を含んでいたと彼らは報告した。

 採れ立ての果物と比べると、セ氏21度で貯蔵されたスイカは、40パーセント多くのリコピン、50~139パーセント増しのベータカロテン(体内でビタミンに変換される)を含んでいた。

 「私たちの研究で用いたスイカはみな、収穫の際に十分熟したものを栽培業者に選んでもらった」と研究者たちは記した。

 スイカは収穫後も栄養素を生成し続け、冷やすことによってこのプロセスが遅くなるということをこの発見は示していると彼らは述べた。

 「スイカの消費期限は、収穫後、セ氏13度で14~21日間である」と研究者たちは記した。

 冷蔵庫の温度(5度など)では、スイカは腐敗を始め、1週間後には傷を作り始める、と彼らは記した。

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 つまり、冷たいスイカが大好きな人にとっての最良のソリューションは、常温で保存しておきつつ、食べる前に急速に冷やす、ということになるわけですね。

【参考リンク】
・元論文(Carotenoid Changes of Intact Watermelons after Storage)
http://pubs.acs.org/cgi-bin/sample.cgi/jafcau/asap/abs/jf0532664.html

ブログオフ会に行ってきたよ

? この記事を雑念レポートのテーマに分類してしまうことをお詫びしつつ。

 この前の日曜日に開催された、異業種オフ会に参加してきました。

 平素からお世話になっている心理学院生の綺麗山さん
の主催。夏休みということでアメリカから日本へ戻っていらっしゃっていたのでした。ありがたい機会に浴することができてたいへん感謝です。:)

 

 参加者はほか、獣医学生、僕の元同僚の統計解析院生、さらに僕(IT研究開発)と妻の計5人ということで、それはもう様々なジャンルの方々との集まりになったのでした。

 

 というわけで、色んな方向に話題も移りつつ、とても刺激的で楽しい時間を過ごすことができました。動物の解剖の仕方、統計解析のレクチャー、脳の話、見やすいウェブページ、グーグル、英語と日本語の変換、・・・と、すべてを書き上げようとすると大変な労力が必要になりそうな勢いです。

 

 印象的だったのは、海外在住経験者とそうでない人との間で、トークへの関わり方が違って見えたのが面白かったなあ。僕みたいな典型的日本人タイプだと、うんうんと聞きながら時々言葉を差し挟むという感じだけど、ぽんぽんと言葉を投げかけるようなスタイルに意識して少しシフトしてみるのも面白いなあ、と思ったよ。

 

 僕個人としては、言葉や話題の選びかたなど、後になってから反省するところもあり、酔った勢いに免じて水に流して下さることを切に願っています;

 

 幹事の綺麗山さんと皆様に感謝しつつ、またこんな機会があれば喜んで首を突っ込みたいなあと強く感じたのでした。

2006年07月28日

調査自体が対象に影響をおよぼす

アンケート  EP: end-point 経由、The News & Observer より。

 大学生に対して、運動に関するとあるアンケートをとったそうです。そしてその2ヵ月後に再度質問をとって、この2ヶ月で何回の運動をしたかということを尋ねました。すると、アンケートを受けた学生は、そうでなかった学生よりも多く運動をしたことが分かったそうです。

 アンケートをすることによって、相手がそのトピックをより強く意識するようになり、その結果、実際の行動に変化が生じるようになったとこの結果は示しています。

 さて、ここまでなら結構なことなのですが、この現象は、ドラッグの使用のような、好ましくない行動にも適用されてしまうのです。このため、たとえばドラッグ対策のためにアンケート調査をしたのに、それがかえってドラッグ使用を増加させてしまう、ということが起こり得るわけです。

Survey questions themselves may affect behavior
(調査の質問それ自体が行動に影響を及ぼす)
http://www.newsobserver.com/662/story/462624.html

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 ある研究によると、ドラッグをしたいと思っている大学生に対して、違法ドラッグの使用に関する調査の質問をすると、それだけでその行動が増すという。このことは当然のことながら研究者を神経質にしている。

 共著者であるデューク大学フュークアスクールオブビジネスのマーケティング教授 Gavan Fitzsimons は、「人々に質問をすると、それが行動を変化させるのです」と木曜に述べた。この誘発効果は、「私たちの多くが信じたいと思っていることよりもずっと大きい」ものになりえる。

 研究者の質問によって影響を受けるのはドラッグ使用だけではない、と Fitzsimons は語る。どれだけ運動をしているかを尋ねられると、その後でより運動をするようになります。追跡実験では、授業のサボリや飲酒について質問を受けた学生たちはサボりや飲酒が増えたのです。

 この研究が学術誌 Social Influence 誌の6月号に登場して以来、Fitzsimons の研究チームは、患者たちにうつや自殺思考について質問することが事態を悪くするかどうか関心がある保健従事者からの問い合わせを処理している。政治活動についての世論調査を受けた人々は政治的により活動的になるのではと考えている研究者たちもいる。

■ この研究はどのように行われたか

 これらの研究に対して、Fitzsimons と、共著者であるフィラデルフィアのペンシルバニア大学のマーケティング教授 Patti Williams、ニューヨークのバルーク・カレッジの Lauren Block は、167名の学部生のサンプルを2つのグループに分けた。第1のグループの学生は、今後2ヶ月にどのぐらいドラッグを使用するつもりかを答えてもらった。第2のグループの学生は、今後2ヶ月にどのぐらい運動をするつもりかを答えてもらった。

 2ヵ月後、両者は、何回運動を行ったか、何回ドラッグを使用したかを質問された。第1のグループの学生は、平均して2.8回ドラッグを使用したと述べた。2ヶ月前にドラッグの使用について質問されなかった第2のグループの学生は、平均して1.1回ドラッグを使用したと述べた。

 運動については、以前に運動の予定について質問を受けていた学生は、質問を受けていなかった学生よりも3分の1回多く運動をしていた。

 平均の取れた2つのグループを整理すべく、研究者たちは調査の始めに、過去のドラッグ使用や、ドラッグに対する態度について質問をした。これにより、ドラッグ使用の増加は、「すでにドラッグを使用する傾向やリスクがあるグループのみに限って当てはまる」と結論付けることができた、と Fitzsimons は語る。「ドラッグを一度も使ったことがない人々は、自分の否定的意見を固めただけでした。」

 しかしながら、調査の質問はなおもリスクをもたらす、とペンシルバニア大学教授の Williams は警告する。

 「非常に難しい問題です。政策立案者は今もこうした質問をする必要がありますが、害は及ぼしたくないのです。」と彼女は言う。「リスクのある行動について質問をするときはいつでも、単に質問することによって、その行動にすでに前向きな意向を持っている人々に対し、肯定的な態度を活発にする可能性があるのです。」

 この分野の標準を決定している、カンザス州レネクサのアメリカ世論調査協会の会長 Cliff Zukin は、この研究を驚くべきものと呼んだ。彼は、はたして大学生のドラッグ使用が容易に誘発されるのだろうかと考えている。この影響が一見よりも穏やかであることを示唆している。

 「調査は、行動に影響を及ぼさないように計画されています」と、ニュージャージー州ニューブランズウィックのラトガーズ大学の世論調査の専門家である Zukin は言う。「しかし、ある話題について人々に話しかけるとき、その話題について考えさせることになるのです。」

 この新しい発見は、「私たちに質問の言葉遣いについて本腰を入れて考えさせるものだ」と彼は述べた。

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 質問が意識に影響をおよぼす今回の現象は、僕たちの身の回りでもすでに利用されていますね(意図的にやってるかどうかは別として)。たとえばアンケートのこんな設問はよく見かけます。「普段はどのぐらいの頻度で○○を使用していますか?」「□□というキャンペーンはご存知でしたか?」「○○を購入すると△△という特典があることはご存知でしたか?」などなど、回答する側は、単なる質問だと思って答えるわけだけど、本人が自覚しないうちに相手の売りたい商品のイメージが頭に刷り込まれているのかもしれません。

【参考リンク】
元論文(Simply asking questions about health behaviors increases both healthy and unhealthy behaviors)
http://www.journalsonline.tandf.co.uk/link.asp?id=vl8068112n766558

2006年07月26日

行動は言葉において雄弁なり

 ScienceNOW
より。

 同じ言葉でも、言い方によって微妙に意味合いが違って伝わるということはよくあります。微妙に異なるだけならまだしも、ときには正反対のこととして伝わることもありえます。今回の報告は、言葉の表現のしかたによって、ある種の情報を伝えることができたとする実験結果についてです。

Actions Speak Louder in Words
(行動は言葉において雄弁なり)
http://sciencenow.sciencemag.org/cgi/content/full/2006/721/2

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 母国語を共有しない誰かと会話をしようとしたことがあるなら、相手の言っていることを、その言い方だけによっていくらか直観できたことがおそらくあるだろう。怒り、幸せ、そして当惑さえも、言語の障壁をすっかり乗り越える。今回、新たな研究が示すところによると、話すことに便乗する情報は感情だけではないことが示された。私たちは無意識的に、身の回りの物体についての重要な詳細を、言葉で表現することのみによって伝えるのである。

 言語とは主として象徴的なものである――大半の時間、私たちは言葉をつかって考えを伝える。しかし、あるものを「どのように」言うかということは、「何を」言っているかということと同じぐらい重要になり得る。「よお、いい車だな!」と熱っぽく言うことは、皮肉っぽく言ったときよりもずっと異なる含意がある。しかし、車がどこにあるか、とか、どこに向かっているのか、といった話のパターンによって他の情報を伝えることはできるのだろうか。

 これを解明するため、シカゴ大学の心理学者 Howard Nusbaum らは、24名の大学生に対し、スクリーンを横切るドットを表現してもらうよう依頼した。学生たちは、次の2つの文 "It is going up(上がっています)" と "It is going down(下がっています)" の1つを使うように言われた。上がっているドットを表現するとき、学生たちは、下がっているドットを表現するときよりも声のピッチが平均して6ヘルツ高くなったことをこのチームは発見した。同様のことは、別の24名の学生にコンピュータスクリーンの文を読んでもらったときにも生じた。このことは、言葉に含まれる方向の情報にしたがって人々は声の音を変えるということを示している。もう一つの実験では、研究者たちはドットの速度を変えた。ドットを表現する際、ドットが速く動くと学生たちはより早口で話すことが分かった。

 しかし、こうした言葉の合図を聞き手側はとらえているのだろうか。このチームはこれを確かめるべく、ドット速度実験に参加した学生たちの声を録音したものをボランティアに聞かせた。ボランティアたちは、63%の時間、ドットが速く動いているか遅く動いているかを正確に予測した。これは、ボランティアたちが、文が話される早さからドットの速度についての情報を集めたことを示している。NusBaum は、言葉の早さやピッチを変えることは手のジェスチャーに類似しているかもしれない(たとえば子どもの丈を表すのに、尻の高さに手をもっていく)と語る。彼はこうした声の変調を、「スポークンジェスチャー」と読んでいる。このチームは、この結果を Journal of Memory and Language 誌の8月号に報告した。

 スポークンジェスチャーは科学者たちに見落とされていた、と語るのは、タラハッシーのフロリダ州立大学の認知心理学者 Rolf Zwaan である。「たとえその言語をしゃべれなくとも、その言葉がどのように話されるかにもとづいて、何が起きているかについていくらかのことをとらえることができる」ために、スポークンジェスチャーは重要であると彼は言う。マディソンのウィスコンシン大学の心理学者 Art Glenberg は、この発見は「人間のコミュニケーションを、私たちの知る、他の動物が用いる他神経系に対し関連づけるものである」と付け加える。たとえば、サルの甲高い声は、上からワシが襲ってくることを意味するし、また別の甲高い声は、下からのヘビを意味する。

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 自分自身の経験を思い出してみると、確かにそういうところがあるかも、と感じますね。特に、ドットの速度に応じて話すスピードが変わるというのは、言われてみるとまさにその通りで、この現象に今まで誰も注目していなかったというのが驚きに思えるほどです。

 とはいえ本記事では、録音した音声を聞かせてドットの速さを当ててもらう実験についても書かれてありますが、これは僕には「ふーん、まあそりゃそうだろうな」という感じ。おそらく今回の実験は、「音声を聞いて動きが速いか遅いか判断してください」なんてことを被験者に伝えたと推測するのですが、もし自分が被験者なら、そりゃもちろん、話すスピードの速い遅いを意識して聞き分けて、それをヒントに判断しようとすることでしょう。

 また記事では、声の音程の上下についても触れられてあります。この記事を読む限りでの判断ですが、この実験にはまだまだ検証の余地があるんじゃないかなと感じます。たとえば "It is ascending(上昇しています)" とか "It is descending(下降しています)" とか、別の表現に変えてみても同様の現象は見られるんでしょうか? 実験で用いた "up" と "down" が、たまたま音程の上がり下がりしやすい発音なだけかもしれない。いろんな表現を織り交ぜて試してみると面白そうです。そしてさらに理想を言うと、母国語の異なる2人の被験者を並べて、2人の間で今回の実験と同様のコミュニケーションが成立するのか? という点はぜひ調べてみて欲しいポイントです。


【参考リンク】
元論文(Analog acoustic expression in speech communication)
 http://dx.doi.org/10.1016/j.jml.2006.03.002

2006年07月23日

モテるトカゲになる方法

トカゲ  BBC News より。
 
 人間にかぎらず、あらゆる動物は、異性の気を引くためにいろいろな飾り付けを試みます。たとえばクジャクなどの一部の鳥は、自分のカラフルな身体を異性にアピールします。カラフルということはそれだけ捕食者に見つかりやすいわけですから、それにも関わらず生き延びている自分はそれだけ体力的に優れているのだぞ、とカラフルなクジャクは異性にアピールすることができるわけです。(他にもいくつか説があるようです。)

 他にも有名なのはフェロモンです。今回の記事で登場するトカゲに、餌にビタミンDを与えてみたところ、異性をより惹きつける分泌物を身体から出すようになったことが分かったそうです。

 このトカゲは自分でビタミンDを合成することはできないので、食べ物から摂る必要があります。したがって、ビタミンDをたくさん摂ってることを、分泌物を通じて周りに知らせることで、「自分はたくさん食べ物を食べている健康なトカゲだよ」と異性にアピールしているのかもしれないのだそうです。

Vitamins could boost attraction
(ビタミンは魅力を高めるかもしれない)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/5194300.stm
 
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 ビタミンなどの必須栄養素が、異性を惹きつけるフェロモンとして機能しているかもしれない。少なくともトカゲにおいてはだが。

 これは、スペインのある研究チームによる研究の結論である。このチームは、オスのイワトカゲにビタミンDを補給した。(訳注:"rock lizard" に対する適切な訳語が不明だったのでとりあえずイワトカゲとしておきます。下記で出てくるイベリアイワトカゲも同様です。)

 彼らは、こうしたオスからの分泌物によってメスが興奮状態になることを、Royal Society journal Proceedings B 誌に報告している。(訳注:正しくは Proceedings of the Royal Society B 誌)

 ビタミンDが人間においても同じ役割を果たすかどうかは定かではないと研究者たちは述べている。

 トカゲにおいては、オスの分泌物にビタミンが存在することは健康の証であり、進化的な立場から見れば、メスがパートナーを選ぶ有用な目印かもしれない、と彼らは示唆している。

 「必須栄養素の大半も、この分泌物中にあります。」と語るのは、マドリードの国立自然科学博物館の Jose Martin である。

 「オスのトカゲは、体内に持っているものを分泌物中に出しており、これが健康の良し悪しを反映しているのでしょう」と彼は BBC ニュースのウェブサイトに述べた。

 「他のトカゲの種では、分泌物に大量のビタミンEが見つかりました。ビタミンDと同様の機能を持っているのだろうと思います。」

■ 化学的コミュニケーション役

 動物たちは、つがいとなる異性を惹きつけるために、フェロモンを化学的コミュニケーション役として用いる。多くのフェロモンはステロイド族の化学物質に属し、人間には無臭である。

 ビタミンDは、イベリアイワトカゲの免疫系に重要であり、またカルシウムの代謝を促す。

 イベリアイワトカゲは肌で十分なビタミンDを合成することがしばしばできないため、食物を通じて得る必要がある。

 ビタミンDの補給を受けたオスたちは、後肢から、これと非常に関連性が高い化合物であるプロビタミンDを多く分泌したことを、Martin 博士のチームは発見した。

 オスの後肢からの分泌物は、巣の周辺を動き回る際に地面に塗り付けられる。これは匂いのマーキングとして機能する。

 分泌のプロセスはトカゲにとって、エネルギー上のコストとなっていたのかもしれない。そのため、健康で餌を多く摂っている個体は、おそらくはより多くの分泌物を生産するのだろう。

 ビタミンDの補給をうけたオスからの分泌物によって、メスたちはより興奮した――舌をちらつかせる回数を増やすことでオスに合図を送ったのである。メスたちは、健康でビタミンを与えられたオスの領域においてより多くの時間を過ごしたことも彼らは発見した。

■ 自然の魅惑

 自然では、他の必須栄養素も性的な魅惑のために使われる。

 鳥や魚は、カロテノイドの化学物質に由来する色を用いて、視覚的により魅力的になろうとする。

 プロビタミンDやビタミンDが、人間を含めた他の生物種で役割を果たしているかどうかは明らかではない。

 しかしこの分野には、さらなる研究のための数多くの方法がある。

 「これらの(フェロモン)ステロイドの代謝や、テストステロンのようなホルモンの影響について、さらなる知識を得ないといけません」と Martin 博士は語る。

 「プロビタミンDは、コレステロールやテストステロンに非常に似たステロイドで、同じ代謝経路にあるため、これらは互いに変換することが可能です。」

 「ですので、これら2つは非常によく似ているかもしれないのです。」
 
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【参考リンク】
・元論文(Vitamin D supplementation increases the attractiveness of males' scent for female Iberian rock lizards)
 http://www.journals.royalsoc.ac.uk/openurl.asp?genre=article&id=doi:10.1098/rspb.2006.3619

2006年07月17日

離婚男性は心臓病のリスク大、女性は逆

離婚届
 New Scientist より。
 
 デンマークの30~60代の人々を対象に、生活のスタイルと心臓の病気との間の関連を調べる調査が行われたそうです。
 
 これによると、離婚した男性は、そうでない男性と比べ、突然心臓死で死亡するリスクが高いことが分かりました。しかし反対に、女性の場合だと、離婚した人のほうが突然心臓死のリスクはそうでない女性よりも小さかったのだそうです。
 
Living alone may double heart disease risk
(一人きりで生活することは心臓病のリスクを2倍にしているかもしれない)
http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn9543

 
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 一人きりの生活は心臓病のリスクが2倍になる――関連性の可能性を調査した過去最大のプロスペクティブ(前向き)研究はそう示唆している。しかし、女性に限っては、離婚が心臓をある程度良くしているかもしれないことも同研究は示している。

 (訳注:プロスペクティブ研究というのは、最初に健康な人の生活習慣などを調査し、その後、この集団を前向き、つまり未来に向かって追跡調査して、後から発生する疾病を確認する研究手法です。) 

 デンマーク・オルフスの Aarhus Sygehus 大学病院の Kirsten Nielsen らは、オルフスに住む30から69歳の人々についての、国の健康データベースの情報を用いた。彼女らはまた、2000~2002年の個々人の健康記録も調べた。

 このチームは、急性冠症候群として知られる種類の心臓病(心臓麻痺や突然心臓死)人々を患わせやすくするリスク要因を理解しようとしていた。

 調べた138000以上の人のうち、646人は突然心臓死と診断された。一人きりで生活している50歳以上の男性、60歳以上の女性は特にリスクがあった。これらのグループは、全調査対象集団のうち8%しか構成していなかったにもかかわらず、1ヶ月のポジティブな診断(?)における全死亡数のうち96%以上の割合を占めていた、と Nielsen は記している。

 全体でいうと、突然心臓死のリスクは、一人きりで生活していた人々のほうが、誰か他の人と生活していた人々よりも2倍高かった。しかしながら、離婚した約10000人の女性は、離婚していない女性と比べてこの症候群のリスクが40%減少していた。とはいえ、この研究では、離婚した女性のうちの何人が再婚したかは不明である、と研究者たちは述べている。

■ 前向きな特性

 不幸せな結婚から脱出する方法を探し求める女性は前向きな特性を示すと Nielsen は語る。「人生における悪状況を受け入れたくないのです。」この前向きなふるまいが健康を伸ばしているのではと彼女は推測する。この研究では、離婚した約8000人の男性は、突然心臓死のリスクが高かった。

 一人きりで生活することと心臓の健康が良くないこと(これには血管狭窄を含む。参考:Absence makes the heart grow weaker : 不在は心臓を弱くする)との間の関連性が他の研究では示されていたが、一方で Nielsen は、この研究は、この関連性を調査する最大のプロスペクティブ(前向き)研究であると述べている。この新たな証拠により、専門家たちが心臓発作のリスクのある患者をより特定できるようになることを望んでいる。

 この研究は、既発見の様々なリスク水準の原因を特定するよう計画されていたわけではなかったとは言え、一人きりで生活する人々は、ホームドクターにかかったり健康的な食事をとることが少なかったのかもしれない、とこの研究者たちは示唆している。

 「一人になって幸せな患者もいれば、不幸せな患者もいます。これらの集団は異なるものなのでしょうか。先へ進むため、領域を区別しなければならない類の問題です。」と、米国ミネソタ州ロチェスターのメイヨークリニックの心臓内科医 Allan Jaffe は語る。
 
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 男性と女性とでまったく反対の傾向が出るっていうのは不思議な話ですね。

 記事で触れられているように、女性は離婚を人生の再出発ととらえるという傾向にあるのかな。そう考えると男性の方は、離婚の事実をいつまでも引きずる傾向がどちらかというと強いのかもしれません。あるいは、もっと単純に、今まで料理なり日常生活の面倒を見てくれていた妻が離婚によっていなくなり、不摂生な生活をせざるを得なくなった男性が多いのかなあとも感じます。心臓病以外の病気の率も、やはり離婚した男性のほう高くなってるんでしょうか。

 本記事に関連する記事としては、綺麗山さんのブログ「しんりの手 :psych NOTe」の「自殺されると身内も後追い。特に男性」の記事が挙げられます。こちらも本記事と同じくデンマーク人を対象にした調査で、自殺についてです。これによると、妻が自殺したときに夫が後追い自殺する割合は、その逆(妻が残された場合)と比べて3倍高かったのだそう。

【参考リンク】

元論文(Danish singles have a twofold risk of acute coronary syndrome: data from a cohort of 138 290 persons)

 http://jech.bmjjournals.com/cgi/content/abstract/60/8/721

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