2007年01月14日

古代文明の崩壊はモンスーンのせい?


 New Scientist より。

 南アメリカのマヤ文明と中国の唐王朝は、同時期に栄え、いずれも9~10世紀のあたりで滅亡した文明です。

 これまで、研究者たちの間では、気候の変化がこれらの文明に影響を及ぼしていたのではないかという観点から、当時の気候を調べる研究が行われてきました。しかし、特に冬季のモンスーン(季節風)の強さについては、信頼できるデータがなく、悩みの種だったようです。

 しかし今回の調査により、湖の堆積物による方法をつかって、長らく不可能だった冬季のモンスーンに関する見積もりを得ることに成功しました。さらにここから、9~10世紀のあたりに地球規模での熱帯収束帯と呼ばれる領域の移動が生じ、これが気候の大きな変化をもたらし、さらにこれが文明の崩壊のきっかけとなったのではないか、という推測が得られることとなりました。
 
Collapse of civilisations linked to monsoon changes
(文明の崩壊はモンスーンの変化に関係している)

-------------------------------------------------

 中国最大の王朝のうちの一つの滅亡は、気候の厳しい変化によっていたのかもしれない。同様の気候の変化は、Mel Gibson の新作映画 Apocalypto で描かれたマヤ文明の終末を引き起こしていたのかもしれない。

 ドイツの GeoForschungsZentrum の Gerald Haug らは、過去16000年にわたるモンスーンの地質学的記録を調べた。彼らは、気候の急変化と、2つの大文明、中国の唐王朝と南アメリカのマヤの文明の崩壊とのあいだに驚くべき関係があることを発見した。「大きな驚きを覚えました」と Haug は語る。

 これらの文明は、衰退の時期あたりに平均よりも強い風を冬に受け、そしてモンスーン降雨の低下を夏に受けていたことをこの記録は示している。こうした降雨の低下が作物生産量を減らしたのかもしれない。

 過去50年以上のモンスーンの記録を得ることは難しい。この問題を解くには、数千年までさかのぼって地質学的記録にあるモンスーンの傾向の兆しを探すことが助けとなりえる。中国では、石筍(訳注:鍾乳洞の床にできた石灰質の石)によって、夏のモンスーン降雨について入手可能な最良の歴史的記録が得られると Haug は語る。雨が多くなると、洞窟の天井からのしずくの量が増すからである。しかし、冬の風については、これまでのところ信頼ある推定値がなかった。

■ 鉄とチタン

 Haug らは、中国南東部の Huguang Maar 湖の底に積もった堆積物を調べることによってこの問題を解決した。この堆積物は主に、冬のモンスーンによる風によって堆積された物質からなる。これは、集水領域が小さい、つまり他の源から堆積物をもたらす流れがほとんどないためである。この結果、この堆積物が冬のモンスーンによる風の強さの正確な歴史的記録を与えるのである。

 研究者らは、湖底から抽出した堆積物のコアの中にある鉄とチタンのレベルを調べた。鉄の酸化レベルによって、堆積物が積もったときの湖水にどのぐらいの酸素があったかが分かり、これによりどのぐらいの風が湖面をかき混ぜていたかが分かった。粒子内のチタンは非反応性であり、堆積物の層に蓄積した量が、風の強さの別の指標を与えた。

 泥のコアによって示された16000年の記録を比較したところ、冬の風が強かった年が、夏の強い降雨と非常に密接に対応しており、逆も同様であることを研究者たちは発見した。「私たちの堆積物のデータは、石筍の夏の記録の鏡像を与えているのです。」(Haug)(訳注:正しくは、冬の風が強い年=夏の雨が少ない年、という関係です。この部分だけを読むと正反対の意味に読めてしまいますが。)

 こうした夏と冬の傾向に対する唯一の筋の通った説明は、熱帯収束帯(ITCZ)として知られている、地球を取り囲む低圧帯の位置に生じた変化であると研究者たちは考えている。

 北半球の気温の温暖化はITCZの北上を意味し、このとき、夏のモンスーン降雨が強まり、冬のモンスーンによる風が弱くなることを彼らは発見した。「ITCZに大きな変化が生じると、同時に太平洋の周囲の文明にある現象が起こり得るようなのです」と研究者たちは Nature 誌の論文において結論付けている。

■ 触媒効果

 以前に Haug は、ラテンアメリカのマヤ文明で繰り返し見られた衰退の時期が、この大陸の乾季と対応していることを示していた。

 マヤ文明との唐王朝は同時期の文明であり、中国とラテンアメリカの気候データの間には驚くべき類似性がある。西暦750年付近に気候の全体的な乾燥化が起こり、そしてそれ以降から西暦910年の間にきわめて乾燥した時期が3回あった――うち最後はマヤ・唐両文明の崩壊に一致する――ということがこれらのデータには含まれる。

 「私は歴史家ではありません」と Haug は注意を促すが、「少なくとも一致はあるのです」と言う。彼は、自分の研究は「気候に文明への触媒的効果があることの証拠が増えつつあること」の一部であると語る。

 モンスーンの歴史的記録を分析することは、将来の気候の予測をする上できわめて有用になりえる。たとえば、夏の強いモンスーン降雨の前には冬の風が弱くなっていると示唆する研究者もいる。もしそうならば、この理論が、困難な年に先んじて農業の準備をする上できわめて有用であると分かるだろう。

-------------------------------------------------

 冬のモンスーンによる風の強さのデータを得るための流れがとても面白いです。夏のモンスーンの強さを得るのに洞窟の石筍が役に立ち、さらに冬のモンスーンを調べるのには湖底の鉄やチタンが役に立つ、と。意外なところに発見のとっかかりがあるという点に、まるで謎解きのような魅力を感じます。

【参考リンク】
・(元論文)Influence of the intertropical convergence zone on the East Asian monsoon

2006年12月24日

荷物が軽くなる魔法のリュック


 Scientific American より。

 かなり以前にこのブログで、着用者の歩くエネルギーから発電をするバックパックというものを紹介しました。(リュックを背負って徒歩発電)さて今回、その第2弾になるバックパックが登場したそうです。このバックパック、重たい物を背負って歩くときの重みを軽減するというシロモノです。

 その仕組みは下記で述べられていますが、訳が微妙に難しかったので、読んでいて一部「?」となる箇所があるかもしれません。記事中のリンク先にあるムービーで一目瞭然ですので、ぜひご覧になることをおすすめします。

A Parent's Dream: Bungee-Powered Backpacks That Spare the Back
(両親の夢、それは背中を救うゴムひも動力のバックパック)

-------------------------------------------------

 これであなたの足取りは弾むことだろう。肩や背中を打ち付けず、太いゴムひもで上下に跳ねるバックパックだ。このバッグの設計者は、自分の作品を、軍隊や救急隊員のほか児童たちの背骨を楽にするために医師が行う指示そのものであると見ている。
 
 人が歩くとき、腰は7センチメートル上下に動く。これにより通常はバックパックも浮いたり沈んだりする。これは関節や背中にとってはよくないことだ。というのも、バックパックは、振り下ろしの際に着用者にさらなる力を働かせるからだ。たとえば50ポンド(22.7キログラム)の荷物は、人が歩いているときには80ポンド(36.3キログラム)の力でのしかかり、走っているときには150ポンド(68.0キログラム)に及ぶ、とペンシルバニア大学の生理学者 Lawrence Rome は語る。
 
 Rome が作ったこの新しいバックパックは、運動の最中、荷物を地面と水平に保ち、重いバックパックを背負って歩いたり走ったりしているときの不快な力を相殺する。Rome の装置では、荷物は滑車と太いゴムひもからなる系にぶら下がっており、これにより金属棒の台上で上下にスライドすることが可能になる。人の腰が上がると、この台も同じく上がるが、荷物はゴムひもにより下に下げられ、運動に制限が加えられる。(このバックパックを着けて歩く Rome のビデオは元記事を参照。)
 
 このバックパックを上下逆さにして素早く振ると、スリンキー(訳注:バネでできたおもちゃ)が水平を保つのと同じ理由により、バックパックは振動を抑える――ゆっくりと振動するため、人の動きについていけなくなるのだと、コロラド大学の生体力学の研究者 Rodger Kram は語る。Kram はこれと同じメカニズムを、アジアの人々がやる、竹竿に重たい物を吊り下げ肩にかけるという仕事に見出した。
 
 Rome の装置では、「巧妙さはシンプルな点にある」と Kram は言う。「多くのことはしていません。」同様のバックパックを作ろうとしたほかの研究者たちもいたが、もっと複雑なもので、うまく動かなかったと彼は言う。
 
 このバックパックは着用者にかかる最大の力を約80パーセント減らし、歩いている間の上下の運動を半分以上弱くする。Rome と同僚らは Nature オンライン版に論文を報告する。「いくらか動きがあることには気づきますが、これは、固定したバックパックで得る違った種類の運動よりも実に快適なのです。」(ゴムひもモードと固定モードでのバックパックは元記事を参照。)
 
 このチームはまた、ゴムひもの力が有効の場合とそうでない場合とで消費されるエネルギーを比較した。ぶら下がり式のバックパックで歩くことは、荷物を12ポンド(5.4キログラム)軽くすることと同等であることを彼らは発見した。
 
 「エネルギー論は、大半の人々によって実のところ大きな問題ではありません――それは快適なのです」と Kram は言う。彼は、救急隊員やおそらくは子どもたちを含んだ、重い荷物を着けて走る人々に、このバックパックが魅力をそそるだろうと期待しているという。
 
 ぜひ買いたいだって? もう2,3年は待たないといけない。Rome は、彼が昨年作った同様のバックパック(運動から電気を生み出す)と沿う形でこのバックパックを商用化するべく、Lightning Packs 社を始めたが、このビジネスを発足させるにはさらなる資金調達が必要であると彼は述べている。

-------------------------------------------------

 文章を読んだだけではいまいち仕組みが実感できませんが、記事にある中国の運搬業のイメージ(竹竿の両端に荷物をくくりつけて運ぶ)を想像すると、何となく軽くなる感じがつかめますね。

【参考リンク】
・(元論文)Biomechanics: Rubber bands reduce the cost of carrying loads
Lightning Packs 社

2006年12月16日

味覚がうつの診断に使えるかもしれない


 news @ nature.com より。

 脳内の化学物質のレベルを変化させる薬物を与えたときに、人の味覚はどのように変化するか? を調べた実験です。

 これによると、セロトニンが上がった人は甘味と苦味に鋭くなり、一方ノルアドレナリンなら苦味と酸味に鋭くなるということが分かりました。

 著者たちは、この結果から、味覚をテストすることでうつ病の診断に使えるかもしれない、と考えています。あるいは、人々の味覚をコントロールするような調味料ができるかもしれない、とも述べています。

Mood makes food taste different
(ムードで食べ物の味は異なったものになる)

-------------------------------------------------

 不安ごとがありますか? 新しい研究によると、ムードによってディナーの味が実際に変わり、苦味や塩味が減少するというのだ。

 脳内の化学物質のバランスと味覚との間にあるこうした関連性は、やがて医師がうつ病を治療する助けとなるかもしれない。こうした状態の個々の患者にどの治療がもっとも有効かを決定するのに、現場での試験は現在のところ行われていない。研究者たちは、味の検知にもとづくテストによって、医師の初回の処方箋がより適切となるようになるかもしれないと望んでいる。

 うつ状態にある人々が、セロトニンやノルアドレナリンといった脳内の化学物質の一方ないしは両方が通常より低レベルにあるということは長く知られていた。多くの人は、おそらくは脳内の化学物質が変化することによって、味の感覚も鈍くなる。

 2つの関連性を解き明かすべく、英国ブリストル大学の Lucy Donaldson と彼女の同僚らは、20名のボランティアの健常者たちに2つの抗うつ剤を渡し、さまざまな味に対する敏感さをチェックした。このチームが Journal of Neuroscience 誌に報告するところによると、セロトニンのレベルを上げる薬によって、人々は甘味と苦味に対してより敏感になった。ノルアドレナリンを増加させるもう一方の薬は、苦味と酸味の認識を高めた。

 健常者では、生まれつき不安のレベルが高いボランティアたちは、苦味と塩味に対する敏感さに劣っていた。

■ 苦味の薬

 「どの味がうつにおいて影響を受けるかを正確に調べることは、以前は行われていませんでした」と Donaldson は語る。今回この結果により「変化したと思われる化学物質と味覚との識別ができます」と彼女は言う。

 甘味と酸味に対する敏感さをテストすることによって、どの化学物質が低下しているのかに医師が注意する助けとなり、問題を正すのにどの薬がよいかを選ぶ上でのガイドとなるかもしれない。

 現在のところ、医師たちが個人の不均衡を推測する最良の方法は、肉体的・感情的な兆候に頼ることであり、これにより薬を処方し、そして改善したことを確かめるのに約1ヶ月待つ。この論文の共著者である病理学者 Jan Melichar が語るには、初回で適切な薬を選択する際に成功する割合は、優れた医師で60~80%であるという。うつに対して薬を処方するのに適したテスト方法はあるのだろうか。「いいえ。私たちがしているのは、最良と思われる推測なのです」と Melichar は言う。「私はこの発見にかきたてられています。3,5,7年のうちに、簡単な味覚のテスト方法ができることでしょう。」

■ 味の感覚

 次にこのチームは、うつの人々や、トリプトファンと呼ばれる別の脳内物質を与えられた健常なボランティアに同様のテストを行うことを予定している。この化学物質は、うつ患者に実際に起こるようなセロトニンレベルの低下を健常な被験者にもたらす。

 この研究はまた、調味料会社からの関心も起こしている――食品や飲料工業のための化学物質を開発している会社だ――たとえば、砂糖の半分の量で食べ物の味を甘くすることに関心を持っている。「理論的には、脳内物質に影響を及ぼして物の味をよくする薬をつかって、食事の味を高められる可能性があるかもしれません――『有名デザイナーによる味の錠剤』ができるかもしれません」と Donaldson は語る。「しかし私たちは Gordon Ramsay(訳注:著名なフレンチシェフの名)からの問い合わせを近いうちに期待しているわけではありません。」

-------------------------------------------------

 ちなみにどんな実験か興味があったのでざっと元論文を眺めてみると、さまざまな濃度のショ糖(甘味)、塩酸キニーネ(苦味)、塩化ナトリウム(塩味)、塩酸(酸味)の化学物質を綿棒にふくみ、それを被験者の舌の上に置いて、味を感じるかどうか質問するということをやったそうです。なんか楽しそうな実験。でももちろんそれだと、薬の投与前後で被験者はテスト慣れしてしまって前後の正しい比較ができなくなってしまうので、偽薬を投与した場合も併せてテストするようにしたようです。

 味覚をテストすることでうつ病の診断ができるかも、というアイデアは面白いですね。たとえば甘味と苦味に鈍感だったらセロトニンが足りない、ということでそれを補うような治療法が有効である、ということでしょうか。

 もちろん味の感じ方には大きな個人差があるので、うつの程度と味覚の敏感さとの間にどの程度の相関があるのか、定量的に調べるというのが今後やるべきことになるのでしょうかね。

【参考リンク】
・(元論文)Human Taste Thresholds Are Modulated by Serotonin and Noradrenaline

2006年11月26日

お金のことを考えると非社交的に


 Science Now より。
 
 数百名の学生を対象に行った実験で、被験者の半分に、お金の絵を見せたり、お金に関する文章を読ませたりしたそうです。すると、これによりお金のことを連想した学生たちは、そうでない人々と比べて、人の助けを借りたがらなくなったり、人の手助けをしたがらなくなったりなど、社交的でない振る舞いを示すようになったそうです。
 
 今回の記事は、上記を始めとした「お金のことを考えると人の社交的はどうなるのか?」を調べるための様々な実験結果についての報告です。
 
Money and Me, Me, Me
(お金と、自分、自分、自分)
 
-------------------------------------------------
 
 よくお金は人を変えると言われる。今回、実験心理学者のチームによって、お金のことを考えるだけで人は変わるということが分かった。実験の被験者たちは、お金のことを思い浮かべることにより、良くも悪くも、自身のことに注目するようになった。
 
 心理学者 Kathleen Vohs は、初めての教職へポスドクの地位から移ったときに、お金の心理学について考え始めた。彼女は月収の大幅な増加によって、友人の助けに頼らずに引越し屋を雇えるようになった。しかし、Vohs が語るには、みんなで大仕事をした後でピザとビールを共にするという仲間意識を失った。この経験によって彼女は、お金は人々の独立心を強くする一方で、孤立させる社会的障壁としての役割も果たし得ると仮定した。
 
 この考えをよりコントロールされた設定で調査すべく、今はミネアポリスのミネソタ大学にいる Vohs と彼女の同僚らは、様々な実験に参加してもらう数百名の大学生を募集した。各実験で、研究者たちは、被験者の半分にひそかにお金のことを考えさせた――たとえば、お金について触れたエッセイを読ませたり、様々な種類の貨幣をえがいたポスターの前に座らせたりすることによってである。その後で、被験者たちをある社会的状況に置いた。ある実験では、研究者たちは被験者たちに難しいパズルを渡し、いつでも助けを呼ぶようにと言った。お金のことを思い起こした人々は、そうでなかった人々より、助けを求めるのに待った時間が約70%長かった。お金のことを考えさせられた人々は、平均して、ワードパズルの助けを頼んできた他の人を(そうでなかった人々と比べて)半分の時間しか助けず、また誰かが鉛筆を落としたときに拾ってあげた本数も少なかった。
 
 非社交的行為はこれで終わりではなかった。お金を思い浮かべた被験者たちは、仲間と一緒に仕事をやった方が仕事がかなり少なくなるとしても、一人で仕事をすることを望んだ。また彼らはアンケートで一人のレジャー活動を選択した――たとえば、4人でのディナーよりも、プライベートな料理のレッスンを好んだ。そして他のボランティアと交流の雑談をするため椅子を2脚置くよう頼まれると、お金がテーマのコンピュータのスクリーンセーバーを見ていた被験者たちは、魚のスクリーンセーバーを見ていた被験者たちよりも椅子を離して置いたことを Vohs らは Science 誌の明日の号にて報告する。総合すれば、お金について考えることは、他人に頼りたくも頼られたくないという考え方に人々を置くということをこの発見は示唆している、と Vohs は語る。
 
 「この一連の発見は興味深いです」と語るのは、コーネル大学の心理学者 Tom Gilovich である。「無意識的であってもあらかじめ仕込んでおけばこの効果が得られるというのは、一種の驚くべきことです。」子どもにお小遣いを与えるかどうかというような日常的な決定に対しこの研究は意味があるかもしれない、と英国エクセター大学の経済心理学者 Stephen Lea は付け加える。お小遣いは自足能力を高め得るが、同時に協調性を妨げるのかもしれない。「それは易しい決定ではありませんが、人間関係からお金を産めば、関係はお金に変わってしまうと認識する必要があります。」(最後の文の訳むずかしい;)

-------------------------------------------------
 
 いろんな種類の実験を行っていて、どの結果もおもしろい傾向が出ているなあと感じます。お金の絵を見せるだけじゃなくて、お金を連想するテキストを読ませて比較しているところもよくできてるなあと感じます。じゃあ、紙状のぺらぺらしたものを見せたらどうなる? あるいは、お金を連想させないただの数字を見せたらどうなる? といった点も併せて気になってきました。
 
 こういう実験結果って、僕たちの日常でひょっとしたら応用できないかな、と想像してみるのが楽しいです。今回の場合だと、ミーティングの前には予算関係の仕事をしないようにするとか。どうだろう・・;
 
【参考リンク】
・(元論文)The Psychological Consequences of Money
 

2006年11月23日

森林火災で北方の気温は下がる


 New Scientist より、地球温暖化と森林火災との関係についての記事です。
 
 大規模な森林火災が発生したとき、ふつう僕たちの直感からすると、多量の二酸化炭素やメタンなどの温室ガスが発生するわけですから、その後のその地域の温度は上がると想像するわけです。
 
 ですが、今回の研究で用いたコンピュータモデルによると、アラスカなどの北方で起きた森林火災は、局所的に見れば、この地域の温度を下げることになるそうです。その結果、地球全体としてみれば、温室ガスによる温暖化効果と相殺して、ほぼプラスマイナスゼロの状態になるのだそうです。
 
 なぜ、森林火災がこの地域の寒冷化をもたらすのか? その説明はこの記事で述べられています。
 
Forest fires cool northern climates
(森林火災は北方の気候を寒冷にする)
 
-------------------------------------------------
 
 北方の国々での森林火災は、これまで考えられていたような温暖化でなく、地域的な寒冷化をもたらしているのかもしれない。新しい発見によると、世界規模では、森林火災はいずれの方向にも気候の変化に影響を及ぼさないだろう、と研究者らは述べている。
 
 過去10年で、著しく大きな火災が、カナダ、アラスカ、ロシア、ノルウェー、スウェーデンや他の北方の国々にわたって燃えさかった。研究者たちが語ったところによると、より温暖な気候、より長い夏、そして概して乾燥した状況はその頻度を増しているかもしれないという。
 
 木に蓄えられた多量の二酸化炭素が解放されると、森林火災は温室効果の一因となり、激しいフィードバックのループを開始させることになると考えられていた。そうではないのだ、と米国とオーストラリアの17名の研究者たちのチームは Science 誌に語る。
 
このチームは、1999年6月に中央アラスカのドネリー平原で約6.7ヘクタール(16.5エーカー)を焼いた森林火災の影響を全般的に調べた。太陽からの放射をこの地域からどのくらい反射するかを調べた研究者もいれば、温室ガスの放出と植生の変化を調べた者もいる。
 
 彼らは全てのデータをコンピュータモデルに入力し、単一の火災が短中期においてどのような影響を気候に及ぼすかを80年先まで見積もった。
 
 火災後約1年は温度は暖かくなったが、10~15年で逆転することが分かった。80年にわたって平均すると、全体的影響として温度は涼しくなった。
 
■ より多くの雪
 
 この冷却効果の最大の原因の一つは、暗色のトウヒの木々が太陽の暖かさを吸収するのに、雪はそれを反射し戻すということだ。森林火災が木々を失わせた後は、地面には雪しか残らなくなったのだ。
 
 しかし、火災直後に雪上に残った黒色のすすは、地面の色を暗くする。はじめに温暖になったのはこのためだ。すすは春に雪解けとともに消え去り、次の冬にはこの地域を雪のみが覆って、冷却の傾向が始まったのである。
 
 「この冷却効果は温室ガスの影響を打ち消すため、火災の総影響は全体的に平均すると中間に近くなり、北方の地域ではわずかに温度が低下することになるのです」と説明するのは、この研究を率いるアービンのカリフォルニア大学の James Randerson である。
 
 最終的に、新たな草原やスギ、木々は成長してもとの大きさに戻る。しかしこの研究に参加するフロリダ大学の研究者たちが発見したところによると、焼けた針葉樹に最初に置き換わるのは、アスペンやカバノキといった落葉樹なのである。
 
 これらの大きな薄緑色の葉は、以前にあったマツの葉よりも多くの太陽のエネルギーを反射し、寒冷化の傾向のさらなる一因となる。そしてこの新しい木々は常緑樹でなく落葉樹であり、日を反射する雪にさらされる冬に葉をなくすこととなるのである。
 
■ 火災の間隔
 
 ドネリー平原にて暗色のトウヒが成長してもとの大きさに戻るのに10年かかるだろう、と研究者たちは語る(右下の図を参照)。北方の国々では、森林火災は、同じ地域でだいたい80~150年ごとに再発する。
 
 気候の研究者たちは、温室ガスの放出によって地球の気温が上昇するにつれ、この間隔は短くなると予測する。このことはつまり、復活した針葉樹はまたすぐに焼け、ふたたび北方の気温の長期的な低下を引き起こすこととなる。
 
 しかしこの研究は、北半球地方にて地球温暖化に取り組むために木々を切り倒すことは良い選択だと示すわけではない、と Randerson は警告する。「北方の森林の生態系を保持する理由は本当にたくさんあります。水源、野生生物、材木、保養の観点から、それらには非常に大きな価値があるのです。」
 

-------------------------------------------------
  
【参考リンク】
・(元論文)The Impact of Boreal Forest Fire on Climate Warming
 

2006年11月18日

商標ふうの暗号パズル

ふうっとした拍子に暗号パズルを思いついたので出題です。
下記に挙げた英語名は、一見するとどこかの商標か何かのように見えますが、実はすべてある法則に沿っています。

・FOOT-PLAN
・EAGLE-BAY
・COW-LUCK
・GOLD-SHORE
・SILVER-ENGINEER
・NEW-LION
・HALF-BRIDGE
・BOOK-□□□□

その法則に従うならば、最後の空欄にあてはまる英単語とは一体何でしょうか?

分かったよ! と言う方はコメント欄へぜひ回答をどうぞ。
「分かったよ」だけでももちろん大歓迎です。

2006年11月13日

脳とジェスチャと政治家と


 ScienCentral より、時事ネタがらみの記事。
 
 話をする人が、スピーチの内容と一致しないジェスチャを行ったときに、聴衆の脳波を調べてみると、ある特殊なパターンを示すことが分かったという報告です。このパターンは、たとえば前の文脈と一致しないような話を聞かされたときに発せされるパターンと同一だったそうです。
 
Body Politics
(身体の政治)
 
-------------------------------------------------

 中間選挙を前にして、政治家たちは投票者たちに激しく宣言やスピーチを向けている。ある神経科学者が述べるところによると、彼らの手のジェスチャによって、メッセージがどのように感知されるかに大きな違いが生じるかもしれないと言う。
 
■ 手は語る
 
 2000年の大統領選挙戦では、多くの観測筋が Al Gore を堅苦しい人物と認識した。イメージコンサルタントの Lauren Solomon は、公でスピーチをする状況での対処法について、13年間、政治家や会社幹部らと共に仕事をしている。彼女は、問題は言語だけでなく、ボディランゲージにあると考えている。
 
 「もし言葉とジェスチャの間につながりがあると考えないなら、言語化されたメッセージの半分しか聴衆に理解させられないでしょう」と彼女は語る。
 
 コルゲート大学の神経科学者である Spencer Kelly は、手のジェスチャが実際に私たちの脳のスピーチの処理方法に影響を及ぼしていることを発見した。「ジェスチャは実際には言語から切り離されているのだと考える人々がいます。私は、ジェスチャは言語の一部であると考えます。つまり、もし言語を理解しようとすれば、スピーチに着目するだけでなく、スピーチとジェスチャとに着目をしなければならないのです。」
 
 Kelly は脳波計(EEG)を用いて、話の内容と矛盾するジェスチャを見せられているときのボランティアたちの電気的な脳活動を測定した。「物の背が低いという身振りのような情報を伝えつつ、「高いです」といった言葉を示したのです」と Kelly は語る。矛盾したジェスチャを目にしているあいだ、ボランティアたちは、混乱させるような言語を聞いている人々が発するのと同じ脳波パターンを発した――これは N400 効果と呼ばれる。
 
 N400 効果は、1980年にラ・ホーヤのカリフォルニア大学の研究者 Marta Kutas and Steven Hillyard によって発見されており、最後の言葉が話されてからおよそ400ミリ秒後にピークを示すという特殊な陰性波である。「もし『その男性は靴下にクリームと砂糖を入れるのが好きだ』と言えば、脳はそれが普通でないと気づきます。」「与えられた文が意味をなさないのです。そのため N400 は、言葉はこうあるべきという期待が裏切られたことを映し出すのです。」
 
 Scientific American Mind 誌で特集されているように、このことは、脳がジェスチャをコミュニケーションの重要な部分と見なしていることを示している。これらがなければ、私たちの脳は、話のほんの部分しか得られない。Kelly の論文によると、言語処理の始めまたは終わりの段階で脳に統合されているのかもしれないという。
 
 「良くも悪くもジェスチャに富んだ人」を自称する Kelly は、ジェスチャをすることは、情報を伝えようとする人々と、メッセージを理解しようとする聴衆の、どちらにとっても良いことだと分析する。「手は、タイヤを替えたり手紙を書いたりするのに良いだけではなく、考えることにも良いのです。そして話をしているときには打ってつけのものなのです。」
 
 しかし彼はまた、政治家の矛盾した手のジェスチャについて警告する。「中東で、ある政治家が政策の問題を述べるときに、『われわれは中東に平和をもたらさなければならない』と言ったのを見たことがあります。そして同時に、こぶしを打つジェスチャを何回もしたのです」と彼は言う。この政治家は、あることを言っているのに、別のことを考えていたのかもしれないと彼は言う。
 
 そのため、彼の政治家へのアドバイスは「台本どおりのジェスチャを保つのが無難である」ということだ。しかし彼は、ディベートの最中のように台本を離れるときには、政治家はジェスチャが言葉に沿ったものとなるようにすべきと言う。
 
 教師もまた、子供たちに新しい言葉を紹介するときにこのアドバイスを使えると彼は言う。新しい言葉をいう外国語教師や、新しい考えを紹介するその他の教師であってもだ。「もし生徒たちの脳が配線され、ジェスチャとスピーチが結び付けられたなら、スピーチにジェスチャを使って、こうした子どもたちにうまく学習を進めさせることができます。」
 
 Kelly の今後の研究は、電話で会話するときなど、ジェスチャができないときに私たちはどのようにコミュニケーションのやり方を変えるのかを調べることだ。
 
 Kelly の研究は、Scientific American Mind 誌の2006年10・11月号で特集され、また2004年4月に Brain and Language 誌で発表された。この研究はコルゲート大学の資金提供による。

-------------------------------------------------
 
 「背が高い」と「低い」のように、明らかに正反対の意味のジェスチャとスピーチを見ると脳が混乱した状態になるっていうのはよく分かるなあ。個人的には、こぶしを振り上げたときはどうか、下に叩き付けたときはどうか、などのより微妙な状況での脳の違いを見てみたいなあと思いました。
 
 ところで、大学や企業で研究をやってる人の多くって、プレゼンテーションをやるときのジェスチャにほとんど注意を払わないですよね。むしろ、「見た目なんかより中身でしょ」みたいな空気があるかもしれない。もちろん、大したことのない情報を大げさに伝えようとするのは好ましくないないことですが、議論の流れを分かりやすくするためにジェスチャを取り入れてみるのは面白いかもしれません。たとえば、予想と一致する実験結果が出たことを言いたいときは、それと反対の意味のジェスチャをしないように気をつけるとか。分かりやすい説明文や、分かりやすい図面と同様、分かりやすいジェスチャというのも心がけると効果的なポイントかもしれません。
 
【参考リンク】
・(元論文)Neural correlates of bimodal speech and gesture comprehension
 

2006年11月05日

空から教科書が降ってくる

20061105.jpg

 Techonology Review 誌を眺めているときに遭遇した素敵な記事。
 
 本誌では、「2006 Young Innovators Under 35」という特集で、精力的な活動をしている35歳以下の研究者たちを取り上げています。今回ここで紹介するのは、「EduVision」というシステムに取り組んでいる Matthew Herren という人物です。
 
 このプロジェクトの舞台は、アフリカのケニアにあるビタ(Mbita)という場所。ここを始めとしたアフリカの多くの地域では、財政的な事情により、子供たちの教科書を準備することが十分にできません。そこで、本がないなら電子ブックを、というわけで彼は今回のこのシステムを提案しました。
 
Beaming textbooks across Africa
(アフリカ中に教科書データを送る)
 
-------------------------------------------------

 
 アフリカで育った Matthew Herren は、財政の苦しい地方の学校の多くの子供たちが、数十年前の古い教科書で何とかしないといけないのを見ていた。この問題への低コストの解決法を見つけ出すことに奮起され、彼は衛星を用いて最新の教材を伝送するというアイデアを思いついた。彼は、伝統的な援助団体のプログラムによるのではなく、一連の自立したビジネスを通じて、この技術を確立することを目指している。
 
 子供たちに本や他の教材を提供することの「コストを下げる技術的な方法が必要とわかりました」と Herren は語る。(「教育に促進される開発」を参照。)スイス人の Herren は、単一方向の衛星無線に目を向けた。アフリカ内部の多くはインターネットへのアクセスがすぐには達しそうにないからだ。試験となる昨年は、スイスの BioVision と呼ばれる基金によって、ヴィクトリア湖岸にあるケニアのビタ岬の小学校に衛星受信機が導入された。この受信機は、ハードディスクに教科書をダウンロードする。そしてこの情報は、書籍閲覧のためのリナックスベースのシンプルなソフトウェアを備えた小型コンピュータへと伝送される。60名の生徒が現在の教材を受け取った。
 
 いまは Herren は、より大きな規模で彼の計画を実施しようとしている。チューリッヒの民間投資会社 Bridgeworks と協働して、彼は元金のため必要となる65万ドルの大半を既に工面している。Herren はこの資本で、衛星受信機と小型PCを売ってサービスするというビジネスのネットワークをアフリカ中に始めたいと望んでいる。国の文部省は、教育ダウンロードシステムを提供・維持するため――そして教材を提供するための子ども一人当たりのコストを20パーセント以上削減するため、これらの会社の一つを雇うことだろう。
 
 もし衛星による教材配信が望みどおりうまくいったならば、その基本システムは、遠隔の村に健康や農業の情報を提供することに使えるだろう。道路さえもない多くの村々で、文字通りすべての道が学校へ通じるようになる、と Herren は述べる。

 
-------------------------------------------------
 
 僕の直感からすると、実際の本を送り届けるよりも、衛星通信と電子ブックをつかってデジタルデータを伝送する方が安上がりになるっていうのがとても意外です。日本の狭さにすっかり慣れているからそう感じるのかな。
 
 あと記事の最後で、教材以外の情報を伝送することについても触れられているけど、さらっと書いてあるわりに、これって実はものすごく重要なことじゃないかと思ったよ。たとえばエイズ予防とか、天候予測とか、教育以外の用途でもこの地域の人々の生活を劇的に向上できる可能性があると思う。この記事を読む限りでは、特に今は学校教育の用途のみを主に考えている印象を受けたけど、もっと早い段階から、幅広い分野での応用を考えた方がいいかもしれないと感じました。

【参考リンク】
・EduVision プロジェクト
 http://www.eduvision.or.ke/

2006年10月29日

キツネの駆除法:育児放棄させよう

20061029.jpg
 EP: end-point 経由、ABC Science online より。
 
 オーストラリアのフィリップ島は、ペンギンパレードで知られる有名な観光スポットです。
 魚を取りに出かけたフェアリーペンギンが、日没後に海から浜辺の巣へとぞろぞろと群れをなして帰ってくるのが見られるそうです。
 ですがこの島の悩みは、かつてイギリス人がレジャーのために持ち込んだキツネによる被害。普段からのんびりしているペンギンにとってキツネは天敵であるらしく、わずかの数のキツネでも非常に大きな被害をもたらすそうです。
 
 今回の記事は、キツネの駆除方法の一つとして提案されている、薬物をつかったやり方について。かんたんにいうと、動物の母性とかかわりがある、とあるホルモンを薬物で抑えることによって、育児を放棄してしまう母キツネをいっぱいにしよう、という試みです。
 
Drug turns foxy ladies into bad mothers
(薬はキツネのメスを悪い母にする)
 
-------------------------------------------------
 
 メスのキツネに自分の子を無視させる薬が、オーストラリアの野生キツネの問題を解決する助けとなるかもしれない、と研究者たちは述べている。
 
 彼らは、繁殖力を減少させ母性本能を妨げるカベルゴリンという薬に着目し、ヴィクトリア州のフィリップ島のキツネを制御することができるかどうかを調べた。
 
 この島は有名なペンギンのコロニー(集団)の生息地であり、また150匹におよぶ望まざるキツネがいる。
 
 1匹のキツネは一晩で30匹ものペンギンを殺す、と語るのは、フィリップ島自然公園の生物学者 Roger Kirkwood である。
 
 「キツネたちを島から根絶する必要があります。わずか1匹でも、入り込んで大きな被害を及ぼし得るからです」と彼は言う。
 
 このキツネはまた、この島を訪れる渡り鳥のマトンバードも多く捕食すると Kirkwood は語る。
 
 彼は、カベルゴリンを調べるべく、タスマニア大学の薬理学者 Stuart McLean 教授とともに研究を行っている。
 
 人間では、この薬はパーキンソン病の治療に用いられる。
 
 しかしこの研究者らは、この薬をキツネに使うことに関心を持っている。キツネの脳のドーパミン受容体にはたらいて、プロラクチンというホルモンの分泌を妨害するためだ。
 
 「(キツネは)妊娠することや、妊娠状態を保つこと、母乳を出すことのほか、出産後は母性本能のために、プロラクチンに頼るのです」と McLean は語る。
 
 カベルゴリンは母性本能を抑制するため、メスのキツネは、食べ物を取ってきたり、毛づくろいをしたり、生き残る術を教えたりといった子の世話をやらないようになる。これにより子の生存する機会が減少するのだ。
 
 この薬はまだ島のキツネには試されていないが、予備研究が来月のオーストラリア保健医療研究大会で発表される。
 
 キツネの餌のカベルゴリンがどの位のあいだ残留するかに着目した研究も、Wildlife Research 誌に提出されている。
 
■ ペンギンへの被害
 
 キツネに繁殖を許して制御不能になったならば、キツネはフィリップ島の60000匹強の個体数のペンギンを滅ぼし得るだろうと Kirkwood は語る。
 
 キツネは過去80年のうちに、フィリップ島のペンギンのコロニーの数を12からわずか既に1までに減らしている。
 
 1980年にこの島に駆除プログラムが導入されて以来、1000匹以上のキツネが除去されている。このプログラムには射殺、毒殺、巣穴の燻蒸、犬による狩りが含まれる。
 
 キツネはわずか約5年しか生きないものの、個体数に弾力性がありすぐに回復するのだと Kirkwood は語る。
 
 「このプログラムをストップしたならば、この島のキツネの扶養能力は400そこらになるだろうと計算しています。これを制御しなければ、一定時間でキツネはペンギンを除去するでしょう。」

 
-------------------------------------------------
 
 やっぱりいちばん気になるのは、カベルゴリンがキツネだけじゃなくペンギンの子育てにも悪影響を及ぼしたりしないのかな、というところですね。ばーっと見た感じ、プロラクチンは広くさまざまな動物に見られるホルモンだということなのでちょっと気になります。それでも、うまくキツネだけをうまく取り除ける方法が分かれば面白いなあ。

2006年10月22日

言語はいかにして色の名前を得るのか

20061029.jpg
 news @ nature.com より。
 
 色には名前があります。だいたい波長が 625-740 ナノメートルの光が目に入ると、僕たちはそれを「赤」と感じます。また、500-565 ナノメートルだと「緑」と感じるし、この2つが混ざった光には「黄」を感じます。
 
 こうした色の名前は、言語によって、呼び名の割り当て方がちがってきます。それは単に言葉がちがうというだけではなく、ある言語では日本語や英語で言うところの「青」に相当する言葉が存在しない、といったこともあります。
 
 さて、言語によって色の呼び方に違いがあるというのは述べたとおりですが、ではこれらの違いを生み出すのはいったい何なのか? という問いは、いまなお議論を起こしている問題だそうです。本記事では、ここ10年間でどのような議論がなされてきたかに関しても述べられており、たいへん面白いです。
 
A red by any other name
(他の名前で表される赤)
http://dx.doi.org/10.1038/news061016-3
 
-------------------------------------------------

 
 私たちが色を分類するやり方は、生理学的に組み込まれているのだろうか、それとも文化的に形づくられるのだろうか。前者を支持する新たな分析結果が出たことを受けて、Heidi Ledford がこの十年来の議論を吟味する。
 
■ 何についての騒ぎなのか?
 
 それは本質的には、さまざまな言語がいかにして色をカテゴリー分けするのかに関する、「自然(Nature)対教育(Nurture)」の議論である。たとえば、英語では、赤に対する言葉があり紫に対する言葉があるが、これは全ての言語でもあてはまるのだろうか。
 
 私たちの色の知覚のしかた、カテゴリー化のしかたの根幹にある生物学的基盤が、すべてを支配すると言う者がいる。こうした人々は「普遍主義者」である。一方では、多くの人類学者が、私たちの色の定義のしかたは文化的な需要によって形づくられると考えている。こうした人々は「相対主義者」である。
 
 1940年代から1960年代を通じて、色のスペクトルの切り分け方はすべての言語で異なっているという見方が教科書的だった、とバークレーのカリフォルニア大学の言語学の名誉教授 Paul Kay は語る。Kay らが1969年に、サンフランシスコのベイエリアの居住者の20言語を調査した結果を発表した際に、この支配的な見方は変わった。
 
 「そのとき以来、さまざまな言語において、人々が色空間を切り上げるやり方はランダムではないという論文が続々と出されてきました」と Kay は語る。しかしほとんど全ての議論において同じく、多くの研究者たちが普遍主義と相対主義の中間に位置しており、議論は高まりを増している。
 
■ これを解決する方法はあるのか?
 
 1976年に Kay らは、世界色彩調査を開始した。フィールドワーカーたちは世界中を4年間歩き回った。彼らは320の色付きチップを含んだキットを運び、参加者たちにそれぞれを色として分類するよう依頼をした。回答は110言語の2616名の提供者から集められた。
 
 この調査の目的は、基礎となる色の単語とその使われ方を特定することだった。「基礎的な」単語として数えられるためには、その単語は簡潔であり、頻繁に使用され、一単語である必要があった。フィールドワーカーたちへの指示には明示的にこう述べられていた。「関心があるのは『赤』といった返答であり、『数時間前に死んだオオハシの血の色』といった返答ではない。」
 
 これらのデータは1980年からのものであるが、公にアクセスできるデータベースに変換されたのは2002年のことだった。
 
■ 新しい点とは?
 
 コロンバスのオハイオ州立大学の Delwin Lindsey と Angela Brown は、以前に用いられたよりも洗練された、個々の返答を別個に見るという統計手法を使って、このデータを再分析した。彼らの分析によって、8つのカテゴリーが得られた。あらゆる言語は、基礎的な色をこの中から選択する。赤、黄またはオレンジ、緑、青、紫、茶、ピンク、グルーである。
 
■ グルーって?
 
 世界のほとんどの言語は、緑と青の間の区別をしないと Kay は語る。その代わりに、2つの色は、言語学者らが「グルー(グリーン+ブルー)」と名づけるところのカテゴリーにまとめられる。
 
 緑と青の間の区別ができないいうのは赤道近くで非常に一般的である。日光と紫外線にさらされることが、そこに住む人々のレンズを黄ばませ、色を感じる能力を変えたのだと Lindsey は主張する。
 
 Kay はこの説明に対して、この黄色化は白内障患者においてみられると反論する。一般的に白内障患者は、青/緑に盲目状態になることはない。Lindsey も Kay も、なぜある集団ではこの区別がされないのかを見出すべく、活動的に研究を行っている。

 
-------------------------------------------------
 
 赤道近くの人々が、言語上の青と緑の区別をしないというのはとても意外です。赤道近くだと両者の区別がとくに必要ないという理由が何かあるんでしょうか? 記事で触れられているように、日差しによるレンズの変質説はまだ証拠が不十分のようですが、他にも原因を想像してみると楽しいです。

<<前のページへ 7891011|12|13141516 次のページへ>>

アーカイブ