Science NOW より。
ギャンブルを趣味にしている人には、惜しいニアミスのところで大当たりを逃し、つい悔しくなって再びお金をつぎ込んでしまった、なんて体験があるかもしれません。ギャンブルに興じる人の脳を調べたあらたな研究によると、人々の脳では、ニアミスであっても、大当たりのときと同じ部分が活性化していることが分かりました。
■ 馬蹄、手榴弾、――それとスロットマシン?
Horseshoes, Hand Grenades--and Slot Machines?
(記事タイトルの意味がわかりません。。。)
ニアミスとは例えばどんな状態でしょうか。スロットマシンでいえば、最後の1つの絵柄がお目当ての位置から1列だけ外れてしまうような状態です。実際、スロットマシンのメーカーの中には、じらしの効果を狙って、ニアミスが起きるよう意図的にプログラムしているものもあります。
しかしながら、こうしたニアミスがギャンブラーたちの常習性にどのような影響をもたらすかについて、神経認知的な方向からの知見は、これまでのところほとんど存在しませんでした。
そこで、英国ケンブリッジ大学の Luke Clark によるチームでは、機能的磁気共鳴映像法(fMRI)により、スロットマシンに興じる人の脳の活動を調査しました。
彼らは、15名の被験者をあつめ、コンピュータ上で動くスロットマシンゲームをプレイしてもらいました。ゲームは実物を単純化したもので、リールは2つのみ、さらに各リールには6種類の絵柄が現れるというものでした。被験者はボタンを押して、各リールの回転を止めることができます。絵柄がそろうと0.5ポンド(約65円)が得られますが、それ以外では何も得られません。
スロットでは、絵柄が1列違いでそろわないことがあります。研究者らは、この状態をニアミスと呼びました。彼らは、絵柄がそろったときと、ニアミスのときの脳の状態を比較しました。
結果はこうでした。ニアミスのときの脳は、そろったときの脳と類似した活動パターンを示していたのです。腹部線条体や島状皮質といった部分において、ニアミスでないときよりも多くの血流がみられました。これらは脳の報酬領域の一部として知られており、今回の実験では、絵柄がそろったときにのみ活動が見られていました。この傾向は、アンケートで、ラッキーナンバーやラッキーカラーの存在を信じると回答した人に強く現れていました。
ニアミスの場合、客観的にみれば金銭的な報酬はいっさい得られないわけですが、にもかかわらず、報酬領域が大当たりのときと同様に活発にし、ひいては人をギャンブルにのめり込ませる原因となっていると考えられます。
さらに研究者らは、被験者を、1つ目のリールの絵柄を被験者自身が選ぶグループと、コンピュータが自動で選ぶグループとに分けました。すると、自身で選んだ被験者のほうが、ゲームを遊び続けたいと回答する傾向がありました。ここから研究者は、自分は状況をコントロールできるという感覚がある被験者ほど、ニアミス効果の影響をうけやすいのだろうと述べています。
こうした現象は古代に期限を持っているかもしれないと研究者たちは言います。人間は、狩猟などのスキル依存のタスクにおいて、結果に対しなんらかのコントロールを行うことで成果を得る可能性を高めてきました。ギャンブルは、状況をコントロールする方法を見つけようとする人間の性質をうまく利用したしくみだと言えます。
なるほど・・・。古代の生活との関連づけのところが少し話が難しいなあと感じましたが、とはいえ、絵柄を機械がオートで決めるのでなく、ギャンブラー自身の手で決めたときの方が、ゲームにのめり込もうとする気持ちが大きくなるというのはおもしろい傾向です。自分のウデ次第でスロットの目はよくなる、という気持ちがどこかにあるからなのかな。
【参考リンク】
・元論文:Gambling Near-Misses Enhance Motivation to Gamble and Recruit Win-Related Brain Circuitry
コメント (4)
この研究は面白いですね。機械的な判断で当りかハズレかだけが重要なのではなく、脳で反応しちゃうからギャンブルを続けてしまう、というのはすごい、怖い、面白い。これを発展させてのめりこむギャンブルを開発したり、または逆にギャンブルから足を洗う方法なんてのを期待します。
ちなみに馬蹄ゲームと手榴弾は両方ともニアミスが重要な意味を持つもの。普段はタイトルを意訳気味にわかりやすく訳してくれていてとても読みやすいです。
投稿者: 綺麗山 | 2009年03月07日 07:26
日時: 2009年03月07日 07:26
ニアミスが重要って意味だったんですね。Science Now の記事はいつも凝ったタイトルを付けてくるのでよく「?」となります。
意図的にニアミスをつくることでより没頭させられる可能性を今回の結果は示していますね。ギャンブラー自身は「ツキは自分に来ている!」なんて思っていても実はそれは仕組まれたものだった・・・みたいなことが起こるかも。(もしかすると風営法?とかで既に規制されてるのかもしれませんが。。)
今回の結果を応用して、反対に賭博をやめさせることに使えるかもしれないというのは僕自身思っていなかった新鮮な視点でした。
投稿者: riverplus | 2009年03月15日 23:09
日時: 2009年03月15日 23:09
6種類の絵柄をずっと多くすれば、そろったときの脳と類似した活動パターンを示す度合い
が0列、1列、2列、3列、...違い順のグラデーションになるのでは。
もしそうならば、「ニアミス」モデルよりも「弓矢の的」モデルのほうがいいかもしれない。
投稿者: のっし | 2009年05月29日 09:13
日時: 2009年05月29日 09:13
こんにちは。
当たりからどのぐらいズレているかと活動パターンにどんな関係があるかというのはこれまた面白い傾向が出てきそうですね。当たりにある程度近くなったところで急に活発になるとかなんでしょうかね?
投稿者: riverplus | 2009年06月06日 14:55
日時: 2009年06月06日 14:55