« ストラディバリウスの音色を現代に再現する | メイン | ニアミス時のギャンブラーの脳の中 »

イモムシは女王アリの声色を模倣する


 Science NOW より。

■ 六本足の王族の音
 The Sound of Six-Legged Majesty

 アリの巣に小型スピーカーを仕込むという調査によって、音によるコミュニケーションの役割があらたに解明されました。さらに、この仕組みを利用してアリをだまし、自分の身の回りの世話をさせるという何ともずる賢いイモムシの習性が併せて突きとめられました。

 アリのコミュニケーション手段といえばフェロモンが有名です。音によるコミュニケーションと言われてもあまりピンとこない人が多いかもしれません。アリの尻には、洗濯板のような波板状の隆起があります。ここに、腹部にある突起状の器官をこすりつけることで、音を出すことができるのです。

 これまで研究者たちの間では、この音は普段のコミュニケーションの役割には用いられないと考えられてきました。危険が迫ったときの警告音として使われるものと考えられていたのでした。

 そこで英国オックスフォード大学の昆虫学者 Jeremy Thomas は、こうした音がアリのコミュニケーションの中でどのぐらいの役割があるものなのか、調べることにしました。

 彼のチームは、Myrmica schenki という種類のアリの女王アリと働きアリが出す音を録音して分析しました。また、小さなスピーカーを巣に仕込んだときの反応を観察しました。

 結果はおもしろいものでした。女王アリと働きアリの音を比較したところ、働きアリの方がより低い周波数の音を出していることが分かりました。さらに、スピーカーから女王アリの音を出してみると、周囲の働きアリは、スピーカーの周りに集まり防御態勢に入るなど、女王の音に注意を示すようになりました。働きアリの音を鳴らしたときのリラックスした態度とは対照的でした。

 今回の結果は、音が、従来考えられていたよりもずっと重要なコミュニケーションの役割を担っていることを示しています。

 さらに今回はもう一つのおもしろい事実が報告されました。Maculinea rebeli という種類のイモムシが、女王アリの音を真似て、働きアリに自分の世話をしてもらっていることが分かったのです。

 このイモムシは、アリのフェロモンを真似た匂いを発して巣へ侵入します。ひとたびイモムシが侵入に成功すると、働きアリはまるでそれが女王であるかのように世話を始めていたのです。そこで研究者たちは、このときイモムシが発する音を録音し、しかけたスピーカーから流してみました。すると、働きアリたちは女王アリがあたかもそこにいるかのようにふるまいました。

 イモムシは、女王アリと働きアリの音に違いがあることを見抜いていて、それをうまく利用して自分の世話をさせていたと言えます。今回の発見は、コミュニティに寄生をする生物が、こうした音による擬態を見せたことを示す初めてのケースといえます。

 なるほど・・・。アリの匂いを吹き付けたダミーのイモムシで試してみるなど、いろいろと手の込んだ調査をやっているようです。個人的におもしろいなあと思ったのは、今回の結果で、女王アリと働きアリを区別するという音の役割があらたに明らかになったわけですが、実はイモムシはとっくにそのことに気付いていて、しかもそのことをうまく利用して生存の助けとしていたという点。いろいろと新発見が盛りだくさんで刺激的です。

【参考リンク】
・元論文:Queen Ants Make Distinctive Sounds That Are Mimicked by a Butterfly Social Parasite

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.riverplus.net/cgi/mt/mt-tb.cgi/2949