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株式が漁業の破たんを食い止める


 Scientific American より。

■ 株式市場ストラテジーは漁業の破綻を食い止める
 Stock-Market Strategy Halts Fishing Collapse

 漁業のしくみに株式市場のやり方を取り入れるという新たな手法が行われています。今回、この手法が漁場や漁業者にどのような効果があるかの調査結果が報告されました。

 漁業のしくみには、従来から「オープンアクセス」という方式が知られています。オープンアクセスの方式では、ライセンスを持つ者であれば好きなだけ魚を獲ることができます。(実際は組合ごとにいろいろな規制を設けて漁獲量を調整していますが。)一方、近年あたらしく提案された方式が、「漁獲株式」とでも呼ぶべき仕組みです。

 漁業株式とはどういうものでしょうか。これは通常の株式とすこし似ています。株式を所有する漁業者は、年ごとに漁場の全体で収穫可能な量のうち、自分の所有するパーセントぶんだけの収穫をおこなうことができます。漁場全体の収穫可能量は、毎年、政府によって漁場の魚の生息数が調査され、その結果にもとづいて決定されます。生息数が多ければそれだけ収穫可能量が増える、つまり株式の価値が高くなるというわけです。

 さらに漁業者たちは、株式を他者との間で売却したり購入したりすることが可能です。したがって、各漁業者は自身の今後の予測にもとづいて、毎年の自分の収穫量を調整することができるようになるのです。

 さて今回、米国カリフォルニア大学の資源経済学者 Christpher Costello らによって、この新しい方式で実際にどのような効果が得られているのかが調べられました。彼らは、1950~2003年にわたる1万1千人もの漁業者を対象に調査を行いました。

 調査の結果はこうでした。漁獲株式を導入することによって、それまでの減少傾向にあった生息数が、減少に歯止めがかかるか、もしくは回復するという全体的な傾向があることが明らかになりました。

 さらに、漁獲株式を導入した漁業者たちは、従来の漁業者たちと比べて、破たんに落ち込む割合が半減することも明らかになりました。

 株式の導入がもたらしたメリットは何だったのか。それは、漁師たちの間に、海洋を大事にするという金銭的な動機が生じたことだと言えます。つまり、彼の言葉でいえば、賃貸から持ち家に引っ越すことによって、建物を大事に扱おうとする強いインセンティブが働いたのです。

 なるほど。個々の漁業者が自分の目先の利益だけを最優先して行動すると、漁場全体としては資源が減り、やがて個々の漁業者も破綻してしまうと。株式というかたちで資源をシェアすることで、資源保護の点だけでなく、漁業者の長期的な利益という点でもメリットがあるのだなあと思いました。

 ちなみに先日に紹介した「株取引がダムの水位を予測する」では、ダムの水位予測に今回と似た株式の仕組みを導入することで、関係者の一種のコンセンサスを形にできるメリットが得られていました。今回は、言葉こそ同じ「株式」ですが、これとはまた違ったメリットが得られたといえるのでしょう。

【参考リンク】
・元論文:Can Catch Shares Prevent Fisheries Collapse?

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