« 女性の手の細菌はバラエティ豊か | メイン | 懲罰はいかにして公共の福利に貢献するのか »

ビンテージワインで温暖化ガスを測定する


 ABC Science より。

■ ワインの香りには気候のニュアンスがある
 Wine's bouquet has climate overtones

 温暖化への懸念が増しつづけている昨今、化石燃料を由来とする二酸化炭素量をどのように測定するかという問題はますます重要になってきています。そんな中、オランダの研究者が提案した手法は、ワインをつかって測定するという、一見なんとも風変わりなものでした。

 通常、化石燃料由来の二酸化炭素を測定するには、大気から二酸化炭素を採取してその成分を分析するというやり方が用いられます。そのため、いくつかの場所に測定ポイントが設けられているのですが、なにぶんその数が少ないという問題がありました。現在のところその数は、ヨーロッパ全土で10カ所足らずという状況です。したがって、時間的・空間的に精度のたかい知見を得るためには、ポイントの数を増やすことが欠かせないとされていました。

 そこでフローニンゲン大学の同位体研究センターの Sanne Palstra は、ワインに含まれる二酸化炭素の放射性同位体を調べるという方法で、この代替となるデータを得ることができないかと考えました。

 しくみはこうです。通常、炭素原子の質量量は12(C12)です。ですが、炭素原子のなかには、これとは異なる質量数をもったものが存在します。そのうちの一種、C14は、その名の通り質量数が14で、大気中や生物の体内にごく微量ながら含まれています。

 一方、多くの方がご存じのとおり、化石燃料は大昔の生物の死骸が起源です。C14は、時間とともに崩壊して窒素(N14)へと変化します。したがって、化石燃料を由来とする二酸化炭素は、C14の含まれる割合が実質的にゼロであると見なせるのです。

 ですので、ある年代のワインからC14の割合を調べれば、その年のブドウが大気中から吸収した二酸化炭素のうち、化石燃料由来のものの割合を計算することが可能である・・・このような筋書きを研究者たちは考えたのです。

 実際に各地のワインをもとに同位体の割合が測定されました。結果、スイスのアルプス産のワイン(化石燃料由来の二酸化炭素が十分ちいさいと考えられる)と比べて、イタリア北部とドイツのワインにおいて、他よりも多くの化石燃料の放出を確認することができた、と著者たちは述べています。実際、これらは工場や空港から近い場所とのこと。さらに研究者らは、年代もののワインを使うことで測定をさかのぼることも可能だ、と述べています。

 なるほど。なんであえてワインを使うのかな、というところがはじめ微妙に腑に落ちませんでしたが、よく考えてみると、ワインって産地と年代がきっちり管理されているわけですよね。信頼性という点からすると、もしかするとワインはこの上なく適したサンプルなのかもしれません。

 測定ポイントで測定した値とどれぐらい一致しているのかな。今後はそのあたりの信頼性の評価がやるべきことなのかなと思いました。

【参考リンク】
・元論文:Wine ethanol 14C as a tracer for fossil fuel CO2 emissions in Europe: Measurements and model comparison
核実験が残した産物

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.riverplus.net/cgi/mt/mt-tb.cgi/2900