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ハッピーな気分がもたらす志向


 [ EP: 科学に佇む心と身体 ] 経由、EurekAlert! より。

 突然ですが、こんな実験をやってみてください。

 A.あなたの今までの人生の中で、最も幸福だったのはいつでしょうか? それはどんな出来事があった日でしょうか。できるだけ鮮明に、そしてそのときどんなことを感じたかについてもあわせて思い出して下さい。思い出し終わったら、次に進んで下さい。

 B.以下には、1つの文と2つの選択肢からなる設問が並べてあります。1つ目の文には、ある行動が書かれてあり、その下には、それを別の表現で言いかえた2つの文が書かれてあります。あなたにとって、その行動をよく言い表しているのはどちらでしょうか? もちろん、正しい答えがあるわけではありません。個人的な好みに近い方を答えて下さい。設問は4問です。

 1.読む
   a.活字の行を追う
   b.知識を得る

 2.歯みがきをする
   a.虫歯を予防する
   b.口の中で歯ブラシを動かす

 3.じゅうたん用に部屋を測る
   a.リフォームの準備をする
   b.巻尺をつかう

 4.食べる
   a.栄養をとる
   b.かんで飲み込む

 以上で実験は終わりです。おつかれさまでした。

 さて、これと同様なテストが米国の大学生を対象に行われました。その結果、ポジティブな気分にさせられた人たちは、反対にネガティブな気分にさせられた人が「活字の行を追う」「口の中で歯ブラシを動かす」「巻尺をつかう」「かんで飲み込む」といった、<手段>を表す選択をとったのとは対照的に、「知識を得る」「虫歯を予防する」「リフォームの準備をする」「栄養をとる」といった、<目的>を表す選択をとる傾向があることが明らかになりました。

■ 幸せな顔をしよう:全体像が見えるようになる
 Put on a happy face: It helps you see the big picture

 この実験を行ったのは、シカゴ大学の Aparna Labroo とジョージア大学の Vanessa Patrick です。彼らは大学生を集め、上で述べたのと同様のテストを行いました。被験者の半分は幸せだったときのことを紙に書き出し、残り半分は不幸せだったときのことを書き出しました。さらにその後、上記と同じような設問を10問、回答してもらいました。

 いずれの設問も、「どのようにするのか」という手段を述べた選択肢と、「なぜするのか」という理由を述べた選択肢からできています。研究者たちは被験者らの回答を分析しました。

 結果はどうだったか。目的が選ばれた設問数を比べてみると、幸せなことを思い出した被験者で平均6.1問、不幸なことを思い出した被験者では4.6問と、幸せなことを思い出した人のほうが目的志向の答えを多くしたことが分かったのです。この傾向は、2択でなく、自由記述式の回答をさせたときも同じでした。

 これとは別に、こんな実験も行われました。被験者に昔を思い出すことはさせず、いきなり設問に答えてもらいました。ただし先ほどとは問題用紙が少し違っていて、問題文の横にスマイルマークまたはしかめ面マークが書かれていました。このようにして答えてもらった回答を見ても、やはり、スマイルを見て幸せな気分になった人のほうが目的志向の答えを選ぶことが分かったのです。

 ちなみにこの設問は、被験者がどのレベルの解釈をするかを調べるのによく用いられるものだそうです(*1)。これによると、目的志向の答えを選ぶことは、解釈のレベルとしてはより上位なのだそう。つまり、「どうやるか」と、目の前の課題をいかに解決するかに気をとられるのではなく、状況から一歩身を引いて、「なぜこの行動をとるのか?」と、抽象的な考え方をすることにつながっていると言うのですね。

 研究者らは次のように結論づけています。状況が良好だと感じ、ポジティブな気分になった被験者たちは、状況から距離をおいた心理になると。そしてこれにより大局的見地に立つことができ、ひいては上位レベルの考え方ができるようになったのだろうと述べています。

 うーん、この最後の理由づけの部分は理解が難しいなあというのが正直な感想。ですが、前向きな気分になることで余裕が生まれて、そもそもの「なぜ」を問えるようになったのかな、と直感的にはまあ納得できる結果だと思います。

 記事でも触れられていますが、たとえば冷蔵庫に笑顔の子どもの写真を貼っておくと、健康的な食材を無意識的に選ぶことができるかも、なんて感じに、僕たちの日常にすぐに適用できそうなところは面白いですね。あとは会社のミーティングは笑顔でやりましょうね、といった教訓とか。

 ちなみに上記のテストは、英文のテキストを僕が勝手に訳した上に、指示をいくらか端折っていますので、これで正確な傾向が出るかについては保証できません。あしからず。

【参考リンク】
・元論文:Psychological Distancing: Why Happiness Helps You See the Big Picture
・(*1):Levels of personal agency: Individual variation in action identification
ABC Science::Can You Smile Your Way to Success

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