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子供たちはテレビゲームで歯をみがく


 New Scientist より。

■ コンピュータ化された歯ブラシは口腔衛生をゲームにする
 Computerised toothbrush makes oral hygiene a game

 歯みがきを嫌がる子供たちに、毎日きちんと歯をみがいてもらうにはどうすればいいか? ブラッシングに合わせて動くゲームをつかって、子供たちの歯みがきを大きく改善することが可能になりました。

 小さな子供たちにきちんと歯ブラシをさせるというのは非常に大変なことです。まずそもそも好んで歯をみがく子供なんてそうそういません。さらにやっと歯ブラシをさせることができたとしても、子供のブラッシングは決して上手ではありません。とある研究によると、歯全体の4分の1程度しか磨かれていないという報告もあるほどです。

 そこで、国立台湾大学の Hao-hua Chu らのチームでは、ゲーム感覚で楽しんで歯みがきができるような仕掛けができないかを考えました。彼らのアプローチは、歯ブラシの動きに対し、コンピュータ画面上に何らかのフィードバックを出すというものです。

 どうやって歯ブラシの動きをキャプチャするか? 彼らがとったのは、ウィーリモコンで使われているのと同じ、3次元加速度センサーを歯ブラシの末端に取り付けるという方法でした。しかしこの方法では、口の中の位置の精確な位置を得ることは困難でした。口の中のおおよその位置しか判別することができなかったのです。

 そこで別の方法を用いました。加速度センサーによるアプローチはあきらめ、LEDライトによる方法を採用することにしました。ブラシの末端に、3個のLEDが埋め込まれた小さなボックスを装着します。そしてLEDを洗面室の壁に取り付けたWEBカメラで撮影することにより、ブラシの位置や回転などの動きをとらえることにしたのです。精度は加速度センサーよりも良好で、歯ブラシの先端が口の中のどこにあるかを、24箇所という粒度で区別することに成功しました。

 こうして得たデータをもとに、楽しく歯ブラシができるゲームを開発しました。下の図は、研究者たちが Ubicomp 2007 という学会で発表したときの論文(A Playful Toothbrush to Motivate Proper Brushing for Young Children)から引用しました。この「Playful Toothbrush」というゲームでは、歯ブラシを動かすと、色のついた歯がだんだんきれいになっていくという仕掛けが施されています。

 実際に幼稚園児たちを相手にテストも行われました。13名を対象にした実験によると、5日間このゲームをやってもらった前後で、ブラッシングがどれだけ良くなったかを染色テストで調べてみたところ、2倍の向上がみられたとのことです(何が2倍なのかは記事からは不明)。

 なるほど。気乗りのしない仕事や勉強をやるときに、楽しめる仕掛けを設けてやる気を出すというのは僕たちも普段やることですね。ですが、歯みがきのような、昔から当たり前にやっていたルーチンワークにも同じ仕組みを持ち込もうというのは考えたことがなかったです。仕方がないこと、という先入観がすっかり染み付いていたんだなあ、と気付かされました。

 おそらく元論文では挙げられているのでしょうが(読んでない)、実用にいたるまでには問題がたくさん残ってそうですね。おそらく頭は最初の位置から動かしてはダメでしょうし、そもそも頭や歯ブラシの位置をセットする手順が毎回必要になりそう。あと洗面所に大きなディスプレイが居座るというのも現実的ではないでしょうね。こういう問題の解決を考えるのはとても面白いですね。ぜひスマートな解決法がやがて世の中に出てくるといいなと思います。

【参考リンク】
・元論文:26th Computer and Human Interaction conference という学会で発表が予定されているとのことです。

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