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言語の進化は段階的か?突発的か?


 Science NOW より。前々回に引き続き言語の進化に関するニュースです。

■ 言語の進化に句読点はあるのか
 Punctuation Marks in Language Evolution?

 言語の進化とは、ゆっくりと緩やかなペースで起きるものなのか、それともある短い期間のうちに一気に起きるものなのか? 後者を支持する研究結果が、英国の研究者たちによって発表されました。彼らは、生物の進化を追跡するのと同じアプローチをもちいてこの問題に取り組みました。

 この研究を行ったのは、リーディング大学の進化生物学者 Quentin Atkinson と数学者 Mark Pagel らです。彼らは、世界の言語族系のなかから、メジャーな3種である、インド・ヨーロッパ語族、バントゥー語族(群)、オーストロネシア語族を調査のターゲットにしました。その中から計490もの言語を選び、それぞれについて基本的な単語を調べリストにしました。基本的な単語というのは、たとえば「私」「雨」「長い」「歩く」「なぜなら」など、頻繁に使われるような単語のことで、一般にはスワデシュリストと呼ばれるものです。

 次に、各言語間で、これらの単語がどのように変化していったかを追跡しました。その結果から、各言語の関係を表現したツリー図を作り上げました。この図をみれば、たとえば英語は(サクソン人がヨーロッパからイギリスに移ったときに)ゲルマン語から派生して生まれた言語だということが分かるわけです。

 さらに彼らは、このツリーに対し、とある数学モデルを適用しました。このモデルというのは、メンバーの1人の Mark Pagel が以前の研究で用いていたものの別バージョンで、もともとは、生物学の世界で、生物の進化を分子のレベルから追跡するために考え出されたのだそうです。遺伝子をキーにして進化の進み方を追いかけるのと同じように、単語をキーに言語の進化を追いかけたのです。

 このモデルを使った結果、こんなことが分かりました。言語に起きた変化のうち、多くの部分が、祖先の言語から派生した直後の時期に集中して起こっていたのです。たとえば、バントゥー語族の場合だと、この言語族で起こった語彙の変化のうち、全体の31パーセントが、祖先から派生したタイミングで生じていたのです。

 ではなぜこのような変化が特定の時期に集中していたのでしょうか? 著者らはいくつかの可能性を挙げています。ひとつに、複数のグループの人々が同じ土地で暮らすことになったときに、各々が自言語を他と区別するために変化させたという可能性。あるいは、少数の人々がグループから離れ別の土地で暮らし始めたときに、その人の発音の癖がそのまま受け継がれていったという可能性などです。

 なるほど、今回の結果がどれだけ正しそうかは、彼らがつかったモデルの正当性いかんに大きく関わるので、これを読むだけでは妥当性についてうまくコメントできないですね。。とはいえ、一つのアプローチから、生物の進化と言語の進化という、まったく異なる分野の知見が得られたという点はかなり魅力を感じます。


【参考リンク】
・元論文:Languages Evolve in Punctuational Bursts
・同論文記事:ABC Science OnlineNew languages evolve in sudden bursts
・Wikipedia:スワデシュ・リスト

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