« クモが巣をゴージャスにする理由 | メイン | ものの数え方はどのように進化するのか »

サルも交尾のために対価を支払う


 ABC Science Online より。

■ サルもセックスのために対価を支払う
 Monkeys pay for sex too

 サルをはじめとした霊長類にとって、グルーミング(毛づくろい)はたいへん大事な意味をもつ行為です。その基本的な役割は、汚れや毛のもつれを取り除いて身体を清潔に保つことにあるわけですが、それがすべてではありません。そのときの状況に応じて、いろいろな深い意味があるのです。

 たとえば、母サルが子サルに行うグルーミングは、愛情表現のひとつです。また、仲間うちで行うグルーミングは、自分より地位の高いサルへの忠誠心を示すものです。

 さて、この他の役割として、異性のアピールというのもあります。実際のサルの行動を見てみると、交尾にいたる前にオスからメスに対しグルーミングが行われているのです。しかもどうやら、このグルーミングは、周りの状況や相手のメスに応じて違いがあるらしいことが最近の研究で分かってきています。ですが、この現象をきちんと調べた研究というのは、これまでありませんでした。

 そこで今回、Animal Behaviour 誌に、この現象について徹底的な調査がなされた結果が報告されました。研究を行ったのは、シンガポールの南洋理工大学の Michael Gumert らです。彼らは、2003~2005年の期間、インドネシアのタンジュンプティン国立公園に生息する、カニクイザル(英語名:long-tailed macaques)の行動を観察しました。彼らは、オスからメスへ行われたグルーミングに注目し、243回の記録を調べました。(なお右の写真は、カニクイザルの適当な写真が見つからなかったので、同じ属のニホンザルの写真を貼りました。)

 結果、いろいろな発見がありました。

 まず、オスからメスへ行われたグルーミングを見てみると、そのほとんどが、交尾可能な状態(ようするに発情期)のメスに対してであることが分かりました。

 さらに、グルーミングにかけた時間を見てみると、この時間は、周りの環境と、両者の力関係とに依存して大きく変わっていることが分かりました。

 オスは、周りにメスが少なければ少ないほど、より長い時間をかけてグルーミングを行っていました。さらにこの傾向は、オスの地位が低いときにとくに顕著でした。つまり、別の見方でいうと、地位の高いメスは、交尾の対価として、より長いグルーミングをオスに要求しているようなのです。実際、グルーミングの時間は、短いもので数秒間、長いもので1時間半以上と、状況に応じて大きく変わっていました。

 研究者たちは、併せてメスからオスに行われたグルーミングについても調べてみたそうです。こちらはグルーミングの後に交尾にいたるというケースはありませんでした。メスからのグルーミングには性的な意味合いはなく、オスとの絆を表現しているものと思われます。

 最近の生物学の世界では、こうしたオスからメスへのグルーミングと、その後に行われる交尾とを、いわば一種の商取引としてとらえる考え方があるそうです。今回の観察結果は、人間以外の霊長類において、マーケットの状態が取引の内容に影響をおよぼしたという初の証拠になるとといえます。

 なるほど、サルの性行動を商取引としてとらえるというのはなかなか面白い視点です。(たんなる言葉遊びなのかもしれませんが。)人間の世界では、供給量がすくなくなれば対価は上昇するわけですが、サルの世界でも同じようなことが起きているわけですね。メスの数がすくなくなれば、それだけメスの価値は上がり、対価(グルーミング)は大きくなると。さらに、サル社会での地位が、そのままグルーミングの価値に反映されているということも、注目すべきポイントだと思います。

【参考リンク】
・元論文:Payment for sex in a macaque mating market

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.riverplus.net/cgi/mt/mt-tb.cgi/2604