« パイプで地球の気候を救え! | メイン | チベット人が高山病にならないわけ »

インカの生贄の子供の食生活はリッチだった


 Science NOW より。

■ 死の前のインカのごちそう
 An Incan Feast Before Death

 インカ帝国は、かつて南アメリカのペルーの周辺で栄えた国です。13世紀に興り、16世紀にコンキスタドールと呼ばれるスペイン人に滅ぼされるまでの間、栄え続けました。世界遺産のマチュ・ピチュは有名ですね。

 さて、この地域では、1995年ごろから、10歳前後の子供のミイラがあいついで発見されました。当時に遺された文献によると、どうやらこれらのミイラは、「カパコチャ」と呼ばれる儀式で葬られた生贄だったそうです。ミイラの多くが、ネックレスや頭飾り、ブレスレットなどを身に着け、山頂部の神殿にて葬られていました。インカ帝国の人々は、子供たちの命を神へ捧げ、国の安静を祈っていたようなのです。

 この地域の気候は寒冷なため、ミイラは氷漬けの状態で発見され、きわめて良好な保存状態でした。胃の中の消化物から、死の前日にどういった食事をとったかといった情報までも明らかになっているようです。(参考:縄文と古代文明を探求しよう!::インカのミイラNo3 ミイラになった生贄

 以上が前ふり。さて今回、ミイラの毛髪を分析した新たな研究によって、死の直前よりもさらに以前の子供たちの生活状態が明らかになったとのことです。

 英国・ブラッドフォード大学の生考古学者("bioarchaeologist" という言葉をそのまま訳しました)である Andrew Wilson らによる研究チームによってこの研究は行われました。彼らは、毛髪の物質の組成をしらべ、そこに同位体がどのくらい含まれるかを分析しました。ここから、子供たちが死の以前にどういったものを食べていたかを推測したのです。たとえば、炭素の同位体の割合をしらべれば、植物の摂取の変化を知ることができるし、あるいは窒素の同位体の割合をしらべれば、肉の消費の変化がわかるというわけです。研究者たちはここから、ミイラとなった子供たちの死の以前の食生活を解き明かしました。

 分析の結果、しらべたミイラの多くが、死の以前のあるときを境に、リッチな食生活へと変化していたことが明らかになりました。中でも、あるミイラでは、もともとジャガイモ中心の食生活だったのが、死のおよそ1年前の時期に、突如、動物性たんぱく質やトウモロコシといった、栄養価の高い生活に変化していました。

 著者たちはここから、生贄に選ばれた子供たちは、その時点からインカの信仰において特別な地位に置かれたのだろうと述べています。そしてさらに、リッチな食生活をおくることもカパコチャの儀式の一部分となっていたのだろう、と述べています。

 他のミイラの中にはこうした傾向が見られなかったケースもあったそうですが、今回のケースはインカ人の信仰の詳細を知る貴重な例となりそうです。

【参考リンク】
・(元論文)みつからず。。Proceedings of the National Academy of Sciences 誌のオンライン版だそうですが。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.riverplus.net/cgi/mt/mt-tb.cgi/2535