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誰がベートーヴェンを殺したのか?


 Science NOW より。

■ ベートーヴェンは鉛で死んだのか
 Beethoven Dead From Lead?

 ベートーヴェンといえば、今さら説明する必要のない偉大な作曲家の一人です。彼は1770年にドイツのボンで生まれ、1827年にオーストリアのウィーンで亡くなるまでに、多くの作品を残しました。中でも「交響曲第9番」は、彼が死の前に残したもっとも有名な曲です。

 さて、彼の死因についてはこれまで様々な説がありました。彼は晩年に肝硬変を患っていたため、これが死因として最も有力だろうと考えられていたのですが、近年の研究によって、どうも違うらしいことが明らかになりました。2005年に発表されたその研究によると、彼の頭蓋骨で高濃度の鉛が検出されたとのこと。記録に残された彼の症状から見て、鉛中毒が原因であるのはまず間違いないとされています。

 では、なぜベートーヴェンは鉛中毒になったのでしょうか? ドナウ川の汚染された魚のためという説、食器や楽器に含まれていた鉛のためという説など、たくさんの説がありました。ですが、これだという決定的な説明はありませんでした。

 さて、ここまでが前置き。

 今回のあらたな研究によると、鉛中毒の原因は肝硬変の治療にあったことが明らかになりました。オーストリアのウィーン医科大学の法医学者 Christian Reiter は、この研究で、ベートーヴェンの2本の毛髪をスペクトルグラフで分析しました。知られているように、毛髪は成長するにつれて、頭皮の血流中の物質をとりこみます。ここから、彼の逝去前の4ヶ月間の日ごとの記録を再現しました。

 結果はおもしろいものでした。彼はこの期間、腹部にたまった水を針で刺して抜くという治療を4回受けていました。毛髪に含まれる鉛の量を調べたところ、ちょうど治療の後のタイミングで、鉛の量が急激に増えていることが分かりました。Reiter は、針の鉛がベートーヴェンに中毒をもたらし、肝硬変を悪化させ、死を早めたのだろうと述べています。

 Reiter は他の研究者らとともに、将来的には、鉛が具体的にどのぐらいのレベルだったのかを調べようとしています。しかし毛髪による分析には信頼性の上で限界もあり、完全な把握というのは難しいようです。

 たった2本の毛髪から、死の前の生活状態まで調べ上げることができるというのは驚きですね。

【参考リンク】
・(元論文)The Beethoven Journal 誌(あるんだそんな雑誌!)の "The Causes of Beethoven's Death and His Locks of Hair: A Forensic-Toxicological Investigation." という記事で紹介されるそうです。

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