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トカゲの母は子を飾りつける


 Scienctific American より、とあるトカゲのユニークな習性についてです。

 ワキモンユタ、という名前のトカゲがいます。英名は side-blotched lizard、その名の通り、身体の側面に模様をつけたトカゲです。

 このトカゲ、喉の色にオレンジ、黄、青の3種類が存在し、色に応じて習性が異なるという、たいへん変わった特徴をもつ生物です。さて、今回発表された研究によると、このトカゲの母親は、周りの環境にどんな色のトカゲが多く住むかに応じて、卵に投与するホルモンの量を調節しているのかもしれないことが明らかになりました。

Lizard Moms "Dress Their Kids for Success"--and Survival
(母トカゲは、成功し生存するために子たちを飾りつける)

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 すべての良き母と同じように、トカゲの母親も子供のために最善のことをしようとする。すなわち、メスのワキモンユタは、卵にエストラジオールというホルモンを追加投与し、新生児たちの模様を変え、生後の生存確率を高めていることが分かったのである。新生児たちは周囲に溶け込み、潜在的な捕食者を避けやすくなるため、こうした「成功のための飾りつけ」という戦略は、子孫たちが長生きする助けとなっていると研究者らは語る。

 しかしトカゲの母親は、ホルモンたっぷりの卵をどんな場合にも出すのではない。Ecology Letters 誌に掲載された新たな研究によると、ホルモンを出すかどうかは、環境や、近隣のトカゲの喉の色に応じて決まるのである。

 ワキモンユタは、おもに、テキサス州、ワシントン州、カリフォルニア州といった、北アメリカ西部の乾燥した地域に住む。ワキモンユタの喉は、オレンジ色・黄色・青色のいずれかをしており、水平・垂直いずれかの縞模様を背中にもっている(水平の縞は生態学者にはバーと呼ばれている)。オスでは、喉の色は行動に関係している。この研究の主著者である Lesley Lancaster によると、オレンジ色の喉のオスは攻撃的で、時間のほとんどをケンカをして過ごしているという。黄色の喉をした仲間は、よく背の高い草に隠れて、オレンジのオスがケンカしたり食べ物を探している隙に、こっそりメスを奪っていく。その一方で、喉が青色いトカゲたちは、たいてい地味で、こそこそした黄色い喉のオスたちに目を光らせている。

 「捕食者にどう見えるかは社会的環境によって決定されるのでしょう」とサンタクルーズのカリフォルニア大学の生態学の学部生である Lancaster は述べる。彼の発見は、母親のホルモンが子たちの外見の基本面を変えることが明らかになった初の公知例である。

 オレンジ色と黄色の喉をしたオスたちは、岩や草のある様々な場所をうろつくため、背中の目印は、自身をカモフラージュして、捕食者のディナーとなってしまうのを避ける助けとなる。たとえば、オレンジ色の喉をしたトカゲたちは、背中にある垂直方向のストライプでもって、平らな場所を逃げる際に捕食者を混乱させる。また黄色の喉のトカゲたちは、バー(訳注:水平方向の縞模様)によって、草むらに溶け込むことができる。

 母トカゲが卵の卵黄にたくさんのエストラジオールを出すことによって、黄色の子たちにバーがつき、オレンジ色の子たちにストライプがつく。もし母トカゲが黄色い喉のオスたちの中で生活しているのであれば、卵にエストラジオールを追加投与することで、黄色の子たちは、オスメス問わず背中に鮮やかなバーができる。もしオレンジ色のトカゲが多く住む地域にいるのなら、エストラジオールが増えることで、オレンジ色のオスの子に鋭いストライプができる。このホルモンがオスおよびメスの子にもたらす影響は、エストラジオールと、トカゲの性別と喉の色を決定する遺伝子との相互作用と関係するのである。

 いつ母親がエストラジオールを追加投与するのかは分かってはいないものの、ワキモンユタは人間よりも優れた色の識別能力を持っている、と科学者たちは記している。したがって、周りのトカゲの喉の色を区別するのはたやすい。また、母親のエストロゲンのレベルがある特定の状況下で高くなるのかどうか、それと、何かが卵に入り込むのか、それとも環境が自動的に卵をホルモンで包むようにさせるのか、は研究者たちには分かっていない。

 「それは受動的、あるいは能動的なメカニズムでしょう」と Lancaster は語る。

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 そもそもこのワキモンユタというトカゲ自体を全く知らなかったので少し調べてみたのですが、こいつ、かなり面白い生き物です。記事にもあるとおり、このトカゲには、オレンジ、黄、青の3種類が存在し、それぞれ異なったストラテジーによって生存を試みるわけなのですが、3つのストラテジーがちょうどジャンケンのグーチョキパーのように機能しているのです。オレンジのトカゲは攻撃的で、弱々しい青のトカゲを蹴散らし、メスのたくさんいる領土をゲットします。しかし一方で、黄のトカゲは、メスの気をひくのがうまく、うまく隙をついて、オレンジのゲットした土地にいるメスと交尾してしまいます。しかしさらにその一方で、青のトカゲは一匹のメスだけを守り通そうとする習性なので、黄のトカゲはメスを奪うことができません。荒くれ者のオレンジ、ナンパ者の黄、一途者な青が、バランスをとって生活してるんですね。(From::The Mathematical Association of America::Mating Games and Lizards

 たしかに、荒くれ者やナンパ者がたくさんいる地域では、それだけうろつき回ってメス探しをする必要性が高いんでしょうね。子ども自身が努力するだけじゃなく、あたかもお母さんが手助けをするかのように卵を産んでいるのかもしれない、というのはおもしろい考えです。

【参考リンク】
・(元論文)Adaptive social and maternal induction of antipredator dorsal patterns in a lizard with alternative social strategies

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