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格差と渋滞

 このごろ読んだ書籍紹介。紹介したい本はたくさんあるのですが、なにぶん記事を書くスピードが異常に遅いので、紹介本キューが溜まっていってる状態です・・・。


格差社会―何が問題なのか」(著:橘木俊詔、出版:岩波書店)

総合:■■■■□(難しさ:■□□ 楽しさ:■■□ 満足度:■■□)

 格差社会という言葉もこの頃は一種の流行り言葉になっています。本書は、この言葉から連想するさまざまな疑問への回答が述べられています。「格差は本当に起こっているのか?」「格差は本当に問題なのか?」といった疑問へ答えるべく、現状を示すデータを挙げながら議論を進めていきます。不況、富裕層、ニート、地域格差などなど、格差とは一体何なのかを考える上で必要となる論点が網羅されています。ともすれば一過性の流行り文句に陥りかねないこの言葉をざっと広く理解するのに本書は有効だと言えるでしょう。
 ですが一方で、定量的な議論のためのデータや定義が不十分だなあと感じる箇所がところどころ気になります。たとえば本書を通じて何回か登場する指標に、ジニ係数というのがあります。これは格差や不平等さを計測する数値で、人々が完全平等なら0、完全不平等なら1を表す、ということが冒頭で述べられているものの、具体的な定義については記述はなし。これだけの情報で、いくら増えた減ったの話をされても今いち掴み切れないなあ・・と感じました。雰囲気はつかめるのですが。
 あと、本書では格差の議論を支える資料をおおく紹介しています。これらの一つ一つはたいへん面白くて重要なものですが、著者の主張を裏付ける役割をもつにしては、あともう一押しというところで定量的なデータを欠いているように感じます。主張ありきで資料を解釈しているというか。別の見方をすれば、それだけ、完璧な議論のためのデータ集めが難しいのだと言えるかもしれません。



渋滞学」(著:西成活裕、出版:新潮選書)

総合:■■■■□(難しさ:■□□ 楽しさ:■■■ 満足度:■■□)

 渋滞という言葉は日常的によく使われる言葉ですが、渋滞学という言葉はなかなか耳にしないかもしれません。ふつうは渋滞といわれれば、車でごった返す高速道路のイメージが真っ先に湧くかもしれません。本書では、車に限らず、人の動きから、アリの動き、はたまたタンパク質、ネットワークパケットの動きにいたるまで、ふだんの生活で遭遇するさまざまな渋滞現象がターゲットになります。
 対象が僕たちの身の回りにあるものが中心なだけに、単に学問的に興味深いというだけでなく、日常生活にひそかな楽しみを感じさせるものが多いです。たとえば、駅構内で2つの人の流れが直角にクロスするとき(東に向かう人の群れと、南に向かう人の群れが、ぶつかるところをイメージして下さい)、交差点では、各方向の人がストライプ状に整列するという現象が見られるのだそうです。本書を読んでから、僕自身も駅で似たような状況に遭遇しましたが、本当に同じ現象が起きてるのが自分で分かるんです。うんざりしがちな混雑も少しは楽しくなるかもしれません。
 著者は、これらの問題に対して、いずれもセルオートマトン法と呼ばれるシンプルなモデルによるシミュレーションによって取り組んでいます。ベースとなるモデルだけでは、現実で見られる複雑な現象を再現するのはできません。そこでこのモデルにいろいろと要素を付け足していって、一体どのようにすれば現実の現象をコンピュータ上で再現できるかを追求する。その結果、現象の再現のために最低限必要となる根本的原因が明らかになっていくわけです。こんなふうに、ああでもないこうでもない、とモデルを改良していく様子は本書の各章の終わりに補足扱いで記されています。こういう試行錯誤の様子から著者の奮闘ぐあいが見えてきて面白く読むことができます。

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