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3次元の泡の構造が解明された


 Science NOW より。物理学に大きな発見があったようです。

 物理学には、セル構造に関する理論というものがあるそうです。セル構造と言われていちばんイメージがつきやすいのは石鹸の泡ですが、これにとどまらず、金属の微細構造や、生物の細胞組織など、いろんなジャンルでよく見られる構造です。

 さてこの分野では、コンピュータの世界でおなじみのフォン・ノイマンによって先駆的な研究が既になされています。彼によると、壁面はその平均曲率に比例するスピードで運動するのだそうです。毛細管現象というよく知られた現象がありますが、これも彼が導き出した関係式によってうまく記述することができます。そして彼は、平面(2次元)のセル構造の成長速度について厳密な関係式を導出しました。この関係は現在の粒成長理論の基礎となっているのだそうです。

 この関係式の3次元以上へ拡張するという問題は、それ以来の長らくの問題だったそうです。今回の記事は、この難問がついに解明されたという報告についてです。

Solution to Bubble Puzzle Pops Out
(飛び出た泡のパズルへの解決法)

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 重要な数学的洞察によって、2人の理論家らが50年来のパズルを、シャボン玉をピンで割るかのように簡単に解いてみせた。この新たな結果によって、研究者たちは、発泡体の泡が成長したり縮小したりするのを予測することが可能になる。この数学的関係は単に好奇心をそそるだけでなく、発泡状の物質を設計するエンジニアや、組織の構造を調べる生物学者、結晶の粒が固体中での並び方を探る物理学者たちを助けるものである。

 発泡体はシンプルに見えるが、研究者たちは泡が成長・縮小・合体――結晶粒粗大化として知られているプロセス――するにつれどのように変化するかを説明できていない。1952年に有名な数学者 John von Neumann が、ガラス板の間にはさんだシャボン玉のような2次元状発泡体のとある側面を解き明かした。泡が成長するか縮小するかは、その表面の曲率の総和に依存する。しかし John von Neumann は、曲率を足し上げるというこの厄介な問題を、泡の辺の数をかぞえるというずっとシンプルな作業へと減らした。大きさや形にかかわりなく、辺の数が5以下であれば2次元泡は縮小し、7以上であれば成長し、6であれば同じままでいることを彼は示した。半世紀の間、研究者たちは von Neumann の結果を3次元に拡張しようとも苦心してきた。

 今回この問題を解いたのは、ニュージャージー州プリンストンの高等研究所の数学者 Robert MacPherson と、ニューヨークシティのイェシーバ大学の理論材料の科学者 David Srolovitz である。この問題をこんなに難しくしているのは、泡の表面が、鞍やポテトチップスのように複雑に曲がり得ることが理由である。しかし MacPherson は、オイラー標数と呼ばれる数学の概念を用いて、この曲率を簡潔に記述できることに気が付いた。オイラー標数は、物体が2つにスライスされたときの、現れた表面の数から穴の個数を引いた値である。クリケットのボールなら1で、空洞のテニスボールなら0だ。「この洞察を得た後は、残りの問題を片付けるのは割とすぐにできました。」(Srolovitz)(訳注:中身の詰まった球なら1-0=1、空洞の球面なら0-0=0、ってことだと思います。)

 オイラー標数を用いて、MacPherson と Srolovitz はまた、あらゆる物体に対して形によらずに計算できる理論的な「平均幅」を考案した。3次元では泡の表面は異なる接線で交わる。この接線の長さの和がその平均幅の6倍よりも大きければ泡は成長し、小さければ縮小するということを彼らは発見した。このチームはこれを明日の Nature 誌に報告する。2次元においてはこの結果は von Neumann の公式に変形でき、4次元以上の仮説的な泡に対してもこの関係を拡張できることを彼らは示した。

 泡の成長を表面の数にむすびつけた経験的な関係は、すでに他の研究者らによって構築されていた。今回の正確な結果は、これらの経験則をよりしっかりした理論的基礎の上に置くのに有用だろうと、イリノイ州エバンストンのノースウエスタン大学の応用数学者 Sascha Higlenfeldt は述べる。「この公式に当てはめると、とてもよく満足しています」と彼は語る。「証拠に裏づけされたことなのです。」ブルーミントンのインディアナ大学の物理学者 James Glazier は、この研究を「美しい数学の1ピース」と述べている。しかし彼は、泡が消えたり合体するにつれて発泡体の構造がどのように発展するかは、さらに難しい問題であると記している。「結晶粒粗大化する発泡体を理解したと本当に言えるまでには、まだ何年にも及ぶ難しい作業があるのです。」(Glazier)

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 個人的には2段落目の内容も知らなかったので驚きで一杯。泡の構造なんて、ぱっと見ものすごく複雑で挙動を記述するなんて到底不可能な気がするんですが、辺の数という簡単な関係で書き下せるというのはとても魅力的だと思います。元論文の方はさっぱりついていけませんが。。

【参考リンク】
・(元論文)The von Neumann relation generalized to coarsening of three-dimensional microstructures

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