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RNAと文章術

 このごろ読んだ新書のご紹介。


生命のセントラルドグマ」(著:武村政春、出版:講談社ブルーバックス)

総合:■■■■□(難しさ:■■□ 楽しさ:■■■ 満足度:■■■)

 おそらく本屋さんでこの本をぱっと開いた多くの人は、「何これむちゃくちゃ難しそう」と感じ(そして場合によってはそのまま棚に戻し)てしまうかもしれません。ですが思い切って頭から読み出してみると、これが意外と分かりやすい。抽象的でつい読み疲れがちな分子生物学のトピックを、導入部で僕たちの身の回りのものを挙げつつ丁寧に説明してくれています。既出の単語が再登場したときも、読者が「これ何だっけ?」と置いてけぼりを食わないように適宜フォローが入るなど、相当な神経を費やして書かれているなあと好感を持ちつつ読みました。

 さて内容はというと、DNAに記された遺伝情報がいかにしてタンパク質に翻訳されるのかを解説しています。核内でDNAの情報がRNAに写し取られ、リボソームへ運ばれ、そこでタンパク質が生み出される、というRNAの旅の足取りを追います。遺伝子、DNAといった単語は大体知ってるけど、RNAと言われるとよく知らない、という人には丁度よい内容でしょう。

 だいぶん以前にもこのブログで触れたのですが(これ)、生命科学の世界の現象ってコンピュータの世界のそれを連想させることがあるなあと感じます。例えば、RNAの先頭部分に種類の区別のための目印をつけるというキャッピングという処理、要らない情報を除去するスプライシング、そして末端部分にA(アデニン)の繰り返しを付加する処理。これってネットワークの世界でいう、データベースからデータを取ってきて必要な部分をピックアップ、それをパディングしてヘッダを付けパケットにする、という一連の処理によく似てるなあ・・・などと、にやにやしながら読んでいました。



自己プレゼンの文章術」(著:森村稔、出版:ちくま新書)

総合:■■■□□(難しさ:■□□ 楽しさ:■□□ 満足度:■■□)

 リクルートの出版部長、制作本部長、専務取締役といった役職を務め、退職後の現在は大学で作文指導を行っているという著者の書いた、自分をアピールするためのテクニックを記した本です。

 本書はいちおう実用文を書くためのガイドと銘打っているけれど、内容的にはむしろ就職活動のエントリーシート書き方と言った方が適切かな。

 たとえばよくエントリーシートで出てくる、「『環境』というテーマについてあなたの意見を書け」といった抽象的な課題に対して、どんな文を書けばよいのか。これは僕も同じような事態に遭遇した記憶があります。本書はこういう問題に対し、抽象的な題に抽象論で返すのは愚である、と言い、論より自分自身の体験を中心に書け、と述べています。こうして書いた方が、読み手の関心をひき、書きやすく、自己表現に結びつくというのです。こういうポイントって、エントリーシートに限らず、多くの注目を集めたいブロガーにとっても有効なアドバイスかもしれません。

 結局、こういう課題作文の背景には、この学生はどんな面白いことをやってきた人間なのか、を知りたい出題者の意図があるわけです。したがって、回答者は、課題のテーマそのものと向かい合うというよりも、むしろその背後にいる出題者と何を話そうとするか。ここで問われるコミュニケーション能力というのはそういうことなのだろうと思います。

 一見は就職活動用の本ですが、根を流れる本書の考えは、今から読んでも十分役に立つ内容だと思います。

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