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お金持ちの脳と貧乏人の脳


 Science NOW より。

 被験者をあつめて、成功すると小額の賞金がもらえるテストを行ったそうです。テストは非常にシンプルで、何回か繰り返し行えば要領がつかめて、より多くの賞金がもらえるというものだそうです。さて、このテスト結果を分析したところ、所有する財産額が大きい被験者ほど、この要領をつかむまでの時間が長くかかるということが明らかになりました。さらに実際にそうした人たちの脳の活動を観測すると、学習に関わる領域が活発になるのが、貧乏な人たちと比べて遅いことが明らかになりました。

Rich Brain, Poor Brain
(金持ち脳、貧乏脳)

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 エベニーザ・スクルージやジョン・ロックフェラーは別として、多くのお金持ちの人々は、歩道でどこかにいった25セント硬貨を拾い出そうか迷いはしないだろう。今回、富裕な人々は、貧しい人々よりも、そこにある小さな変化を価値あるものとして認知していないことが、ある実験によって確かめられた。(訳注:エベニーザ・スクルージは小説「クリスマスキャロル」の登場人物、ジョン・ロックフェラーはアメリカの実業家。いずれも金稼ぎに執着した人物です。)

 英国ケンブリッジ大学の心理学者 Philippe Tobler とその同僚らは、14名の被験者に対し、コンピュータ上のテストをクリアするごとに金銭的報酬として20ペンス硬貨(約47円)が得られると告げた。研究者たちは被験者らに、2枚の抽象的な図のうちの一方を示した。正解のほうの図の後には、硬貨の絵が現れた(賞金が支払われる)。不正解のほうの図の後には、ぐちゃぐちゃになった硬貨の絵が現れた。研究者らはボランティアたちに、分かっていることの合図として、ボタンを長く押さえたままにしておくように指示した。ボランティアたちがこのタスクをどのぐらい早く習得するかによって、彼らの受け取る20ペンスという報酬がどれだけ大きいかが示されると研究者たちは判断した。

 ボランティアたちの収入は、無しからおよそ30000ポンド(約700万円)に及び、平均は10250ポンド(約240万円)だった。最下層のボランティアは、報酬の手に入れ方の習得が、お金持ちの相手よりも平均して3回早かったことが分かった。このことを彼らは Neuron 誌の今週号に報告する。Tobler のグループは、MRI装置でボランティアの脳をスキャンしながらこの実験を繰り返した。学習のあいだ、脳の3つの領域が発火し、またお金持ちのボランティアは貧乏な人たちよりもそうなるのにより長い時間がかかった。お金持ちの人々は貧乏な人々よりも少量の金銭を高く評価しないことをこの結果は示唆している、と Tobler は語る。

 「この発見は本当に興味深いものです――どれだけお金持ちであるかが、20ペンス硬貨に脳がどのぐらい反応するかに影響を及ぼすのです」と語るのは、ニュージャージー大学の心理学者 Daniel Kahneman である。しかし彼は、報酬が大きくなるとお金持ちの人々の習得は早くなるのかどうか知りたいと付け加える。

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 人の経済的背景と、金銭的報酬の絡む学習スピードとの関連を調べてみよう、という発想はとてもユニークだと思うんですけどね。読んでると気になる箇所がぽろぽろ出てきます。年齢との相関が見えているだけじゃないの? 職業と関連してるだけかもよ? 金銭的報酬が得られないバージョンと比較しなくていいの? とか。この記事を書いたひとはそのあたり気にならなかったのかなあ。

 元論文のサマリーをざっと見ると、今回の傾向は、年齢、および教育年数とは関わりなく見られたとのことです。年齢に関しては問題なさそうだけど、他にも職業とか、関わりのありそうな項目がいっぱいありそうな気がします。

 たしかに、限界効用逓減の話(持っている財産が大きいほど、同額の利益への満足度は下がるということ)という話が世の中にはあるけど、でも今回の結果から「金持ちは小銭を高く評価しない」という結論が引き出せるとは思えないなあ、というのが僕の感想です。

【参考リンク】
・(元論文)Learning-Related Human Brain Activations Reflecting Individual Finances

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