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ケンカ遊びは社会的能力を高める


 EurekAlert! より、またネズミ絡みの記事です。

 「ふざけてケンカごっこなんてしちゃいけません」というのは昔も今も言われる言葉です。しかし、ネズミに限って言えば、年少期の仲間とのこうした乱暴な遊びは、社会性の発達に大事な役割をもっているらしいことが明らかになりました。

Your mom was wrong: Horseplay is an important part of development
(お母さんは間違っていた:やんちゃ遊びは発達の大切な一部)

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 運動場での大騒ぎは、長く子供や若者の習慣だった。子供がケガをしたり悪くなったりしないかを心配する数世代の両親にとってはたいへん残念なことに、これは暴力や攻撃性への習慣づけとなっている。しかし動物実験により、やんちゃ遊びに異なる描像が描かれるかもしれない。社会的・感情的発達が、仲間とのそのような相互作用に大いに依存しているかもしれないのだ。

 Current Directions in Psychological Science 誌の4月号に掲載された記事では、レスブリッジ大学の Sergio と Vivian Pellis が、動物とかかわる複数の論文のレビューを行っており、やんちゃ遊びと社会的能力とのあいだの関連性を見出した。

 たとえば、仲間との相互作用(ひいてはやんちゃ遊び)を奪われた大人のネズミは、社会構造のヒエラルキーの理解に無能力であることを示した。ネズミの世界では、若いオスがコロニーに生息を定めようと試みると、すぐに支配的なオスネズミから攻撃の的とされる。仲間と一緒に育てられてきたネズミは、この場合、支配的なオスの注目を避けるために、すみやかに身をかがめてじっとすることを会得する。他方で、遊びを奪われたネズミは、走り回ることをやめず、結局はもっと本気の攻撃を招くこととなる。

 やんちゃ遊びを欠いたネズミでは、協調的な動きも同様に劣っているようである。ネズミは、他の大半の哺乳類とおなじく、協力的(性など)や競争的(食料を守るなど)な状況の両方について、協調的な動きに大いに依存している。孤立して育てられたネズミは、動きを適切に相手に合わせる能力が悪くなっていた。こうした協調は、ケンカ遊びの間に起こるような、たえず身体をシフトさせる動きを通じて学べるものであると著者らは述べている。

 仲間の相互作用を奪われることは、神経学的な結果も引き起こしているようである。年少者のケンカ遊びによって、著者らが「社会的脳」と呼ぶ領域である大脳皮質にある種の化学的殖因子の放出が促されることが見出されてきている。この社会的脳の構造には眼窩前頭皮質という領域があり、これは社会的な識別や決定に関わりがあることが知られている。論理的に考えれば、この領域での成長が促進されないと、それだけ協調的な動きや社会的合図の認識などが損なわれる可能性が高くなるのである。

 しかしネズミの行動は、おそらくは複雑な私たち自身の発達への洞察を与えてくれるのだろうか。どうもそうである、と著者らは述べる。その証拠として、とくにケンカ遊びについて動物と人間の遊びには重なり合う部分が相当あることを挙げている。

 「こうして得られた知識によって、人間でのこうしたプロセスの関連結果の手がかりを得ることができるのです。」(Pellis)

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 ネズミの実験については面白いね。周りから浮いてるネズミは攻撃の対象になりやすいという感じでしょうか。しかも年少期でのケンカ遊びをつうじて、いわば空気の読み方を身をもって習得しているのは面白いです。

 やっぱり気になるのは人間についてはどうなのか?という点ですね。子供のときに友達とふざけて叩き合ったりすることが、社交性などの能力を成長させる重要な要素だと分かったら、子育ても今と異なった見方になるかもしれないね。もちろん今回のネズミの場合の結論が、そっくり人間について当てはまるかというと、それはまだ微妙な感じはしますが。

 個人的には、年少期のケンカ遊びによって、上記の眼窩前頭皮質にどのぐらい成長の差が見られるのか、そして実際に、眼窩前頭皮質の大小がその人の社会的ふるまいとどのような関係があるのか、といったところが気になります。

【参考リンク】
・(元論文)Current Directions in Psychological Science誌ではまだオンライン化されてないようです。見つかり次第リンクはります。

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コメント (2)

 初めまして。いつも楽しく拝見させていただいています。
 前回といい今回といいネズミがとても面白い生き物だと実感させられました。しかしこう見てみると、意外と人間という生き物の取っている行動というのは単純なのかもしれないと思えますね。脳みその大きさだけなら段違いなのに、取る行動には類似点が多いですし。

poporoさん、コメント頂きありがとうございます。返答遅れてごめんなさい。
ネズミって、実験動物というイメージが強いせいか、知的に振舞うというのがなかなか想像できない生き物ですよね。生き物の世界で人間だけがずば抜けて特別な能力をもってるのだ、という僕たちの認識を改めさせてくれる面白い研究だとおもいます。
ネズミのほかにも、同程度の動物でこういう能力は見られるんでしょうかね? 気になる情報が得られたら改めてご紹介します。

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