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ネズミは無知の知を知っている


 Science NOW より。

 自分の無知を自覚すること、すなわち「無知の知」の重要性を説いたのはソクラテスですが、今回発表された研究によると、ソクラテスよりもずっと下等であるネズミたちが、すでにこの考えを身に着けていたらしいことが明らかになりました。

 研究者たちはネズミに、音の長さの聞き分けテストをやらせました。ネズミは音を聞いて、それが長いか短いかに応じて適切なレバーを押すとご褒美がもらえます。このテストにはある特徴があります。問題を聞いて、ネズミたちはその問題をスキップするかどうか選択することができるのです。もしスキップすれば、ご褒美は半分だけ得られます。もしスキップせず、しかも問題を間違ってしまったら、ご褒美を得ることはできません。

 こうしたテストを行ったところ、特に聞き分けが微妙な問題において、ネズミたちはスキップを選択する割合が多くなることが明らかになりました。そして実際、スキップを選ばずに問題に取り組んだ場合の正答率は、(スキップの選択肢を与えず)強制的に問題をやらせた場合よりも良くなっていることも確認されました。

 著者たちは、この結果から、いわゆるメタ認知、すなわち自分自身の心理過程についての監視や考察がネズミにおいても見られた、と述べています。

 ネズミたちは、自分にはその問題が分からない、つまり、自分は知らないことを知っているという状態だからこそ、スキップを選ぶことができたと言えるのかもしれません。とはいえ、ソクラテスが目指した「真の知」と異なり、ネズミの場合は単にエサがお目当てである、という根本的な違いがあるのは言うまでもないですけどね。

The Rodent Who Knew Too Much
(多くを知りすぎたげっ歯類)

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 ネズミは排水管を泳いだり地下鉄のレールの下でも行き抜くということで有名だが、今やもっと優れた才能を主張してもよいだろう。考えることについて考えるのだ。認識論ではないが、本日の Current Biology 誌に掲載された研究によると、ネズミは自分自身の知識の限界を知っているということ――動物界の頂上の脳にのみ属すると長く考えられていた知的能力――の初となる証拠が見つかったという。

 人々は日常的に、メタ認識を体験したり自身の知識を計ったりする。試験のあいだ気がめいる感じがしたことがある人ならよく分かるだろう。しかし動物におけるメタ認識を検知しようとする試みは、ほとんど成功したことがなかった。動物は研究者たちに何を考えているか教えてくれないというのが主な理由である。科学者たちはその代わりに行動上の手がかりに頼らなければならない。たとえば、サルは難しいテストを出されると、より少ない賭けを自分の回答に対してするし、イルカは良く二つの音を聞き分けさせると揺り動きをみせる。しかしこれまでのところ、ハトなどの脳の小さな動物がメタ認識の兆候を研究室で見せたことはなかった。

 ネズミは違うとでもいうのだろうか。アセンズのジョージア大学の神経科学者 Jonathon Crystal と学部生 Allison Foote は、音を識別させるという自己知識テストをネズミにやらせた。まず、研究者たちはネズミを調教し、一方のレバーと短い断続音(約2秒つづく)、もう一方のレバーと長い断続音(約8秒つづく)とを関連付けさせた。正しいレバーを押すとご褒美に6粒のペレットが得られ、間違ったレバーを押すと何ももらえず、再挑戦もできなかった。また、鼻をえさ箱に突っ込んで選択をしないでいることでご褒美を半分だけもらえることをネズミは教えられた。

 そうしてメタ認識テストは始まった。Crystal と Foote は、2本のレバーとえさ箱のある檻にネズミたちを入れ、断続音を流し始めた。正しいレバーを押すことでより多いご褒美をもらえることを知っているので、ネズミたちはえさ箱を避け、タップを始めた。しかし研究者たちがテストをより難しくすると事態は変わった。第2の実験では、このチームは、「短い」とも「長い」とも区別しづらい中間の断続音を流した。今回は、ネズミのえさ箱に向かう頻度が2倍になり、レバーで頭を悩まさなくなった。「テストを難しくすればするほど、より(選択を)しなくなるのです」と Crystal は語る。

 ネズミたちは間違った答えもしれないと知っていたから試験をスキップしたのだということを確かめるべく、Crystal と Foote は、えさ箱なしの難しいテストを繰り返した。テストを受けることを強制されると、ネズミたちの成績は悪くなり、たぶんこうだろうというように動いた。「ネズミは自分自身の内部の精神状態について思案することができるのです」と Crystal は結論付ける。その点において、ネズミはまさに霊長類やイルカのようにふるまうのであると彼は言う。

 「重要な研究です」と語るのは、ロサンゼルスのカリフォルニア大学のメタ認識の研究者 Nate Kornell である。「ネズミの精神プロセスが思っていたよりも私たちに近いということを示しています」。さらに、賢いと言われている動物は、意識において市場を独占していない、と彼は付け加える。というのも、「もしネズミやサルについてこれが真実ならば、他の哺乳類についても同様に真実だろうからです」。

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 やや複雑な実験をやってますが、元論文に一体どういう手順で実験をやったかについて述べられているので、興味のある方はご覧になってみるとよいかと思います。

【参考リンク】
・(元論文)Metacognition in the Rat

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