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ヒョウ柄模様の方程式

 Nature Digest 9月号より。

 動物の世界にみられる模様は本当に複雑です。

 たとえばシマウマの縞模様だったり、キリンの網目模様だったり、バリーション豊かな模様を見ることが出来ます。(参考:Wikipedia:キリンシマウマ
 
 さて、これほど複雑な模様なのだから、その仕組みは到底理解できないほどに込み入ったものに違いないと思うかもしれません。1952年、Alan Turing が提案する「反応拡散方程式」というモデルによって、こうした模様をうまく再現できることが明らかになれました。Turing は、「モルフォゲン」という2つの物質の互いの作用によって模様が生まれると考えました。驚くべきことに、彼の考えた方程式とは、2つの物質の量に関する1組の偏微分方程式に単純化されるものでした。
 
 この方程式は、反応と拡散という2つのプロセスが組み合わさったものです。活性的な反応と抑制的な反応からなる一連の化学反応に、物質の移動(拡散)というプロセスが組み合わさり、さらに物質ごとに拡散の速度が異なるという条件が満たされることで、こうした模様が生じるようになるのだそうです。詳細については「自己組織化&自己集合」がたいへん読みやすく詳しいです。

ジャガー(幼獣)  ですが、いくらかの動物では、Turing の反応拡散方程式のパラメータを調整するだけでは再現がどうやら困難だということが分かってきました。たとえばヒョウやジャガーの成獣の模様がそれです。いずれも幼獣の模様は単純なまだら模様なのですが、成獣になると、ヒョウの場合はあたかも花飾りのような模様、ジャガーの場合は小さな点を多角形が取り囲んだ模様を示すようになります。右の図は元論文(Liu R., et al. Phys. Rev. E., 74. 011914)から引用しました。上図はジャガーの生後2ヶ月の模様、下図は大人のジャガーの模様です。はたしてどのようにすればこの模様を再現することが出来るのか、という問題は研究者たちにとって謎だったようです。
 
ジャガー(成獣) 台湾・台中の国立中興大学の Sy-Sang Liaw らは、この方程式のパラメータを調節するだけではこの模様を再現することはできないだろうと考えました。そこで彼らは、幼獣にまだら模様ができるフェーズと、成獣の模様ができるフェーズの、2つの異なるフェーズに模様の形成過程を分けることを仮定しました。そしてその結果、最終的に1年間という期間を費やし、模様の再現に成功することができたのです。
 
 実際にどのような物質が上記のモルフォゲンに相当するのかは今回の研究でもまだ分かっていません。とはいえ、もし今回の過程が実際の動物で起こっているとすれば、動物の年齢と関係して、モルフォゲンの反応の関係が切り替わるしくみが働いているのは違いないだろうと言えます。
 
 こういう研究ってとても面白いなあと思います。1つのシンプルな規則だけでも複雑な模様ができあがるのに、さらにそこから2つめの規則に切り替わることによって、ますますバラエティ豊かな模様の世界が生まれるというのは、なんだか美しささえ感じますね。

【参考リンク】

元記事How a leopard changes his spots
 http://dx.doi.org/10.1038/news060731-15

元論文Two-stage Turing model for generating pigment patterns on the leopard and the jaguar
 http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevE.74.011914

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