
最近なかなか本が読めていませんが、その中でやっと読み終わった書籍のご紹介。
「ビッグバン宇宙論」(著:サイモン・シン、訳:青木薫、出版:新潮社)
上巻 : http://www.amazon.co.jp/gp/product/4105393030/
下巻 : http://www.amazon.co.jp/gp/product/4105393049/
一般向け科学書の中でもっとも有名と思われる著者サイモン・シンと、訳者青木薫とのタッグによる、「フェルマーの最終定理」「暗号解読」に続く3作目の書籍です。個人的には、この著者の本なら、本屋で中身を見ずにそのままぱっと買ってしまってもまず後悔はしないと思っています。
さて、宇宙論についての書籍といえば、訳者のあとがきにも記されていますが、巷にはほんとうに数多くの書籍が存在しています。その中で、本書で著者がとった切り口とはまさに直球ど真ん中といえるもの。そこに著者のあいかわらず明快な解説が加わり、たいへんスムーズに昔の人々の歩いてきた議論をたどることができます。
本書は、前二作とはまた異なるおもしろさを持っています。「フェルマーの最終定理」では、数学者たちによって壮大なパズルのピースが一つ一つ埋められていくプロセスが描かれ、最後の一ピースが埋まった瞬間の喜びを感じることができました。また「暗号解読」では、暗号作成者と解読者との間の、一息つく暇さえないスリリングな戦いの様子を味わうことができました。
本書「ビッグバン宇宙論」では、一応は、ある一つのテーマに沿ってストーリーが進んでいきます。それはつまり、「宇宙は過去のある時点で創造されたのか? それとも永遠の過去から存在していたのか?」という問い。この問いを念頭に置きつつ、紀元前6世紀のギリシャから始まり、天動説・地動説、エーテル、相対性理論といったトピックを通じた後で、やがて「ビッグバン宇宙」対「永遠で静的な宇宙」という対決の図式にいたります。はじめは少数の科学者のみが信じていたビッグバン説が、いかにして有力な証拠をあつめ、やがて宇宙論での大きなパラダイムを作り上げていったか、という点は本書でいちばん楽しめるポイントです。
ですが、多くの方がご存知の通り、宇宙論の話題は、ビッグバンVS静的宇宙の対決がすべてなのではありません。この他にも魅力的なトピックがたっぷり秘められているのがこの分野です。その個々の例は本書のエピソードでも挙げられている通りです。そういうわけで本書では、パズルのピースが埋まっていく感じと形容するよりも、むしろ巨大な建築物が大勢の手によって組み上げられていく様子を目にしているような、より大きな世界が頭にイメージさせられます。

