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自殺の多い都道府県

 AERA 2月13日号より、かなり興味のわいた記事です。
 
 唐突ですが、問題です。日本の都道府県で、2004年までの10年間、自殺率第1位を続けている都道府県があります。2004年度の人口10万人あたりの自殺者数は39.1人で、全国平均の24.0人を大きく上回っています。それは一体どこでしょうか。
 
 東京都? 大阪府? ・・・正解は、秋田県(←ドラッグ反転)。
 
 はたして、この現象に、何か原因があるというのでしょうか。何となく考え付くのは、曇りや雪の多い気候が何か影響しているかもしれないという説明。ですが、特に冬の季節に自殺が多いわけではなく、風土が原因だという断定はできそうにありません。
 
 本記事では、この原因を示唆する、とある論文を紹介しています。American Journal of Industrial Medicine 誌に掲載された、Leslie London らによる論文。題名は「Suicide and exposure to organophosphate insecticides: Cause or effect? (自殺と有機リン殺虫剤への曝露:原因か結果か)」(Abstract
 
 この論文は、殺虫剤に曝された人々の自殺の死亡率、あるいは、人間・動物の中枢神経系の毒性試験についての研究をレビューした論文です。これによると、有機リン殺虫剤が普及しているアフリカやアジア、中南米などの農業地域で、有機リン慢性中毒による鬱(うつ)や衝動性行動、そして自殺が多発しているとのことです。有機リンは、人間の脳内のセロトニンのレベルに異常を及ぼします。そして、セロトニンレベルに異常が発生した人は鬱の症状や衝動性を示すようになる、ということがこの論文では指摘されています。
 
 上記に関連したニュースは、以前にこのブログでも取り上げました。「汚染物質と自殺率に関連あり?」の記事で紹介した調査では、アメリカ・ノースカロライナ州ヘーウッド郡のアスファルト施設や石油浄化施設からの排出された硫化水素と、近辺の住民の自殺率の増加(10年間で約3倍)とのあいだに関連がある可能性が指摘されています。有機リンと同様、硫化水素によっても、脳内のセロトニンのレベルに異常が生じ、緊張感・躁などの状態を引き起こすことが分かっています。
 
 さて、秋田県でのこうした殺虫剤の使用の度合いはどのぐらいなのでしょうか? 成分ごとの比較は困難です。単純に、ヘリコプターによる農薬空中散布の延べ面積をくらべた場合、秋田県の散布面積は年間十万余り~十数万ヘクタール、他の有力な米作県の数万ヘクタールと比べてたいへん多いです。
 
 ところで、本記事の著者は、実際に秋田を訪れ、具体的なケースについての聞き取りを行ったそうです。すると、たしかに、自殺者が経済上の問題をかかえていたというケースも存在するのですが、一方で、周りのだれにも思い当たるふしがない自殺、いきなりの自殺、発作的な自殺が、多く見受けられたとのことです(聞き取り数が7件なので、これが一般的な傾向だとは決して言い切れませんが)。
 
 僕の認識では、自殺者には何らかの(少なくとも本人にとっては)大きな理由を抱えているはずで、周りの誰にも理由がまったく思い当たらないケースなんてのはほとんどないものだと思っていました。(もちろん、人の真の考えなんて誰にも分からない、というのは正しいとは思いますが。)ですので今回の聞き取りの結果はほんとうに意外に感じるところです。
 
 より大規模な調査が行われてほしいものです。

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