New Scientist より、なかなかびっくりさせられるタイトルの記事です。
僕はこの記事に登場する医師をちっとも知らなかったのですが、読んだだけで非常にぞっとする事件です。
今後起こりえる、彼のような医師や、あるいは病院の不良医療を、できるだけ早期に発見・対処するために、統計的なアプローチが役立つかもしれないという記事です。
Statistics could have spotted mass murderer
(統計で大量殺人者が見つけ出せていたかもしれない)
http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn7958
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統計的手法は、ふつうは産業のQC(Quality Control:品質管理)の手段として使われている。新しい研究によると、この手法で、イギリスの大量殺人医師 Harold Shipman を、より早期のうちに当局の手で捕らえることができていたかもしれないという。
この手法は、恐るべき外科医や、業績の悪い病院を暴くのにも利用でき、現在、イギリスの保健医療委員会(公衆衛生サービスを監視する独立機関)による予備計画において試験されている。
Harold Shipman はイギリス最悪の連続殺人犯であり、開業医・コミュニティの医師として、15人の患者を殺害したかどで2000年に有罪判決を受けた。しかし彼は1975年から1998年にかけて、さらに245人を殺害していたと考えられている。犠牲者はほとんどが高齢の女性患者で、致死量のモルヒネを彼の手によって投与された。Shipman は2004年1月に刑務所の独房で首吊り自殺をした。
今回、イギリス・ケンブリッジの医療審議会の医療統計学ユニットの David Spiegelhalter 氏は、産業的なQC手法を Shipman の患者の死亡データに適用し、彼の凶悪犯罪を事前に検知することが可能だったかどうかを調べた。
この方法は1943年に初めて使用され、砲弾や戦時中の軍需品の生産ラインにおいて、一貫した品質を保証するのに使われたと Spiegelhalter 氏は述べている。同様の統計手法は、今日では幅ひろい産業で使われている。しかし、これまで健康管理の実績に適用されたことはなかった。
「数学が犯罪の取り締まりに応用できるのです。」とイギリス・バース大学の応用数学者 Chris Budd 氏は述べる。「統計手法は、多くの状況で、異常を検知するのに使えるアプローチです。」
■ 時間と場所
Shipman の患者の死亡が過度かどうかを監視するだけでは、殺人者を検知するのには不十分だったと Spiegelhalter 氏は語る。介護ホームやホスピスで定期的に働いている開業医は、当然のことながら、患者の死亡率がより高いことが示された。
しかし、死亡時刻や場所といった他の要因のクロスリファレンス(相互参照)が警鐘を鳴らしていたかもしれない―― Shipman の犠牲者の多くは、およそ午後3時、つまり午後の回診時に殺害され、また異常な数の患者が Shipman の在院時に亡くなっていた。
イギリス・バーミンガム大学の別の研究グループは、2001年に、この殺人者を検知できるこれと似た統計的手法を提案した。このコンセプトは、1920年代の自動車製造におけるQCにもとづいている。しかしながら、Spiegelhalter 氏は、彼の手法は他とは違って、複数年のデータを同時に評価できるため、より強力であると考えている。
■ 子供の心臓外科手術
両研究チームは、殺人者 Shipman の政府調査にこの発見を発表した。この調査の最終報告では、このような医師監視計画の導入を推奨しているが、まだ実現はされていない。
「Shipman の調査では、犠牲者は、立証されたものが215名、疑わしいものが45名であると結論付けられました。なんらかの統計的監視の手順が実施されていれば、彼をより早く捕まえられていたのでは、と思うのは当然のことです。」と Spiegelhalter 氏は語る。新しい手法を利用することにより、「より早期の検知と多くの命を守ることが理論上は可能になるのです。」
Spiegelhalter 氏の研究は、1997年のイギリスのブリストル病院において、心臓手術後の幼児期の死亡数が異常に高かったことも、これと同じ方法で突き止められたかもしれないと示している。1991年から1995年にかけて、ブリストル王立病院での心臓手術後のケア不良のために、最大35名の子供たちが亡くなった。
Spiegelhalter 氏は現在、健康管理委員会に併せて勤めており、病院の実績監視にこの手法を適用しようとしている。
これらの手法を現実世界の健康管理に適用することは、大きな方法論的チャレンジです。」と彼は言う。「産業とは関連のない、ばらつきに対する固有の原因が数多くあるからです。」いかなる監視システムも十分な注意のもとで適用されなければならないだろうと彼は述べる。
Spiegelhalter 氏は、木曜にアイルランド・ダブリンの British Association Festival of Science 誌にこの発見を発表した。
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記事を見る限りでは、取り上げられているケースは、実際に起きた医療死のデータを後から解析して判明した結論のようで、どうやらこれまでのところは、実際にこの手法で殺人者なり医療ミスなりを検知したことはないみたいですね。
記事の終わりでも触れられていますが、仮にデータの中になんらかの相関が見出せたとして、じゃあ実際にその相関の原因は何なのか? ということを突き止めるのはすごく難しそうです。今後、この部分を突き止める一般的な手順が確立されるまでは、著者がえがくような監視システムの実現は遠いような気がします。そういう意味では、現在のところは、地道にデータ集めをして体系化の準備をするのが良いのかなあ、と感じます。


コメント (2)
■統計
統計を知らないと騙されると思っているので、もっと統計の勉強をしなくてはと思っています。
こういうことにも応用できそうなんですね。(すぐの実用化は困難としても)
前回の7文字の記事にTBしたかったのですが、しくじりました。
私の記事から「7文字の記事」を引用しております。ご了承ください。
http://ameblo.jp/orino/
投稿者: orino | 2005年09月19日 19:13
日時: 2005年09月19日 19:13
■パワフルなツール
こんにちは。フェイクTB?ありがとうございます。^^;
これだけパワフルな道具だから、使い方を誤ると、ひどい被害をもたらしたり逆に騙される可能性もありますよね。
僕も統計の勉強はすごく大事と思います。面白そうなテキスト等があれば教えて下さい。
http://ameblo.jp/riverplus/
投稿者: riverplus | 2005年09月23日 22:34
日時: 2005年09月23日 22:34