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英語力つけば「省エネ脳」に? 東大チームが実験

 アサヒコムの記事より。
 
 http://www.asahi.com/science/update/0216/005.html
 
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 英語が十分に身についた学生では、こめかみの奥にある脳の「文法中枢」が少ないエネルギーでも働く「省エネ型」になるらしい。酒井邦嘉・東京大助教授(言語脳科学)らが実験で確かめた。文法中枢は文字や言語の理解に関係があり、日本語を使う時にも働くと考えられている。活動ぶりを調べることで、言語障害を患った後のリハビリの効果判定などにも役立ちそうだという。

 研究チームは、右利きで19歳の東大生15人に協力してもらい、英語の不規則動詞の正しい過去形を瞬時に選んでもらう実験を行った。実験中、「機能的磁気共鳴断層撮影装置(fMRI)」で脳の活動ぶりを測定した。

 実験の結果、正答率が高い学生ほど、左のこめかみの奥にある文法中枢への血流集中が見られず、エネルギーを節約していることが分かった。正答率が低い学生では、文法中枢が活発に働いていた。

 この結果は、中学生を対象にしたこれまでの実験結果とは逆。中学生では、英語の成績が向上するにつれて、文法中枢の活動は活発化していた。

 酒井さんは「中学生から大学生にかけて英語が身につくにつれて、文法中枢の活動が高まる。熟達すると、節約型へとダイナミックに変化するようだ」と分析している。

 この結果は、16日発行の米神経科学会誌で発表する。

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 よく、「記事をより多くの人に読んでもらいたいと思うならば、何よりも、人目を引くインパクトのある見出しを付けるべきだ」と言われています。
 ですが、今回のこの見出しはちょっとやり過ぎだなあと感じてしまいます。

 この見出しを読んだだけだと、
 「英語の力がアップすると、何をするにも、脳を効率よく働かせられるようになる」
 と、早とちりしてしまう人が出て来そうな気がします。
 読者を煽って英語教育の広告をクリックさせる気か? と思わず勘ぐってしまいました。
 
 
 まあ、見出しへの突っ込みは置いておいて。 

 今回の研究については、ここに、より詳細な報告が載っています。
 詳細な報告を読んでみて、自分の誤解に気付いたのですが、

英語の成績の良い中学生 ・・・ 実験中、文法中枢の活動が活発
英語の成績の悪い中学生 ・・・ 実験中、文法中枢の活動が活発でない

 という図式ではなかったのですね。

 大学生を調べたほうの実験は、英語の熟達度の高い低いによって被験者をグループ分けして、両者の文法中枢の活発さを比較しています。
 一方で、中学生を調べたほうの調査は、英単語のトレーニングをやる前とやった後での文法中枢の活発さの違いを調べています。
 (前回の調査に関してはここを参照してください。)
 
 その結果、英語の学習を開始したばかりの中学生については、トレーニングにより英語の知識が増えると、脳の文法中枢の活動もあわせて活発になる。
 そして、学習がかなり進んだ大学生については、熟達度が高い人ほど、文法中枢の活発な活動を必要としない。
 ・・・ということを示せたというのが、今回の結論になるようです。

 (個人的に疑問に感じるのは、動詞の過去形の2択クイズの成績によって英語の熟達度の判定をするというのが、どれぐらい妥当なことなのか? ということですが。)

 今回の結果は、僕たちの経験と照らしてみれば、
 英語を習ったばかりの頃だと、過去形を一つ思い出すだけでも、「ええとなんだっけ」と懸命になっていたのに比べて、年齢を重ねてそれなりに英語に習熟した後では、さして苦労なくスムーズに過去形を思い出せる、という状況のことを言ってるのだと容易に対応付けできます。


 ところで、この辺りの分野に詳しくない人(僕もそう)には、始めこの記事を読んだときに、
 要は頭が慣れたってだけでしょ? この結果に何の意味があるの?
 と、感じた方がいるかもしれません。

 その問いへの返答を一言でまとめると、
 今回の研究成果は、上で述べたような人間の言語習得の過程を、脳の特定の活動部位の変化として視覚的にとらえることができた、という点において意味がある。
 というふうになるんじゃないでしょうか。 

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