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まちがい探し

 今回も前回同様、良いと思った本の紹介。

 「『社会調査』のウソ リサーチ・リテラシーのすすめ」(著:谷岡一郎、出版:文春新書)。

 本書は、新聞などいろいろなメディアで頻繁に目にする、いわゆる「社会調査」がターゲットです。
 著者が言うには、世の中に蔓延している社会調査のうち、非常に多くのものが、価値のないデータを持ってしまっているか、あるいは、データの間違った解釈をしている。
 本書ではその典型的となる原因を列挙し、おかしな社会調査に騙されないためにはどんな視点を持つべきか、そして、実際に自らがそういった無駄調査をしてしまわないためにはどんな方法を用いるべきか、について説明しています。
 特に面白く読めるのが、実際に行われた社会調査を例に挙げ、一体この調査のどこがおかしいか? を解説していくところ。
 多岐に渡る分野から次々とおかしな調査が例示され、まるでクイズの本を読んでいるかのような楽しさがあります。
 (中には税金で行われている調査もあるわけで、本来なら腹を立てるべきなのでしょうけれども。)

 ここでは、この本の中から2箇所をクイズ形式で抜粋。

【問題1】
 統計によればアリゾナ州は他の州よりも肺結核で死ぬ人が多いそうです。これはアリゾナの気候が結核にかかりやすいということになるのでしょうか?

【問題2】
 具体的な日付は忘れたが、数年前、NHK夜七時のニュース番組で、次のようなニュースが流れたことがある。
 《コーヒーを一日に三杯以上飲む人は、飲まない人に比べて、心臓病で死ぬ確率が三倍以上に上ることが、C大学(関東地方)医学部の××教授の調べでわかった(カフェインの取り過ぎによるものと思われる)。》
 日付だけでなく数値まであやふやで申し訳ないが、主旨は間違っていないはずである。
 さて、このニュースを見た人のほとんどは、[カフェイン→心臓病]という因果関係を想像したに違いないと思われるが、筆者はすぐに、ある疑問を抱いた。そこで問題。それでは筆者が抱いた疑問とは、一体、どのようなものだったでしょうか。

 以下に解答の部分を抜粋します。
 ぜひ、少し考えてみてから以下をご覧になることをおすすめします。

【問題1】
 まったく逆です。アリゾナの気候は肺結核にかかった患者が療養するのにおあつらえ向きなので、こぞってアリゾナに行くのです。当然ながら肺結核で死ぬ人の平均値が大きくなるというわけです。

【問題2】
 解答。それは「果たしてこのC大学の教授は、砂糖についてもコントロールしたのだろうか」という疑問である。
 (略)
 筆者の記憶では、NHKのニュースには「カフェイン」という言葉はあったが「砂糖」という言葉はなかった。コーヒーに砂糖を入れる人は多い。ひょっとしたらカフェインよりも、砂糖の方が心臓に悪い可能性だってある。糖分の取りすぎが、太りすぎその他の健康障害を引き起こすことは周知の通りである。つまり[カフェイン→心臓病]か[砂糖→心臓病]か、どちらが正しいかは、これでは決定できないわけである。

 何よりも本書で一番ショッキングな著者の主張は、世の中の社会調査は過半数がゴミである、ということではないでしょうか。
 この本に出会うまで、僕は、「専門家のやっている調査なのだから、やはり信頼のある結果なのだろう」といった感じで新聞記事等を読み流ししていたわけです。
 ですが、実際に懐疑的な読者として頭を切り替えてみると、本当に意外なことに、多くの記事にアラが見えてきます。
 ここに一種の思考停止状態が潜んでいたんだなあと反省するきっかけを、本書は与えてくれたのでした。

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