« テレワーク―「未来型労働」の現実 | メイン | ガラパゴス化する日本の製造業 »

イスラム金融入門―世界マネーの新潮流


イスラム金融入門―世界マネーの新潮流
(著:門倉 貴史、出版:幻冬舎)

第1章の金融の仕組み紹介は分かりやすくて面白いけど、2章3章でイスラム各国の経済情勢の概要解説な部分は個人的にはちょっと単調で退屈。現社の教科書を読んでるみたいな。情報としてはきれいに整理されていてとても有用。本が悪いというよりも、自分の好みとマッチしなかった感じ。

★★★

p.17 同時多発テロの影響で、米国の金融機関などに預けられていた膨大なムスリムの金融資産がいつ凍結されるかもわからないという状況になり、ムスリムが自分たちの金融資産を先進国の市場から引き揚げるという動きが出てくるようになった。そして、引き揚げられたお金が「イスラム金融」のほうへと向かったのである。また、自分たちのアイデンティティーを失うことを恐れたムスリムたちが「イスラム回帰」の傾向を強めた。

p.26
コーラン・・イスラム教の経典
ハディース・・ムハンマドが生きていた頃の慣行(スンナ)をまとめたもの
シャリーア・・コーランとハディースの教えに基づいて作られた法律
イバダード・・シャリーアの中で、信仰に関する部分
ムアラマート・・シャリーアの中で、日常生活に関する部分

イスラム金融とは、ムアラマートで定められた金融活動の規範に適合した金融取引のことを指す。

p.30 イスラム金融を手がける金融機関は、必ず「シャリーア委員会」を設置しなければならない。ひとつの「シャリーア委員会」に、最低でも3人のイスラム法学者が必要とされる。

シャリーアに適合しているかの判断や解釈は微妙。

イスラム金融が急拡大する一方で、「シャリーア委員会」のメンバーの人材不足が深刻化している。

p.33 イスラム金融は大きく分けると、4つの取引形態がある。
・ムラーバハ・・銀行が、お客さんがほしい商品を製造業者から仕入れて、それを販売するという仕組み
・イジャーラ・・銀行がお客さんのかわりに製造業者から商品を購入して、その商品の所有権を一定期間リースする
・ムダーラバ・・銀行が投資家からお金を預かって、そのお金を事業に投資して得られた収益を投資家と事業者でわけあう。
・ムシャーラカ・・銀行と投資家が手を組んで事業の共同経営をおこなう。

p.43 すべての金融機関を「イスラム銀行」にしてしまった国では、経済・社会に様々なひずみが生じており、一般銀行と併設している国の方がうまく機能している。

イスラミック・ウィンドウ・・イスラム銀行と一般金融の両方を兼務する銀行で、イスラム窓口の部分

p.129 すべての銀行をイスラム銀行にした結果、国民だけでなく政府もイスラム銀行から資金調達をしなくてはならなくなったことで、資金借り入れ競争の激化によって、官民の資金調達コストが大幅に上昇した。また、イスラム銀行の内部で汚職・腐敗が横行した。

p.49 中東の産油国は、いずれもイスラム教を信仰しているので、中東の投資家が資産を運用するに当たって「イスラム金融」に対するニーズは根強くある。オイルマネーがイスラム金融を信仰する国々に向かうようになってきた。
→ どの国もイスラム金融の環境を整備しようとしている

p.53 マレーシア。国内にイスラム教徒が多いという事情もあるが、イスラム金融を振興していると、原油高で潤う中東職のオイルマネーが流入しやすくなるので、あえてイスラム金融を発展させようという意図もある。

p.94 湾岸協力会議(GCC)各国は、ドル・ペッグ制という為替制度を採用しているが、これがインフレを引き起こす元凶となっている。サブプライム問題によりドルが売られているため。

通貨を切り上げればいいかというと、そうでもない。GCC諸国が原油の輸出で稼いできた外貨のほとんどがドルだから。切り上げると外貨準備高が目減りしてしまう。

→UAEのアブダビ投資庁が07年11月にシティ銀行に75億ドルを出資することにしたのもこのため。

p.142 インドネシアでは政治家や官僚の汚職事件が頻繁に起きるが、これもイスラム回帰の動きを強める一因となっている。

p.206 金やプラチナの国際価格の高騰の一因・・主要産地である南アフリカで電力不足が発生して供給不安が高まった。

p.213 サブプライムローン問題の場合、単に住宅ローンの焦げ付きという問題だけであればその悪影響は米国経済に限定されるのだが、サブプライムローンが証券化され、ヘッジファンドなどが購入、世界的な信用収縮につながった。イスラム金融の場合には、基本的に金融活動は生産活動と1対1で対応する仕組みになっている。何らかの生産活動があって、それにおカネを投資する形式になるので、投機的なおカネが流れ込むという現象はおきにくい。

About

2008年10月18日 23:58に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「テレワーク―「未来型労働」の現実」です。

次の投稿は「ガラパゴス化する日本の製造業」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。