
「iPS細胞 世紀の発見が医療を変える」
(著:八代 嘉美、出版:平凡社)
わかりやすさにかなり気をつかっていて良いです。つい数日前に話題になった緑色蛍光タンパク質もわずかですが登場して面白いです。繰り返し読み直したい本。
自分と3つしか違わない人がこういう本を書くって、すごいよなあ、と内心おもった。
★★★★
p.26 受精卵→桑実胚→胚盤胞=栄養外胚葉+内部細胞塊
栄養外胚葉は胎盤や羊膜などに。内部細胞塊は神経細胞、表皮、骨格、筋肉、生殖系などに。
内部細胞塊を取り出して培養条件を変えるとそれぞれに分化する。
p.31 移植された組織が他の細胞に働きかけて別の組織を作り出すこと・・誘導
誘導を引き起こす存在・・オーガナイザー
<分化>というプロセスは、オーガナイザーが引き金となって引き起こされる誘導の連続。
p.47 ES細胞だけを子宮に戻したとしても胎児になることはない。胎盤をつくることができないため。
受精卵がもつ能力は文字どおり万能だけど、ES細胞はそうではない。ES細胞が持つ能力は万能ではなく<多能性>と呼ばれている。
p.50 DNAは細胞の核の中でこんがらがってしまわないように、ある程度の長さを単位として<ヒストン>という大きいタンパク質の軸に巻きついている。
DNAの配列やヒストンに<メチル基>とよばれる分子がくっつくと、遺伝子に転写因子が結合できなくなるし、ヒストンに巻きついた遺伝子を緩める役割のタンパク質も近づけなくなる。
p.61 <発生>や<分化>の進行とは、不要となった遺伝子にカギがかけられ、タンパク質がつくられなくなっていくプロセスである。
p.65 幹細胞と呼ぶための2つの条件
・分化する能力を持っている
・分化する能力を持ったままで分裂することができる
p.77 幹細胞の中にある、細胞分裂を食い止めるタンパク質は、細胞をいわば冬眠状態にする。このタンパク質はリスなどの動物で冬眠時に脳細胞の中で作られるタンパク質と同じものである。
p.92 イモリの細胞の中では、分化した細胞が未分化な状態に戻る、つまり体内で<脱分化>している、ということであり、身体の中に幹細胞がストックされているというわけではないのだ。
p.99 大便に含まれるものの6割は水。そして2番目が死んだ胃や腸の細胞の死骸、それから腸内に住んで食物の消化吸収を助ける大腸内細菌の死骸であり、食べ物のカスは最も少ない。
p.106 細胞の死ぬ数が肝臓の再生する能力を超えてしまったとき、死んで脱落した細胞の部分が空洞になってしまう。肝臓はこれを防ぐために、繊維のような硬い物質を使ってこの空洞を埋めようとする。これが繊維化と呼ばれる現象だ。健康な肝細胞が著しく減ることによって、肝臓が正常な機能を果たすことができなくなる状態、これが肝硬変といわれる状態だ。
p.137 がん遺伝子とよく似た遺伝子がES細胞のみでつくられている。
ES細胞の増殖能力やがん化にはこの遺伝子がかかわていることが示され、同時にES細胞の多分化能と増殖能力はそれぞれ別のシステムによって起こる働きだということが確かめられた。
p.143 四つの遺伝子を組み込んだ皮膚の細胞をマウスの胚盤胞に注入し、マウスの子宮に戻したところ、注入した細胞がマウスの胎児の中にも存在していることが確かめられたのである。
iPS細胞誕生の瞬間であった。
p.153 iPS細胞の登場により、倫理的な問題があるES細胞研究はもはや不要なのではないか、という空気が生まれつつあるが、これは大きな誤解である。
p.197 人間を含む動物では、脳が発達して高等動物などと呼ばれるようになるにつれて、身体的な再生能力は失われていく。
そして私たちは、自分たちを生かしめるシステムを記述する能力までも獲得してしまった。本当に神がいたのなら、身体再生という強靭な生命力を奪ったのは、獲得した知性の代償としてであったかもしれず、失われた生命力を知性で取り戻そうとするのは、私たちのエゴなのかもしれない。