
「フラット化する世界(上)」
(著:トーマス・フリードマン、訳:伏見 威蕃、出版:日本経済新聞社)
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目次
フラット化の要因
・ベルリンの壁の崩壊と、創造性の新時代
・インターネットの普及と、接続の新時代
・共同作業を可能にした新しいソフトウェア
・アップローディング
・アウトソーシング
・オフショアリング
・サプライチェーン
・インソーシング
・インフォーミング
・ステロイド
p.25 グローバリゼーション1.0の原動力が国のグローバル化であり、2.0の原動力が企業のグローバル化であったのに対し、3.0の原動力は、個人がグローバルに力を合わせ、またグローバルに競争をくりひろげるという、新しく得た力なのである。
p.50 新規に生活を始めるよりも、バンガロールで一所懸命働くほうが、ずっと楽だし実入りもいい。プラットな世界では、インドにいながらにして、まっとうな給料がもらえる。
p.62 「モーリス航空の予約を自宅で受け付ける人間が、250人いました」ニールマンはいう。「生産性が30パーセント高かった――ただ愛想よくするだけで、30パーセント多く予約が取れたんです。会社に忠実で、労働力の低下がありませんでした。」
p.66 道路沿いのマクドナルドのドライブスルー・レーンに車を入れると、てきぱきとした温かいサービスが受けられる。ただしい注文を受ける人間は店内にはいない――ミズーリ州にもいない。注文を受けるのは、1500キロメートルほど離れたコロラド・スプリングズのコールセンターで、客や注文された品物を用意する店の従業員とは、高速データラインでつながっている。
(すごい)
p.105 「人間は習慣を変えたい理由があれば、すぐに習慣を変えるものだし、そもそも他人と結びつきたいおいう本能に近い気持ちがある。方法を与えると、技術的に難しかろうが克服し、新たな言語を習得するものだ――それぐらい他人と結びつきたい気持ちは強く、できないはずはないと考える。」
p.114 光ファイバー・ケーブルへの大幅な過剰投資は、無尽蔵の宝物のようなものだった。通信会社が破綻したとき、銀行は光ファイバーを差し押さえて、捨て値で新会社に売った。
p.126 スタンダードが決まると、人間はやり方ではなく、それでできることの品質を高める方に注意を集中する。
p.160 リナックスやアパッチが、IBMの協力のおかげで”ブレンデッド・モデル”のたぐいとなったのは、つい最近のことだ。無償でそれに貢献した人間もいれば、IBMに給料をもらって協力した人間もいた。
p.162 マイクロソフトの言い分「イノベーション、報酬、再投資、さらなるイノベーションという素晴らしい美点を持つサイクルが、これまでずっとわれわれの産業の大きな原動力となってきた。」「オープンソーシングはこれからも強力なトレンドであり続けるだろうが、金銭的なインセンティブを排除したソフトウェア製作ではなく、学問の世界に昔からある知的財産共有モデルにもっぱら逆戻りするだろうね。」「イノベーションを進めるのに資本主義は必要だ。」
p.188 賄賂を使ってIITに入学することは出来ない・・・おそらくハーバードやMITに入学するよりも難しいだろう」
創立以来55年ほどにわたって、こうしたIITのおかげでアメリカは安い買い物をすることができた。
p.192 時差が12時間なので、アメリカの医師が眠っているあいだにインド人は書き起こしの作業をやり、翌朝にはファイルが届いているという寸法だ。訴訟問題のおきやすい医療の世界で、医療記録、研究所の報告、医師の診断を、安全に、合法的に、秘密を守って、バンガロールでデジタル化できる。
p.196 Y2Kに続いてITバブルがやってきたとき、給料の多寡は別として英語を話すエンジニアが有り余っているのは、インドだけだった。インド人エンジニアを雇うのは、おおぜいいるからではなく、コストが安いからそうせざるをえないからだった。そして、インドとアメリカ・ビジネス界の関係は、一段と深まった。
p.207 どんな業種でも、中国に関して犯しかねない一番の誤謬は、中国は低賃金の競争で勝っているだけで、品質や生産性の向上はありえないと思い込むことだ。中国の国営企業を除く民間企業部分では、1995年から2002年にかけて、生産性が年間17パーセント向上している。
p.213 企業が海外に工場を建設するのは、アメリカやヨーロッパに売る製品を作るのに安い労働力を得るためばかりではない。
p.224 9・11直後、ZARAの経営陣は、消費者が深刻な気持ちになっていると見て、数週間以内に黒を基調とする新製品を店舗にストックさせた。
優秀な企業は最後のぎりぎりの瞬間まで製品に付加価値を加えるのを引き伸ばすという。
p.227 国や企業の天然資源が乏しいと、生き残るために知恵を絞ってイノベーションを生み出そうとする。
p.238 ソニーの製品のようなものを作ることにかけては日本人は誰にもひけをとらないが、それを安く売ることとなると、そう上手ではない。
p.240 西友がウォルマートに教えなければいけない重要な事柄が一つあった。鮮魚の売り方である。
p.244 どの企業にも、ウォルマートが確立したような規模と幅を持つ複雑でグローバルなサプライチェーン網を築く経済力があるわけではない。そこで生まれたのがインソーシングというわけだ。
UPSは「シンクロナイズド・コマーシャル・ソリューションズ」と称する事業に乗り出した。フラットな地球の一箇所から別の一箇所へのサプライチェーンすべてにサービスできるようにした。
p.290 三重の集束
・10のフラット化の要因のすべてが集束して、フラットな新しい競技場が確立した。ビジネスと個人が新しい慣わしやスキルやプロセスに順応していった。
・中国やインドや旧ソ連から、数十億人が競技場へ殺到してきた。
・そういった人々の一部は瞬時にして、われわれの子供たちと、直接的に、安価に、そして強力にプラグ&プレイし、競合し、つながり、共同作業することができるようになった。
p.296 グローバリゼーション2.0は、メインフレーム・コンピュータの時代だった。C2(指揮・統制)が重視され、企業や部署が垂直に組織されていた。グローバリゼーション3.0は、トップダウン主流の競技場を水平に変えた。指揮・統制ではなく水平の接続と共同作業が重要になった。
p.303 インド・中国・旧ソ連では、行き場のない大きな夢が50年にわたり鬱積していた。それが一気に噴出すのを、われわれは目の当たりにしているのだ。
p.334 摩擦のないグローバル市場への障害物のなかには、ほんとうに無駄とビジネスチャンス喪失の原因になっているものもある。しかし、社会的な結びつき、信仰、民族としての誇りなど、市場とは無関係な価値観をもたらしてくれるゆえに大切にされている社会制度や慣わしや文化や伝統が、非効率そのものである場合もある。
p.341 このインド・インディアナ州の話で、搾取した側はどちらで、搾取された側はどちらだろう? あるインドのコンサルティング会社のアメリカの子会社は、インド人社員と地元インディアナ州の労働者の双方を使ってコンピュータソフトウェアを改良すれば、
インディアナ州の税金を810万ドル節約できると提案している。この取引で、インドのコンサルティング会社は大きな利益を得る。インド人の技術者も利益を得る。インディアナ州の貴重な税金を節約し、その分で他の部門の州職員を増やしたり、長い目で見れば、それで失業者を減らすことが出来るわけだ。しかしながら、この契約は、自由貿易を唱える共和党の圧力によって破棄された。
p.352 19世紀は、労働と資本の対立が最大のものだった。いま対立しているのは消費者と労働者で、企業はその中間にいる。
p.355 ウォルマート買い物客・株主であるわれわれは、同社の利益を押し上げ、なおかつ商品価格を押し下げるために、サプライチェーンや従業員への手当てから容赦なく脂肪や摩擦を取り除いて欲しいと思う。また、市民であるわれわれは、アメリカ最大の企業ウォルマートが全従業員を医療保険に加入させていないために、地元の病院の救急病棟に行かなければならない従業員がいて、結局は納税者がその費用を負担していることも知っている。
p.370 リカードの理論では、それぞれの国が比較的にコストで優位にある生産物に特化して、他国が特化した商品と貿易を行えば、全体として利益が生じ、双方の国の総収入レベルも上がるとされる。
p.376 ローマーが指摘しているように、知識労働者の場合は、数が増えても、低技術労働者とは違って、賃金が低下するとは限らない。なんらかの知識を集約した商品を生産して売る知識労働者の場合、市場が広ければ広いほど、製品を買う人間が増える。また、新しい専門分野や隙間市場も多く生まれる。だから、知識基盤型の労働者は、グローバル化のもとで繁栄する。
しかし、肉体労働を売っている場合には、市場の拡大が売り物の価値を高めるとは限らない。下がることもありうる。肉体労働者が売るものは、一度に一つの工場か一人の消費者にしか買ってもらえない。
p.389 いまのグローバリゼーション3.0では、個人が、グローバルに栄えるか、せめて生き残れる方法を考えなければならない。
p.399 新ミドルクラスに必要な人材
・偉大な共同作業者・まとめ役
・偉大な合成役
・偉大な説明役
・偉大な梃子入れ役
・偉大な適応者
p.415 三つの問題の権威になるといい。ただし、その三つが絶えず変わっているのは意識しないといけない。