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2008年08月 アーカイブ

2008年08月10日

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院


高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院
(著:水月 昭道、出版:光文社)

身の回りのひとがこう言ってました的な話がおおいので、もうちょっとデータを出して欲しいなあと思う。

★★★

p.6 短大と大学、しすて大学院を合わせた進学者数に注目すると、平成三年に比べ、今では減るどころかわずかながら増えているのである。つまり、高等教育市場は、少子化という逆風が吹く中でも、なぜか安定した成長が続いているのである。

p.14 0.024%。これは、平成16年9月時点の日本における”自殺者”の割合だ。11.45%。これは、同じ年に文科省から発表された、日本の大学院博士課程終了者の死亡・不詳の者の割合である。

(死亡と不詳はかなり違うと思うけど。。この数字と0.024を比較するのはフェアじゃない。)

p.30 フリーターになることが、もはや絶対的に避けられないという意味で、「高学歴ワーキンブプア」の中核を成すことになる層は、実は、重点化後の私立大学――特に中堅以下――の動きによって形成されている。

p.46 彼の言葉を借りれば、「伝統的な優秀校を出た者たちが、比較的歴史の浅い地方大学へと教員を送り込み続けることで、そこが植民地化されている」ということだ。

p.62 文科省による「ポスドク一万人計画」というものも実施されてはいる。1996年度から2000年度の五年間の計画として策定されたもので、ほうっておけば無職になってしまう多くの大学院博士課程終了者を、ポストドクトラルフェローという職種を数多く作り出すことによって救済を試みたものであった。

だが、次の二つの点でこの制度も不完全なものとなっていった。

一つには、ポストの絶対数がまったく足りなかったこと。二点目は、せっかくの支援ではあるが、非常に短い任期が定められており、一時的な救済策にしかなっていないという制度的弱点があるのだ。あぶれまくっている博士卒の間で、ぐるぐるとポストを受け渡していくようにということなのだろう。

p.108 非常勤時代は、90分の講義を受け持って、大体7000円ぐらい頂いていました。一つの非常勤だけでは食べていけないので、私は4つ掛け持ちしていました。

講義で教えるために飛んでおくべき資料や書籍などの経費については、大学からの支給が一切なく、すべて持ち出しの状況だったという。

p.116 運営する大学側の本音を言えば、大学の名前を上げてくれるような結果を出してくれるのなら、どんな人であれウェルカムであって、そのためには、その人が博士号を持たないとか、研究者として研究論文を書いていないなどといったことに目をつぶることもいとわない。

晴れて”特任”教授も、大学教員の一員となることが許される。

地デジにしたいなんて誰が言った!?


地デジにしたいなんて誰が言った!?
(著:荒川 顕一、出版:晋遊舎)

おっさん週刊誌が好きそうな修辞のオンパレード。総務省の陰謀とか何とか書いておきながら、インタビューをとったわけでもなく、データもほとんどなしで、ただ憶測で利権だの陰謀だの言ってるだけ。

こういう本を喜んで読むようになったら終わりだなあ、というのが正直な気持ちだけど、一方で、こういう層が世の中にある程度の割合で確かに存在していることも忘れてはならないとも思ったよ。

p.34 地デジ波のみが受信できるチューナーで2万円ぐらい、BSなども受信できるもので4万円ぐらいです。なのであまり売れていないのが現状ですね。

p.38 地デジの有用性をご説明するには、我々店舗単位では限度があります。まだまだ細かいところまではPRが不十分だと思います。もっと心配なのは、現在買い替えの必要なAV機器の台数が、概算で7千万台あるということです。全てのメーカーが力をあわせても、年間の生産が1千万台というのが現状。

p.64 現在は、通知さえすれば、画面に現れる督促テロップは消える。06年に橋元元一NHK会長は、「受信料を払っていない世帯や事業所向けに、地上デジタル放送で支払いを督促するテロップをテレビ画面に表示させることもありえる」という考えを示した。

p.84 家電メーカーは、どうして2011年からラジオのTV音声受信機能が使えなくなることを言わないんですか

p.98 キー局のCM収入増減率(2007年9月期、前期比)
      タイム収入 スポット収入
日本テレビ -2.6% -2.6%
TBS   +4.2% -1.9%
フジテレビ -1.4% -1.4%
テレビ朝日 -2.2% +0.3%
テレビ東京 -9.6% +1.6%

(前期比とあるけど、8月期との比較ってこと?だとすれば、9月は8月より1日少ないわけで、数%減るのは当然。通年での比較がみてみたい。)

絶対ハイビジョン主義―これからが楽しいテレビ生活


絶対ハイビジョン主義―これからが楽しいテレビ生活
(著:麻倉 怜士、出版:アスキー・メディアワークス)

とてもいい。テレビの進化と最近の製品の特徴を平易に説明してくれる。あくまでも重心はユーザ視点にあるのだけど、各製品の特徴を技術的な側面からも述べていてくれるので楽しい。このジャンルの大家による説明ということもあって、相当に凝った言い回しで視聴感を表現しているのだけど、キザっぽさがまったくないのもいい。

無性にテレビを買いたくなるので危険。

★★★★★

p.18 NTSCのコマ数と走査線の関係。狭い帯域にて、動画を送る苦肉の策として、1枚の静止画を半分の数の走査線で形成するという「インターレース」が採用された。

p.22 画角に関して言えば、従来のNTSC方式ではかなり狭くて、10度いうのが一般的でした。

近くで見ると画面の粗さが目立ってしまうため、よくいわれる7H、つまり画面の縦の長さの7倍離れてみるのが作法だった。20インチのテレビなら2メートル。

NHK技研による、観視画角と心理効果の実験。画角(視野角)が30度以上になると、被験者は自ら上体を傾けて写真と平衡をとろうとすることがわかりました。

p.33 ブラウン管で画素を精細に表示するには、電子銃が発射した電子ビームを細く絞るため、色蛍光体の前に置かれたシャドウマスクの穴を相当、小さくする必要がありますしかし、口径を小さくすれば、シャドウマスク自体のコストがきわめて高くなってしまうし、同時に輝度が落ちます。バランス設計しかありえず、ともすれば妥協の産物になりかねない。

構造的に36型以上のサイズがつくれない。作れないことはないが、重くなる。

p.37 従来のSDでは、20インチ前後の小さな画面で視聴することが前提でしたから、人物を映すときも、アップで撮影するのが基本。歌番組ではひいた画面、右からのアップ、左からのアップと、カメラのスイッチングを頻繁に繰り返すことが演出の定番になっていました。ところがハイビジョンの場合、人物をアップで撮る必要がほとんどなくなりました。

p.49 マスタリングプロセスの違い。
従来はテレシネという、フィルムの透過光をカメラで撮る方法が主流でした。ところが4年ほど前から、デジタルインターメディエイトといって、フィルムの1コマ1コマを高解像度でスキャニングしてコンピュータ処理する方法が導入されています。オリジナルネガが使える。

p.52 フィルム収録の場合は、いかにもフィルムらしい間接的で、鮮鋭感の低い質感がファンタジー感をかもし出し、「虚構としてのドラマ」とそれらしい感覚で見せてくれるのですが、ビデオの場合は、まさに現実そのものを切り取ったようなリアリティ映像で、ファンタジーを阻害するのです。

p.54 一方は、黒を大面積で沈めた後に白を加えたビデオ的な仕上がりで、白がハイトーンであり、黒はグロッシー。
もう一方は、映画的な撮り方で、黒を少し浮かせて、白も少し落として、黒と白の狭い範囲で濃密な階調を作っていく。レンジ感が狭いかわりに階調感が細かく、黒はマット調な落ち着いたものになっています。

(ここでいう映画的というのは、ファンタジー的、という意味のことだと思われます。)

p.56 画質を決定する5つの要素。
1.解像度・・画素数のことではなく、ディテール再現の尺度
2.ノイズ
3.コントラスト・・相対値だから、白レベルを上げれば数値を高めることも可能なのでカタログ値だけで計ってはだめ。
4.階調性
5.色再現性

p.70 液晶のデメリット
・動画に弱い・・液晶の粘度とホールド現象のため。
・コントラストが弱い。黒が浮く。
・視野角が狭い

メリット
・高精細化しやすい
・高画質化へのアプローチが多様

p.74 120Hz駆動は、1コマ目と2コマ目の絵の間に、1.5コマ目の絵を新たに合成して挟み込む。この画像生成技術のレベルが、メーカーごとにかなり異なっている。

p.78
IPS液晶(日立、東芝、松下)は視野角が広いが大型化が難しい。
VA液晶(シャープ、ソニー)はコントラストが高く取れるが視野角が弱点。角置きするときや大サイズのときに。

p.84 プラズマテレビは、放電のときの種火(予備放電)のために、黒レベルが落ちきらないという問題。松下のリアルブラック回路で大幅に改善された。

p.88 ''市場では2005年頃から、液晶テレビのほうがかなり優勢になってきた。販売店の店頭では画面が明るく見えるテレビのほうが確実に売れる。家庭のリビングルームの照明は200ルクス前後だが、店頭は2000-3000ルクスあるはず。自発行型のプラズマにはすごく不利。''

いざ家に持ち帰って見ると、評価が逆転することも多い。出荷時には画質モードが店頭用のダイナミックモードになっているためそのままだとまぶしすぎる。暗くすると、黒が浮いてきて階調もでにくい。

p.91
黒レベルをしっかり沈めることが重要な映画派や、残像の少なさが重要なスポーツ派にはプラズマがいい。

BDやBSデジタルなど、趣味性が高いゴージャスなコンテンツを、オーセンティック(本物志向)な雰囲気で楽しむならプラズマがお勧め。いままでのテレビの延長として、明るい視聴環境でハイビジョンの高画質を手軽に味わいたいなら液晶がよいでしょう。

p.155 テレビ信号は1秒間に60枚の静止画から構成されるので、24枚(フィルムやDVD、BDに収録されているコマ数)をなんとかして秒60コマに展開しなければなりません。そこでAABBBというシークエンスとして並べる「2-3プルダウン」という手法を採用。
ここにきて環境ががらっと変わり、24Pのダイレクト再生が可能な製品が増えてきた。

p.167
「ダイナミック」は、販売店の店頭などきわめて明るい環境で映像をはっきりくっきり見せるモード、「リビング」は、200ルクス程度の標準的な明るさの室内に適したモード、「シネマ」は50ルクス以下の暗い環境で楽しむためのモード。

p.175 フィルム映像で、虚実の間の微妙な感情を語るファンタジーを演出するのが、実はフィルムグレイン。

2008年08月31日

フラット化する世界(上)


フラット化する世界(上)
(著:トーマス・フリードマン、訳:伏見 威蕃、出版:日本経済新聞社)

★★★★★

目次
フラット化の要因
・ベルリンの壁の崩壊と、創造性の新時代
・インターネットの普及と、接続の新時代
・共同作業を可能にした新しいソフトウェア
・アップローディング
・アウトソーシング
・オフショアリング
・サプライチェーン
・インソーシング
・インフォーミング
・ステロイド

p.25 グローバリゼーション1.0の原動力が国のグローバル化であり、2.0の原動力が企業のグローバル化であったのに対し、3.0の原動力は、個人がグローバルに力を合わせ、またグローバルに競争をくりひろげるという、新しく得た力なのである。

p.50 新規に生活を始めるよりも、バンガロールで一所懸命働くほうが、ずっと楽だし実入りもいい。プラットな世界では、インドにいながらにして、まっとうな給料がもらえる。

p.62 「モーリス航空の予約を自宅で受け付ける人間が、250人いました」ニールマンはいう。「生産性が30パーセント高かった――ただ愛想よくするだけで、30パーセント多く予約が取れたんです。会社に忠実で、労働力の低下がありませんでした。」

p.66 道路沿いのマクドナルドのドライブスルー・レーンに車を入れると、てきぱきとした温かいサービスが受けられる。ただしい注文を受ける人間は店内にはいない――ミズーリ州にもいない。注文を受けるのは、1500キロメートルほど離れたコロラド・スプリングズのコールセンターで、客や注文された品物を用意する店の従業員とは、高速データラインでつながっている。

(すごい)

p.105 「人間は習慣を変えたい理由があれば、すぐに習慣を変えるものだし、そもそも他人と結びつきたいおいう本能に近い気持ちがある。方法を与えると、技術的に難しかろうが克服し、新たな言語を習得するものだ――それぐらい他人と結びつきたい気持ちは強く、できないはずはないと考える。」

p.114 光ファイバー・ケーブルへの大幅な過剰投資は、無尽蔵の宝物のようなものだった。通信会社が破綻したとき、銀行は光ファイバーを差し押さえて、捨て値で新会社に売った。

p.126 スタンダードが決まると、人間はやり方ではなく、それでできることの品質を高める方に注意を集中する。

p.160 リナックスやアパッチが、IBMの協力のおかげで”ブレンデッド・モデル”のたぐいとなったのは、つい最近のことだ。無償でそれに貢献した人間もいれば、IBMに給料をもらって協力した人間もいた。

p.162 マイクロソフトの言い分「イノベーション、報酬、再投資、さらなるイノベーションという素晴らしい美点を持つサイクルが、これまでずっとわれわれの産業の大きな原動力となってきた。」「オープンソーシングはこれからも強力なトレンドであり続けるだろうが、金銭的なインセンティブを排除したソフトウェア製作ではなく、学問の世界に昔からある知的財産共有モデルにもっぱら逆戻りするだろうね。」「イノベーションを進めるのに資本主義は必要だ。」

p.188 賄賂を使ってIITに入学することは出来ない・・・おそらくハーバードやMITに入学するよりも難しいだろう」
創立以来55年ほどにわたって、こうしたIITのおかげでアメリカは安い買い物をすることができた。

p.192 時差が12時間なので、アメリカの医師が眠っているあいだにインド人は書き起こしの作業をやり、翌朝にはファイルが届いているという寸法だ。訴訟問題のおきやすい医療の世界で、医療記録、研究所の報告、医師の診断を、安全に、合法的に、秘密を守って、バンガロールでデジタル化できる。

p.196 Y2Kに続いてITバブルがやってきたとき、給料の多寡は別として英語を話すエンジニアが有り余っているのは、インドだけだった。インド人エンジニアを雇うのは、おおぜいいるからではなく、コストが安いからそうせざるをえないからだった。そして、インドとアメリカ・ビジネス界の関係は、一段と深まった。

p.207 どんな業種でも、中国に関して犯しかねない一番の誤謬は、中国は低賃金の競争で勝っているだけで、品質や生産性の向上はありえないと思い込むことだ。中国の国営企業を除く民間企業部分では、1995年から2002年にかけて、生産性が年間17パーセント向上している。

p.213 企業が海外に工場を建設するのは、アメリカやヨーロッパに売る製品を作るのに安い労働力を得るためばかりではない。

p.224 9・11直後、ZARAの経営陣は、消費者が深刻な気持ちになっていると見て、数週間以内に黒を基調とする新製品を店舗にストックさせた。

優秀な企業は最後のぎりぎりの瞬間まで製品に付加価値を加えるのを引き伸ばすという。

p.227 国や企業の天然資源が乏しいと、生き残るために知恵を絞ってイノベーションを生み出そうとする。

p.238 ソニーの製品のようなものを作ることにかけては日本人は誰にもひけをとらないが、それを安く売ることとなると、そう上手ではない。

p.240 西友がウォルマートに教えなければいけない重要な事柄が一つあった。鮮魚の売り方である。

p.244 どの企業にも、ウォルマートが確立したような規模と幅を持つ複雑でグローバルなサプライチェーン網を築く経済力があるわけではない。そこで生まれたのがインソーシングというわけだ。
UPSは「シンクロナイズド・コマーシャル・ソリューションズ」と称する事業に乗り出した。フラットな地球の一箇所から別の一箇所へのサプライチェーンすべてにサービスできるようにした。

p.290 三重の集束
・10のフラット化の要因のすべてが集束して、フラットな新しい競技場が確立した。ビジネスと個人が新しい慣わしやスキルやプロセスに順応していった。
・中国やインドや旧ソ連から、数十億人が競技場へ殺到してきた。
・そういった人々の一部は瞬時にして、われわれの子供たちと、直接的に、安価に、そして強力にプラグ&プレイし、競合し、つながり、共同作業することができるようになった。

p.296 グローバリゼーション2.0は、メインフレーム・コンピュータの時代だった。C2(指揮・統制)が重視され、企業や部署が垂直に組織されていた。グローバリゼーション3.0は、トップダウン主流の競技場を水平に変えた。指揮・統制ではなく水平の接続と共同作業が重要になった。

p.303 インド・中国・旧ソ連では、行き場のない大きな夢が50年にわたり鬱積していた。それが一気に噴出すのを、われわれは目の当たりにしているのだ。

p.334 摩擦のないグローバル市場への障害物のなかには、ほんとうに無駄とビジネスチャンス喪失の原因になっているものもある。しかし、社会的な結びつき、信仰、民族としての誇りなど、市場とは無関係な価値観をもたらしてくれるゆえに大切にされている社会制度や慣わしや文化や伝統が、非効率そのものである場合もある。

p.341 このインド・インディアナ州の話で、搾取した側はどちらで、搾取された側はどちらだろう? あるインドのコンサルティング会社のアメリカの子会社は、インド人社員と地元インディアナ州の労働者の双方を使ってコンピュータソフトウェアを改良すれば、
インディアナ州の税金を810万ドル節約できると提案している。この取引で、インドのコンサルティング会社は大きな利益を得る。インド人の技術者も利益を得る。インディアナ州の貴重な税金を節約し、その分で他の部門の州職員を増やしたり、長い目で見れば、それで失業者を減らすことが出来るわけだ。しかしながら、この契約は、自由貿易を唱える共和党の圧力によって破棄された。

p.352 19世紀は、労働と資本の対立が最大のものだった。いま対立しているのは消費者と労働者で、企業はその中間にいる。

p.355 ウォルマート買い物客・株主であるわれわれは、同社の利益を押し上げ、なおかつ商品価格を押し下げるために、サプライチェーンや従業員への手当てから容赦なく脂肪や摩擦を取り除いて欲しいと思う。また、市民であるわれわれは、アメリカ最大の企業ウォルマートが全従業員を医療保険に加入させていないために、地元の病院の救急病棟に行かなければならない従業員がいて、結局は納税者がその費用を負担していることも知っている。

p.370 リカードの理論では、それぞれの国が比較的にコストで優位にある生産物に特化して、他国が特化した商品と貿易を行えば、全体として利益が生じ、双方の国の総収入レベルも上がるとされる。

p.376 ローマーが指摘しているように、知識労働者の場合は、数が増えても、低技術労働者とは違って、賃金が低下するとは限らない。なんらかの知識を集約した商品を生産して売る知識労働者の場合、市場が広ければ広いほど、製品を買う人間が増える。また、新しい専門分野や隙間市場も多く生まれる。だから、知識基盤型の労働者は、グローバル化のもとで繁栄する。
しかし、肉体労働を売っている場合には、市場の拡大が売り物の価値を高めるとは限らない。下がることもありうる。肉体労働者が売るものは、一度に一つの工場か一人の消費者にしか買ってもらえない。

p.389 いまのグローバリゼーション3.0では、個人が、グローバルに栄えるか、せめて生き残れる方法を考えなければならない。

p.399 新ミドルクラスに必要な人材
・偉大な共同作業者・まとめ役
・偉大な合成役
・偉大な説明役
・偉大な梃子入れ役
・偉大な適応者

p.415 三つの問題の権威になるといい。ただし、その三つが絶えず変わっているのは意識しないといけない。

フラット化する世界(下)


フラット化する世界(下)
(著:トーマス・フリードマン、訳:伏見 威蕃、出版:日本経済新聞社)

p.21 創造ということに関して、はっきりわかっていることがある。二種類以上のまったく違う分野をものにした人間が、ひとつの枠組みでもうひとつについて新鮮な思考を働かせたときに、それが生まれる。

p.26 今年は、サンスクリット語を専攻して博士号を得る人間は、インドよりもアメリカのほうが多いでしょうね。

p.58 フラット化時代の富は、次の基本的な三つの事柄を手に入れる国に転がり込む傾向が強くなっている。
・フラットな世界のプラットホームにできるだけ効果的に、そして迅速に接続できるインフラ。
・国民が世界のプラットホームでイノベーションを行って付加価値の高い労働ができるような理想の教育プログラムと知識スキル。
・適切なガバナンス

p.74 インドの強みは、ひとつの問題に投入できる人数が多いことです。

p.97 インテルのチップはたった二つのもの――砂と頭脳――からできている。「いまは頭脳のほうに問題があるんです・・・アメリカに住みたいと思っている人々を雇いたいなら、もっと強力で支援体制のしっかりした移民制度がなければなりません。それがなかったら、われわれのほうがそういう人々のところへ行きます。」

p.112 終身雇用はフラットな世界にとってもはや維持することができない脂肪組織だ。そこで、思いやりのあるフラット主義は、政府や企業がすべての労働者の「雇用される能力」を高める方法に心血を注ぐ。

p.126 フラットな世界への移行は多くの人々を圧迫するだろう。

p.153 小売改革を終えるための条件
・その国の規定・規制・認可費用のもとでの企業
・雇用・解雇
・契約の執行
・融資
・破産もしくは業績低迷による廃業

がすべて摩擦なしに単純な手続きで実行できること。

p.156 過剰な規制は、本来保護するべき人々をかえってひどく痛めつける結果になりやすい。

p.165 確固たる文化を持つ必要はありますが、外のものを取り入れて応用する開放性も不可欠です。なぜなら、他者の才能と能力を敬う気持ちが生まれるからです。

p.209 スターバックスは客に店専属の飲料デザイナーになってもらい、それぞれの好みにぴったり合う飲み物をカスタマイズできるようにした。顧客が大物ぶるように仕向けた。

p.222 HPが、750の支店をもつインドの国有銀行の後方業務を運営するアウトソーシング契約を勝ち取った?

p.224 「勝つためにアウトソーシングしているんだ。節約のためじゃない。」シードマンの会社のこの動きこそ、大部分のアウトソーシングの本来の目的なのだ。

p.245 ローカルのグローバル化は「逆グローバリゼーションである。グローバルなメディアがアジアを押し包むのではなく、その地域のローカルなメディアがグローバルにひろがる。この現象は、アジア系の国外移住者、とくに世界各地に住んでいる無数の中国人とインド人の移民が、ローカル・ニュースと情報を強く求めていることで加速している。」

p.272 図書館蔵書のデジタル化や、健康や家庭や労働条件などの調査結果をデジタル化するNGOが、データ入力作業の最大取引先になった。そこでデジタル・デバイド・データ発足時に入社した社員数人がさっそく独立して、調査を必要とするNGOのためにデータベースを設計する会社を樹立した!

p.296 「私たちは、あまりにもアクセスしやすいために、アクセスできなくなっています。自分たちの機械や自分を切るスイッチが見つけられないんです。iPodを使うのは、自分のプレイリストを聞きたいからであると同時に、外の世界を締め出し、そうした騒音全てから身を護るためでもあります。」

p.312 未編集の検閲を受けていない言葉が、いたるところにひろまってゆく。どうすればよいのか?
・・・
自分たちがどういう世界で生きているかを、子供たちに教えよう。

p.322 異教徒の男と握手をすると生殖能力を失ってしまうという噂がスーダンのハルトゥームで広まり、パニックが起きたという。噂は携帯電話のショートメールでひろまったという。

p.325 国民が希望を抱く国には中流階級がいる。

p.327 そういう家庭は最低限の生活すらできません。子供たちはきれいな水の味すら知りません。排水溝の汚れた水を飲むのに慣れているからです。それも、運良く近くに排水溝があればの話です。便所も風呂も見たことがありません。

p.337 村人たちが共有テレビで石鹸やシャンプーのCFを見るとき、目に留まるのは、石鹸やシャンプーではなく、それを使っている人々の暮らしです。

p.346 村人たち、ことに読み書きのできない人たちは、自分の言葉がその場で描き出されるのを見て、ほんとうに認められたと感じて、元気付き、熱意をしめすようになりました。

p.349 世界のフラット化は、異社会・異文化がじかに触れ合う機会が激増するという予想もしていなかった成り行きをもたらした。この密接な接続は、一対一で世界のあらゆる人間と向き合って、自分の立場を思い知らされるという現象をもたらす。自分と他人の境遇を容易に比べられる。そのことが人々の不満をさらに際立たせる。

p.353 ファシズムやマルクス・レーニン主義は、ドイツや中欧諸国の急速な工業化・近代化によって、結束の固い村や拡大家族が突然ばらばらになり、父親や息子は町の大きな工場で働くようになったところではぐくまれた。伝統的な社会構造がそれまであたえてくれた帰属意識やルーツや自尊心が、この過渡期に失われ、ことに若者がよりどころを失っていた。

p.360 アラブ・イスラム世界全般の現在の経済的・政治的後進性に、過去の栄光と宗教的優位という自己認識が交じり合い、アラブ・イスラム教徒が祖国を離れてヨーロッパに移住し、あるいはヨーロッパで成長するときに感じる被差別意識と疎外感がそこに加味されると、怒りという名の強いカクテルができあがる。

p.390 国の経済と未来がグローバルな統合と貿易に密接に結びついているなら、近隣諸国との戦争を抑止する効果がある。マクドナルドが出展している国同士は、マクドナルドがその国にできて以来戦争をしたことがない。

p.399 フラットな世界にいる欠点は、きちんとした契約や優秀なスタッフなどの捨てがたい魅力があるとしても、どのクライアントも複数の選択肢を持っていることです。

(「勝者の代償」をおもいだした)

p.440 eベイがうまくいっているのは、経済的なチャンスと認定を組み合わせているからです。

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