ガラパゴス化する日本の製造業

「ガラパゴス化する日本の製造業」
(著:宮崎 智彦、出版:東洋経済新報社)
国内市場に特化しすぎたあまりハイエンド製品に追いやられた日本企業の特質を、おもに台湾企業、韓国企業との比較でかんがえる本。水平分業を徹底的に追求した台湾をはじめとする企業が、世界で売れるミドル・ロークラス製品をかっさらっていってるという構図。データが豊富でかなり「使える」感じ。
たしかに本書で言われている通り、一番のボリュームゾーンを他所に持っていかれてるというのは納得。かつての途上国で資産の余裕のある層が一気に増えたことも拍車をかけているのでしょう。一方で気になるのは、ハイエンド製品のターゲットとなる層(高所得者層)は今後どうなるのだろう?という点。今後10年は今の傾向が続くのは想像できるけど、さらにその後の10年に、ミドルクラスで満足しない層が大量に発生し、ハイエンドを得意とする企業にとっておいしいゾーンに成長する、というストーリーはありえないのかな?
★★★★
p.17 日本の携帯電話はハイエンドかウルトラハイエンドに属する製品が大部分。世界では80%以上がミドルレンジ以下。
p.31 ダブルスタンダードが引き起こした日本企業の課題
1.台湾企業は競合とは思えない錯覚
2.日本を優先するか世界を優先するか
3.カスタム製品として匠の技を活かしきれない
p.42 日本、韓国、台湾、中国のエレクトロニクス企業の環境を考える5つの切り口
1.人口、経済力、自国のみでビジネスができるか
2.ハイテク優遇税制
3.徴兵制と兵役免除、理系就職の国家的支援
4.エレクトロニクス市場への本格参入時期
5.米国との関係
p.50 4.日本と他国との間の20年以上の参入タイミングの差が技術力の差ではなく、設備投資した過去の資産の差に直結している場合がある。
p.70 台湾のエレクトロニクス企業の数の多さは日本と似ている。決定的に異なる点は、大部分が特定の分野に特化した専業企業であり、コングロマリット経営の企業はごくわずか。
p.77 製造業は基本的に数である。特に限界利益率(製造原価に占める固定費のウエイト)が高い半導体・液晶などの前工程の製造では、数量効果はきわめて大きく効く。
p.97 台湾企業が日系企業などと比較して決定的に異なるのは、売上高に対する販売管理費比率。ホンハイの場合、販売管理費の売上高比率は4%しかない。日本の大手電機メーカーの平均になると22%程度。
p.105 TSMCの注目すべき点は営業利益率が極めて高く、工場稼働率50%でも利益が出るという点。この点はファウンドリと呼ばれる同業他社のシンガポールのチャータードセミコンダクターや、中国SMICとの大きな相違。
p.109 TSMCの技術の要となる設計ルールごとの売上高の内訳などの内容が四半期ごとにインターネットにアップデートされる。日本の大手電機企業ではありえない情報開示レベル。
p.135 現在の台湾は正のフィードバックがかかった好循環期。
中国大陸企業にキャッチアップされた場合はリスク。
p.140 サムスン電子は、多くの日本企業にとっては依然、及びもつかない高い営業利益水準を実現しているが、一時ほどの強さはなくなっており、今後は台湾企業を中心とした廉価製品や日本のハイエンド製品の一点集中投資に苦戦する可能性。
07年の営業利益は5900億円で、半導体、液晶、通信(携帯電話)で3分の1ずつほど。
p.146 サムスンの垂直統合モデルの特質
1.果敢な設備投資でボリュームゾーンを徹底的にねらう
2.半導体、液晶パネル工場などの徹底した集中投資
3.サムスン系列も駆使
90年代後半のDRAMや、01-02年にかけてのITバブル不況時にフラッシュメモリや液晶パネルで日本企業のシェアを短期間で抜きさることができたのは、2の積極投資の成果。
p.152 サムスンには90代に投資した古い8インチラインが大量に残っており、これらのラインでコスト競争力を維持することが困難。DRAM生産を12インチのみにしたエルピーダ・PSC連合は脅威。
p.163 サムスンの入社試験の前にTOEICの足切り(800点代後半)。英語の面接。
p.167 サムスンの営業利益率は41%。日本企業の場合、営業利益率が10%を超えると罪悪感すら覚えるという感覚。
p.174 サンドイッチ危機論。ハイエンド製品は日本企業に、ミドルレンジからローエンドは台湾を初めとする中国企業に挟み撃ちにあっているという経営危機説。
p.207 07年、太陽電池メーカーの生産量
1.ドイツQ-CELLS
2.シャープ
3.中国サンテック・パワー
4.京セラ
5.三洋電機
6.三菱電機
p.210 世界の太陽電池ビジネス・・水平分業化が進む。
日本・・垂直統合的
靴屋が明日から太陽電池
p.215 今後の日本のエレクトロニクス企業にとって世界で勝ち抜ける、競争が優位に展開できる条件
1.すり合わせの技術が活かせる
2.機械的な機構部品が必要
3.環境問題などで厳しい制約条件がある
4.製造ノウハウが外部流出しにくい
5.命にかかわり、事故が絶対に許されない
6.顧客から製造コストがみえないようにする(原価計算の難しいアナログ技術など)
7.最先端の技術力を発揮できる成長市場がある
p.252 カーナビでダブルスタンダードが進行し、PNDが世界標準に
カーナビの1桁程度の価格差。








